就職・転職サービスのOpenWorkでは、6万社、1300万件を超えるクチコミを公開している。社員の「生の声」はその会社の実態を反映しているため、OpenWorkのデータは就職や転職、投資、経営と幅広く活用することができる。
著者はときどき「なぜ働きがいのある企業になる必要があるのか?」と質問を受けることがある。その裏には「売上や利益があがれば、従業員のことなど考えなくてもいいのでは」という思惑が見える。これに対する著者の答えは、「そのほうがお得だから」である。働きがいのある企業は「2つの市場」で有利になるのだ。
1つ目の市場は、「労働市場」である。人口減少の一途をたどる日本では、これからますます人材獲得競争が激しくなる。人材の流動化も進むだろう。すると優秀人材の獲得だけではなく、彼らのリテンションも課題となる。企業は働きがいのある組織づくりをしなければ、労働市場に適応できなくなる。
2つ目は「資本市場」だ。企業には企業価値を高め、投資家から選ばれ続ける必要がある。ある研究によると、企業の「働きがい」は業績や株価と強い相関関係があるという。働きがいのない企業は、投資家から見放されてしまうリスクがあるのだ。
それでは、まず「総合評価」を集計したランキングから見ていこう。本ランキングは、匿名の社員・元社員による職場環境に関する8つの評価項目(「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」)をもとに、独自のアルゴリズムで算出している。
その結果、総合評価の高い企業の第1位にはグーグル合同会社が輝いた。クチコミには「風通しが良く人事考課も公平で、待遇も非常に良い。社員の人柄も素晴らしく、悪い部分が見つからない」といったものがある。2位以下は中外製薬株式会社、株式会社リクルート、株式会社セールスフォース・ジャパンが続いた。
トップ10企業に共通しているのは、8項目すべてのスコアが高い、働きがいも働きやすさも優れた「オールランド型」であるということだ。トップ10に入る企業は上位0.01%であり、オールラウンド型は非常に珍しい。
一方、トップ40の企業で目立っていたのは「スパイク型」だ。いくつかの観点で飛び抜けて評価の高い形である。どこかを尖らせてそれに合った人材を採用する、合理的な戦略といえる。
逆に、総合評価の低い企業には「古い体質」「ぬるま湯体質」「風通しが悪い」という特徴が見えた。何をするにも腰が重く、環境の変化に適応できない「運動神経の悪い」企業である。仕事や投資先を探す際には、この辺も必ずチェックしたい。
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