本書の要点

  • 成功する起業家は「メガロマニア(誇大妄想癖)」、「パラノイア(偏執症)」、「ヒューメイン(義理人情といった人間性)」の3要素を兼ね備えている。

  • 目標の大きさは、「今の自分で達成可能なもの」では小さすぎる。今の自分では「少し怖いと思える」くらいがちょうどいい。

  • 「完成度の低いサービスを提供するのは非常識だ」という声はもう古い。より早くサービスを展開し、ユーザーの反応を見ながら修正を行うアプローチが今の常識である。

  • シリコンバレーにいる人たちは、すべてのキャリアを、自分の夢やビジョンをかなえるための「手段」として考えていて、キャリアは「自分で決めること」である。

1 / 6

世界最先端の「スタイル(流儀)」

好きなことをやれ、やることを好きになれ

iStockphoto/Thinkstock

シリコンバレーで成功するために、まず何をすべきか。シリコンバレーでは、「あなたはいったい何ができるのか」という単純な原理で人間関係が決まってくる。そうした中で、私は「自分ができることを積み重ね、自分の環境を変えること」が重要だと考えている。

またシリコンバレーが多く起業家たちを惹きつける理由は、中心に位置するスタンフォード大学が極めて大きいと考えている。スタンフォードのモットーは「自由の風が吹き抜ける」であり、それは現在では「世界で自由と希望の伝達者となって活躍する期待」が込められている。「好きなことをやれ、やることを好きになれ」という考え方は、シリコンバレーに住む多くの住民や若者の行動原理となっている雰囲気さえある。

シリコンバレーに漂う起業家精神とは、自分の心の声に従う強さと勇気である。自分の心から楽しいと思える仕事を追求する生き様なのだ。

成功する起業家の3原則

シリコンバレーで成功している起業家に共通していることは何だろうか。私はこの10年間、数えきれないほどの起業家と出会い、そのなかで成功したと言われる経営者に三つの特筆すべき特徴があった。

まず一つ目は、メガロマニア、日本語では誇大妄想癖という意味で、自分はほかの誰よりも優れている、必ず勝つはずだという強烈な自信と、成功意欲にあふれている精神を言う。その多くは自信過剰ともいえるが、それがカリスマとなって表れ人を惹きつける。ビジネスや技術のブレイクスルーもいい意味で”根拠なき自信”がベースで起きたりする。

二つ目は、パラノイア、日本語でいうと偏執症という意味で、ある特定の妄想に取り付かれるタイプである。いつ競合が現れるか、いつ商品が問題を起こすか…常に勝ち続けるために邁進するのが彼らの宿命だ。技術進歩が激しく絶えず競争にさらされる世界では、多少パラノイアでないと勝ち残れないことは明白だ。

三つ目は、ヒューメイン、日本語でいう思いやる心や、義理人情といった人間味あふれるキャラクターである。ビジネスに貪欲な一方で、無邪気であったり、多少抜けていたり、情け深い側面があるからこそ、人はそのような経営者についていきたいと思う。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズ、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグなど皆この3つの資質を持っている。彼らと働いた人の中ではひどい経験をしたという人以上に”信者”がいることも事実だ。日本にももっとメガロマニアで、パラノイアで、ヒューメインなリーダーが増えてほしい。「出る杭は打たれるが、出すぎた杭は打たれない」のだ。

2 / 6

【必読ポイント!】 世界最先端の「ビジョン(志)」

達成可能な夢など小さすぎる

起業家にとって、「夢」は成功への生命線だ。では夢はどこまで大きく考えるべきなのか。これまで出会った経営者で、成功した人の言葉を思い出すとある一定の法則が見いだせた。それは、夢というものは、今の自分の実力で達成可能と思えるうちは小さすぎる。自分が「少し怖いと思える」くらいでなければならないということだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2748/4034文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2013.10.31
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

MITメディアラボ
MITメディアラボ
千葉敏生(訳)フランク・モス
コカ・コーラ
コカ・コーラ
関美和(訳)ネビル・イズデルデイビッド・ビーズリー
ソーシャル・ビジネス革命
ソーシャル・ビジネス革命
千葉敏生(訳)ムハマド・ユヌス岡田昌治(監修)
個を動かす
個を動かす
池田信太朗
それでもあきらめない
それでもあきらめない
林英恵
閉じこもるインターネット
閉じこもるインターネット
イーライ・パリサー井口耕二(訳)
スタンフォードの未来を創造する授業
スタンフォードの未来を創造する授業
清川忠康
米国製エリートは本当にすごいのか?
米国製エリートは本当にすごいのか?
佐々木紀彦

同じカテゴリーの要約

頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
頭の中がどんどん言葉になる瞬間言語化トレーニング
荒木俊哉
キーエンス 最強の働き方
キーエンス 最強の働き方
齋田真司
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
なぜ働く?誰と働く?いつまで働く?
有山徹
無料
正しい答えを導く質問力
正しい答えを導く質問力
山口拓朗
伝わるコツ
伝わるコツ
山本渉
できるリーダーが意思決定の前に考えること
できるリーダーが意思決定の前に考えること
内田和成
頭のいい人が話す前に考えていること
頭のいい人が話す前に考えていること
安達裕哉
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
決定版 アドラー心理学がマンガで3時間でマスターできる本
吉田浩岩井俊憲 (監修)
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
越川慎司
伝え上手になりたい
伝え上手になりたい
小川奈緒