姫野ノート

「弱さ」と闘う53の言葉
未読
姫野ノート
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「弱さ」と闘う53の言葉
未読
姫野ノート
出版社
出版日
2023年08月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ラグビーは我々の日常とはかけ離れたスポーツだ。本質は陣取り合戦でありながら、プレーの最中は屈強な選手たちがぶつかり合うコンタクトスポーツでもある。ぶつかり合った瞬間に記憶が飛ぶこともあるほどの衝撃が走り、荒々しいプレーの間隙にはクレバーな戦術が光り、選手たちは統率された動きで作戦を実行する。

2015年のワールドカップ南アフリカ戦は、日本におけるラグビーの関心を飛躍的に上昇させた。続く日本大会でも日本代表は準々決勝まで駒をすすめ、その大健闘に日本中が賛辞を惜しまなかった。本書はそのタイトルにもある通り、ラグビー日本大会でも活躍した姫野和樹が筆を執る。その内容は驚くほど刺激的で、面白く、そして参考になる。その新鮮さは間違いなく、ラグビーという競技の特殊性に由来するものだろう。他の球技よりもはるかに多いプレーヤー。一糸乱れぬチームプレー。そして筋骨隆々の巨漢とぶつかりあう恐怖。こうした特異な土壌から育まれた精神性が、この本の隅々にまで血脈を通している。

そのため、この本は独特な角度から人間性やリーダー論が語られる。そこに伴うラグビーの話がまた面白い。あまりにも厳しい練習や、著者を支えた人たち。そして、ラグビーという競技そのものの面白さ。この本にはそうしたものが詰まっている。著者に興味のある人、ラグビーのことをもっと知りたい人、ビジネスのヒントを探している人、そのすべてに勧められる一冊だろう。

著者

姫野和樹(ひめの かずき)
1994年7月27日、愛知県名古屋市生まれ。プロ・ラグビー選手。リーグワン・トヨタヴェルブリッツ所属。ラグビー日本代表。ポジションはNo.8、フランカー。中学からラグビーを始める。春日丘高校(現・中部大学春日丘高校)に進学すると、1年次、2年次とチームを全国大会に導くだけでなく高校日本代表、U20セブンズ日本代表に選出される活躍を見せる。帝京大学では、ケガに悩まされながらも大学選手権8連覇に大きく貢献。2017年、社会人ラグビーリーグ、トップリーグ(現・リーグワン)のトヨタ自動車ヴェルブリッツへ入団し、1年目からキャプテンに任命されチームの中心選手に。同年、日本代表に初選出。2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは、得意プレー〝ジャッカル〟をはじめ攻守にわたってチームを牽引、日本代表初のベスト8入りに貢献した。2021年は、ニュージーランドの名門チーム・ハイランダーズに期限付き移籍。世界最高峰リーグ、スーパーラグビーに参戦し〝ルーキー・オブ・ザ・イヤー(新人賞)〟を獲得するなど、日本ラグビーを代表するプレーヤーとして活躍中。

本書の要点

  • 要点
    1
    8万人の大観衆によるアウェーを体感した時は「ヤバかった」。その歓声に圧倒され、惨敗した。ラグビーとはメンタルを削り合うスポーツだ。逆にメンタルが伴っていれば、フィジカルでは勝てない相手に勝ちうる競技でもある。
  • 要点
    2
    ラグビーはプレーする人数が15人と非常に多い。だからこそ、チームに全てを捧げる献身性が求められるし、選手たちの信頼関係は何よりも大切なのである。
  • 要点
    3
    姫野ノートには自分の弱さと向き合うための、ありのままの言葉が並んでいる。自分を知ることで、自分を成長させる。そして、行動をするためのモチベーションに繋げていく。

要約

ラグビーという競技

自分のことを知るためにつける「ノート」

著者がプロのラグビー選手になってから始めたもの、それが「ノート」だ。ノートにその日の反省点や修正点を書き留め、プレーを振り返る選手は多い。著者はトヨタ加入1年目からキャプテンを務めているので、リーダーとしてのノウハウもこのノートに詰まっている。

著者のノートの変わったところは、悩みや欲望、泣き言まで、本音を書き連ねていることだ。これによって著者は自分と「対話する」。書きなぐった言葉の節々から「弱い自分」、そして「本当の自分」が見えてくる。著者がこの「姫野ノート」を書く理由。それは自分という人間を知るため……これに尽きるだろう。

私たちは自分のことを知っているようで知らない。自分のことを知っていれば、その時の気分や行動に流されずに、自分の行動に一貫性を持って突き進むことができる。自信を持って行く道を決める生き方は、アスリートだけでなく、すべての人の人生を意義深いものにするはずだ。

相手の心を削り切ったほうが勝つ競技
South_agency/gettyimages

2022年11月12日のことだ。著者はイギリスロンドンのトウィッケナム・スタジアムに立つ。この8万人を収容するスタジアムで、ラグビー日本代表はイングランド代表とのテストマッチに挑んだ。

怒涛の歓声はあらゆる音を飲み込み、味方の指示すらも聞こえなくなる。にもかかわらず、日本代表がボールを持つと途端にスタジアムは静まり返る。観衆が叩きつけてくる圧は、それだけでプレーを消極的にさせる。結果、日本代表は惨敗だった。

ラグビーはフィジカルの力比べだけで勝敗が決する競技ではない。1つ1つのプレーがメンタルに左右される。互いに心を削り合い、いかに相手に普段通りのプレーをさせないかが重要になってくる。だから、ラグビー選手は試合中に弱みを見せない。どれだけ疲れていても、「前を向き、胸を張って呼吸をする」。ラグビーに関わるものは皆、そうした精神性を叩き込まれるのだ。

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要約公開日 2023.10.06
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