Thinking Baseballの表紙

Thinking Baseball

慶應義塾高校が目指す“野球を通じて引き出す価値”


本書の要点

  • テレビで中継される高校野球はとても華々しい。けれどもその一方で、高校野球の価値は年々低下しているのではないか。

  • 今でも高校野球には時代にそぐわない風習や価値観がたくさんある。指導者が結果を求めるが故に起きてしまう選手の故障。ファンによる青春の押し付け。そうした問題を、指導者が率先して変えていくべきではないだろうか。

  • 高校野球は選手のものだ。だから指導者は選手を尊重し、一人一人を尊重するような組織を作らなくてはならない。

1 / 5

高校野球の価値

青春ドラマの光と影

高校野球の本来あるべき姿とは一体、どのようなものだろうか。毎年春と夏に行われる高校野球の大会は、とても華々しい。しかし、その実高校生たちは大人のエゴに巻き込まれ、高校野球の価値そのものは年々低下しているのではないか。過剰な選手管理、勝利至上主義による不正、同調圧力——輝かしい青春ドラマの裏にはさまざまな問題が潜んでいる。こうした問題を放置していると、高校野球はいずれ衰退してしまうかもしれない。高校野球の価値とはそもそもいったいなんだろうか。それは、高校生が野球を通し、何を身に付けられるかにかかっている。

高校野球の三つの価値

Jacob Wackerhausen/gettyimages

著者の考える高校野球の価値の一つは成長だ。悩みや苦労に正面から立ち向かい、どんな方法で乗り越えていくか。このプロセスを経験することは選手にとって大きな財産になる。こうした「果実」を得られるのは部活動の大きな意義だろう。二つ目の価値は、自分自身で考えることの楽しさを味わえることだ。自分で考えるのは難しい。けれども、その分やりがいもある。打ち方や投げ方、守り方を細かく教え込んだほうが、すぐに結果を出せるかもしれない。だが、それでは選手は自分で何かをつかむという体験をすることができない。慶應義塾高校野球部では、選手自身がどう打ちたいか、どう投げたいか、どう守りたいかを考える。選手が自分なりの課題を見出し、その答えを自分なりに見つけていくことに重きを置いているのだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3772/4385文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2024.01.02
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

[新装版]心を高める、経営を伸ばす
[新装版]心を高める、経営を伸ばす
稲盛和夫
店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる
店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる
笹井清範
不安なモンロー、捨てられないウォーホル
不安なモンロー、捨てられないウォーホル
クラウディア・カルブ葉山亜由美(訳)
ロミオとジュリエット
ロミオとジュリエット
シェイクスピア
スキルマッチング型複業(副業)の実践書
スキルマッチング型複業(副業)の実践書
大林尚朝
ヤングケアラーってなんだろう
ヤングケアラーってなんだろう
澁谷智子
熟達論
熟達論
為末大
ドイツの女性はヒールを履かない
ドイツの女性はヒールを履かない
サンドラ・ヘフェリン

同じカテゴリーの要約

Z世代の頭の中
Z世代の頭の中
牛窪恵
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本
越川慎司
世界標準の1on1
世界標準の1on1
スティーヴン・G・ロゲルバーグ本多明生(訳)
増補改訂版 フィードバック入門
増補改訂版 フィードバック入門
中原淳
完訳 7つの習慣
完訳 7つの習慣
スティーブン・R・コヴィーフランクリンコヴィージャパン(訳)
トリニティ組織
トリニティ組織
矢野和男平岡さつき(協力)
1分で話せ
1分で話せ
伊藤羊一
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
世界のマネジャーは、成果を出すために何をしているのか?
井上大輔
「仕事ができるやつ」になる最短の道
「仕事ができるやつ」になる最短の道
安達裕哉
部下をもったらいちばん最初に読む本
部下をもったらいちばん最初に読む本
橋本拓也