あなたが初めて料理教室に通うことになったとしよう。先生から料理の手順を教えてもらえると思っていたのに、材料と調理器具を手渡されて「これが完成したビーフストロガノフの写真です。こんなふうにおいしく作ってみてくださいね」とだけ言われたらどう思うだろう。きっと途方に暮れてしまうはずだ。
ビジネスの現場ではこれに近いことが起きている。突然リーダーに抜擢して、「すぐに成果を出せ!」と言うのだ。乱暴な仕組みだが、この構造を根本的に変えるにはかなりの時間がかかるだろう。
構造を変えられないなら、個人の行動を変えるしかない。もうすぐリーダー職に任命されそうな方やリーダー職を狙っている方は、リーダーになる前に準備を進めておこう。そうすれば、就任してすぐ結果を出すことができるだろう。
もっとも簡単な「リーダーになるための準備」は、普段からリーダーの仕事ぶりをよく見て視座を高めておくことだ。例えばリーダーからの指示内容が急にコロッと変わったときは、リーダーを観察する絶好のチャンスである。しっかり観察すれば「社長の方針が変わって、課長に指示が下ったのかも」と気づけるかもしれない。
リーダーになれる人は「会社はどうして、こんなことをするのだろう」と社長の意図を考える。一方、リーダーになれない人は「なんでこんなことをしなきゃならないのだろう」と社長に不満を持つ。
あるベンチャー企業のエピソードを紹介しよう。その会社では、「日常の中で、非日常的な体験をどうやって作るかを考えてほしい」という意図で、リゾートでの合宿を実施した。社長は合宿初日、社員たちに向けて「非日常の中で、新しいアイデアをどんどん出してほしい」と熱く語ったという。だが結果として、社長が期待する成果は出なかった。
著者は後日、合宿に参加した社員たちにヒアリングを行った。そこで明らかになったのは、社員一人ひとりの視座が大きく異なるということだ。
視座の低い社員は、「業務をストップさせてまで、こんな合宿を開くなんて……。そんなお金があるなら、もっと給料を上げてくれた方がやる気が出るのに」といった感想を抱いた。
一方、視座の高い社員からは、次のような感想が寄せられた。「社長にこう言いたいです。わざわざリゾートで非日常の合宿を実施された社長の意図は理解しました。現場の考えをまとめましたので、あとは任せてください」
リーダーになれない人は、「合宿なんて、仕事がストップするだけだよ」と、自分の仕事という観点でしか物事を見ていない。それに対して、リーダーになれる人は、「この合宿にはどんな狙いがあるんだろう」と経営者目線で考えていたのだ。
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