熟睡者

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おすすめポイント

日々忙しく、きらびやかな光の下で生活する現代人を悩ます大きなテーマの1つは、間違いなく「睡眠」だろう。中でも日本人は、労働時間が長く、諸外国と比較して睡眠時間が短いことが昨今問題視されるようになってきた。ある調査では、日本の男女の平均睡眠時間は1日につき約6時間35分であり、これは国際平均と比較して45分ほど短い。

睡眠不足は、仕事や学業にマイナスの影響を与えるだけでなく、長期的にわれわれの体をむしばむことにもなりえる。たとえば、肥満や糖尿病といった重大な疾患につながる可能性が示されている。

そんなことはわかっている。それでも、日々忙しく、やりたいことがたくさんある。だから、そう簡単には長時間眠ることはできないのだ――そう感じる読者諸氏もいるだろう。その点、本書では睡眠「時間」もさることながら、その「質」を高めることが重要であると説き、そのために簡単に再現できるいくつものテクニックがまとまっている。例えば、食事をとるタイミングや睡眠をとる際の姿勢など、読んだ後にすぐ実行できるものが満載だ。

睡眠をしっかりとることができれば、学業も、仕事もパフォーマンスが高まり、より健康的に生きることができる。多くの人がわかっているが実践できなかった、睡眠の質を高めるということを、本書を通してぜひ実行してみてほしい。

著者

クリスティアン・ベネディクト(Christian Benedict)
1976年、ドイツ・ハンブルク生まれ。スウェーデン・ウプサラ大学准教授、神経科学者、睡眠研究者。キール大学の栄養科学修士課程を修了。リューベック医科大学で神経内分泌学を研究、博士号を取得。2013年よりウプサラ大学の教壇に立つとともに、同大学の睡眠研究を牽引。

ミンナ・トゥーンベリエル(Minna Tunberger)
ジャーナリスト、作家。約20年にわたり、スウェーデン通信(TT)や日刊紙「スヴェンスカ・ダーグブラーデット」等の主要メディアに健康をテーマにした記事を執筆。

本書の要点

  • 要点
    1
    睡眠とは、脳が掃除を行う時間であり記憶の定着などに大きな効果をもたらす。また、睡眠不足は仕事などのパフォーマンスを下げるだけでなく、数々の疾患につながるリスクを秘めている。
  • 要点
    2
    睡眠には4つのステージがあり、それぞれが周期的に繰り返されており、心身の回復や記憶の定着にどのように寄与しているかの研究が進んでいる。
  • 要点
    3
    睡眠の質を高めるには、体内時計が重要である。特に日中はしっかり日光を浴びることで、規則的な生活リズムを得られる。
  • 要点
    4
    睡眠の質を高めるには、食事の時間に気を払うとよい。また、牛乳やサワーチェリーが睡眠導入に有効である。

要約

睡眠の重要性と、4つのステージ

睡眠とは「脳の掃除」である

脳は、情報を整理する時間を必要とする。翌日のプレゼン内容や前日に知ったおいしいケーキのレシピなど、脳には重要だと思われる情報が蓄積されている。一方、朝にゴミ箱に捨てたものや帰宅してコートをどこに置いたかなど、とるにたらない情報は整理され、削除することで、新たな情報のための空きスペースを確保しなければならない。換言すれば、起きている間に生じるコストを睡眠で精算していることになる。起きるためには眠らなければならない。脳は睡眠中、廃棄物を大量に排出することで清掃を行う。睡眠を十分にとらなければ、脳の老化は早まり、ダメージを受けやすくなる。

また、睡眠は脳以外の消化器や循環器などが機能するためにも重要だ。睡眠をとることにより、細胞が再生し、修復される。覚醒時と比較して有害な細菌やウイルスにさらされるリスクが低い睡眠中は、免疫システムは体の健康を保つための任務に専念しやすいのだ。

研究では、成人で7~9時間の睡眠をとる場合に、有病率が最も低くなると明らかになっている。とはいえ、重要なのは睡眠の時間ではなく質であり、質を高めることで脳機能と免疫システムを円滑に働かせ、健康維持に資するものとなる。

睡眠不足がもたらすリスク
TatyanaGl/gettyimages

睡眠不足が短期間でも続けば、遺伝子や細胞にエピジェネティック変異が起こる可能性がある。ある実験によれば、たった一晩十分な睡眠をとらなかっただけで、筋肉と脂肪組織にエピジェネティック変異が見られたという。変異があったのは「時計タンパク質」と呼ばれ、睡眠や覚醒リズムとともに、代謝や細胞が持つ機能をコントロールしている物質だ。睡眠が十分でないと、時計タンパク質の生産と24時間のリズムの間にずれが生まれ、代謝障害につながり、肥満や2型糖尿病のリスクを高める可能性がある。

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要約公開日 2023.10.26
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