不安なモンロー、捨てられないウォーホル

「心の病」と生きた12人の偉才たち
未読
不安なモンロー、捨てられないウォーホル
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「心の病」と生きた12人の偉才たち
未読
不安なモンロー、捨てられないウォーホル
出版社
日経ナショナル ジオグラフィック

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定価
2,310円(税込)
出版日
2022年11月21日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

マリリン・モンローは、なぜ大量の睡眠薬を飲んだのか?アンディ・ウォーホルが箱の中にありとあらゆるものを詰め込んでいた理由は?本書は、そんな著者の素朴な疑問から生まれた一冊だ。

本書に登場するのは、相対性理論を打ち出したアインシュタイン、奴隷を解放したアメリカ大統領リンカーン、20世紀を代表する作曲家ガーシュウィン、ロシアの文豪ドストエフスキーなど、さまざまな分野で偉業を成し遂げた人物ばかりだ。しかし意外なことに、その誰もが何らかの「心の病」を抱え、それゆえの特異な行動を見せていた。

現代ほど心の病の解明が進んでいなかった当時は、単なる「奇癖」と看過されたり、性格のせいにされたり、はたまた今では禁止される恐ろしい治療が施されることもあった。しかし、現代医学の観点から彼らの脳と心を眺めてみると、そこには明らかな疾患が見えてくる。本書では残された資料や伝記、本人の手紙や医療報告書などを参考に、彼らが今でいうどんな精神疾患にかかっていたかを導き出す。

本書では歴史に名を残す12名の偉才たちが登場する。それぞれの人生を辿っていく中で見えるのは、輝かしい功績の裏で苦しみもだえる姿である。私たちは才能のある人たちを羨んだり嫉妬したりすることがよくあるが、彼らも同じ人間であり、むしろ彼らのほうが深刻な生きづらさを抱えていたのではと気づかされる。

偉人たちの心の中に何が起こっていたのか。歴史を見る目が変わる意欲作、ぜひ一読いただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

クラウディア・カルブ(Claidia Kalb)
香港生まれのアメリカ人科学ジャーナリスト、『ニューヨークタイムズ』ベストセラー作家。『ニューズウィーク』のシニアライターを17年間務めたあとに独立し、科学、心理学、人間行動学に関する記事を『ナショナル ジオグラフィック』『スミソニアン』『サイエンティフィック・アメリカン』といったメディアに寄稿している。テレビやラジオ番組への出演、サイエンスライティングやメディアについての講演も多い。

本書の要点

  • 要点
    1
    36歳でこの世を去った女優マリリン・モンローは、境界性パーソナリティー障害であったと考えられる。彼女の生い立ちは不幸の連続で、名声を得てからも精神は安定しなかった。
  • 要点
    2
    ロシアの文豪ドストエフスキーは、ギャンブル依存に陥っていた。シベリアでの過酷な抑留生活により、人間に対する深い洞察力を得た反面、不安感も増大させた。彼は足しげくカジノに通うようになり、ギャンブル障害を発症した。
  • 要点
    3
    アインシュタインはアスペルガー寄りの自閉スペクトラム症であったと推測される。興味の対象への天才的な能力やユニークな視点は、アスペルガー特有のものだと考えられる。

要約

「心の病」と生きた偉人たち

現代医学が解き明かす心の病

私たちはみな、外向きの顔を作りながら、実際にはさまざまな葛藤を抱えて生きている。それは、歴史に名を残す人物とて同じである。

心の問題に対する私たちの認識は、科学の進歩によって劇的に変わった。かつては電気ショックなどの荒療治が施されてきたが、20世紀に入り、さまざまな療法や向精神薬が用いられるようになった。今では脳と心の間には密接な関係があることがわかり、科学者たちは心の病を生物学的に解明しようとしている。

本書では「心の病」と生きた古今の著名人12名を取り上げ、現代精神医学の観点から心の問題を探っていく。診断の基準はアメリカ精神医学会が発行している『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』という手引書を参考にし、神経科学者や精神科医、臨床心理士などの専門家にも意見を仰いだ。

本要約では、マリリン・モンロー、ドストエフスキー、アインシュタインの3名を紹介する。

【必読ポイント!】マリリン・モンロー(境界性パーソナリティー障害)

孤独で不安なセックスシンボル
Caiaimage/Martin Barraud/gettyimages

1962年5月19日のマディソン・スクエア・ガーデン、マリリン・モンローはジョン・F・ケネディ大統領の45歳のチャリティー祝賀会に出演した。眩いドレスに身を包んだモンローは、輝くスポットライトの下で歌い始めた。「ハッピーバースデー、トゥーユー。ハッピーバースデー、ミスター……プレジデント」。

このパフォーマンスによって、モンローの「セックスシンボル」「頭の悪い金髪」というイメージが決定的なものとなり、アメリカの文化史に残る一場面となった。ケネディ大統領は「もう政治の世界から引退してもいいくらいだ」と喜んだ。

だがこの祝賀会から3カ月後、モンローは36歳でこの世を去ってしまう。

モンローは華々しい活躍の裏で、常に苦悩と複雑さを抱え、愛情と心の安定を求めていた。彼女は「境界性パーソナリティー障害」を患っていたと考えられる。

この障害は「神経症」(うつや不安)と「精神病」(統合失調症や妄想性障害)の2つの「境界線上」にあり、どの診断カテゴリーにも当てはまらず、虚無感、アイデンティティーの分裂と混乱、激しい感情の起伏、不安定な対人関係などの症状が見られる。彼らは安心感を求めるがうまくいかず、モンローもその例に漏れなかった。

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要約公開日 2024.01.03
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