社会人になると、学生時代にはあまり聞かなかった言い回しを耳にする機会が増える。意味が広かったり、曖昧だったり、婉曲だったりする「大人の言葉」を、新入社員は少しずつ学んでいくのだろう。
人はいろいろな言葉の表現で何かを伝えようとしているが、言葉によって人の気持ちをコントロールしようとする人もいる。そういう言葉の中で、一番タチが悪いのは、「おまえ、例の件だけど、評判悪いよ」という言い方だ。言われたら、「嫌〜な感じ」がするのは、「自分の言葉で批判していない」狡猾さゆえだろう。
すべてのことを自分で考えて判断するという人は少数派だ。多くの人は、周囲の状況を参考に、世の中で多数派であればいいやと思っている。「評判悪いよ」と言う人は単に、自分の気に入らないことを「周囲の人の声」として伝えているにすぎない。だが、言われた側は「見えない影」に怯えることになる。
同じ心理を利用した好対照的な言葉は、「○○が感心してたよ」だ。優れた仕事をした部下に対して、自分の判断で褒めるのではなく、他の人の評判を利用してさらに自信をつけさせる。
若い人への言葉には、その人の仕事ぶりが表れる。ストレートに自分の意見を言わずに、人のせいにしながら自分に都合のいいようにものごとを進めようとする人とは距離を取ったほうがいいだろう。
物理的な行動を意味している言葉が、いつの間にか心理的な働きを示すように使われるようになることがある。「手を組む」「頭が上がらない」といったものがこれにあたるが、近年よく聞くのは「寄り添う」だ。統計的なデータがあるわけではないが、2011年の東日本大震災ごろから耳にする機会が増えたように感じられる。
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