熟達論

人はいつまでも学び、成長できる
未読
熟達論
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人はいつまでも学び、成長できる
著者
未読
熟達論
著者
出版社
出版日
2023年07月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

いがぐり頭に、あごひげ。屈強な海外選手たちに囲まれながら、ハードルを次々と飛び越えていく、小柄な身体。試合後のインタビューで見せる、どこか飄々とした受け答え――現役時代の著者のことを、要約者はよく覚えている。

本書の著者は、為末大。言わずと知れた男子400メートルハードルの元選手だ。2001年と2005年の世界陸上で2度銅メダルを獲得。世界大会における陸上短距離種目のメダルは、日本人初の快挙だった。オリンピックにも3度出場。著者による日本記録は、2023年10月の今も破られていない。

大学生の頃からコーチをつけずトレーニングしていた著者は、常に自分で「学ぶこと」に向き合ってきた。学ぶとはどういうことか。どうすれば技術が高まるのか。どんな道のりを経て人は成長するのか。現役引退後、「学び」への関心が一層高まった著者は、将棋の羽生善治氏からiPS細胞研究の山中伸弥教授まで、各界の達人たちから話を聞いた。そこで気づいたのは、「学び」には、分野を超えた普遍的なプロセスとアプローチがあるということだった。アスリート時代の実体験と引退後の知見を合体させ、「学び」の過程を、すべて自分の言葉で、極めて精緻にまとめあげたのが、この『熟達論』だ。

本書を読んでいると、「人はいつまでも学び、成長できる」という著者の信念が実感できる。新しいことに挑戦しようとしている人や、うまくいかないことに悩んでいる人、自分はもう成長できないと諦めている人にも、この本を読んでもらいたい。

ライター画像
奥地維也

著者

為末大(ためすえ だい)
元陸上選手。1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2023年10月現在)。現在は執筆活動、身体に関わるプロジェクトを行う。Deportare Partners代表。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    技能と自分のどちらかだけを高めても、私たちは成長できない。技能と自分は、切り離すことのできない「ひとつのもの」、つまり人間という総体として捉えるべきだ。この人間総体を高めること、それが熟達である。
  • 要点
    2
    熟達のプロセスには、遊びを楽しむ「遊(ゆう)」、基本を身につける「型(かた)」、型を深く観察する「観(かん)」、型の要を捉える「心(しん)」、無我の境地「空(くう)」の5段階がある。
  • 要点
    3
    ある技能は別の分野では通用しないのが普通だ。しかし、熟達の過程で得た知見と経験は、分野を超えた普遍性を持つ。

要約

熟達とは何か

技能、自分、人間総体

「熟達」とは、一般的には特定の領域において技能を極めた状態を指す。だが、ただ技能を追求するだけで熟達に至ることはできるのだろうか。

著者が「熟達」を意識しはじめたのは、大学でスランプに陥っていた頃だった。練習量を増やしても成果は出ない。思い悩んでいたとき、短距離コーチだった高野進さんに出会った。高野さんは著者の走りを少し見て「足を三角に回しなさい」と言った。まったく意味がわからなかったが、言われたとおりにしばらく練習してみると、動きが変わり、競技に対する考え方までもが変化していった。

数年経って「走る」ことのメカニズムを理解した著者は、最初に受けた指摘が、他の多くの問題の原因だったことに気づいた。高野さんはなぜすぐに問題の核心を見抜くことができたのか。この不思議な学びの体験は、技能にだけ目を向けていたら起こらなかった。

本書では、熟達を次のように定義する。「熟達とは人間総体としての探求であり、技能と自分が影響しあい相互に高まること」

学ぶということは、人間総体を高めることであり、この過程が熟達の道である。

5段階のプロセス
Chitraporn Nakorn/gettyimages

熟達を探求するプロセスは一本道ではなく、段階に分かれている。著者はずっと、矛盾する教えが両立することを不思議に思っていた。「質が大事」「量が大事」や、「考えろ」「考えるな、感じろ」はいずれもよく聞く教えだ。

矛盾するように思える教えが両立するのは、段階ごとに重要なことが異なるからだ。著者はかつてスランプに悩んでいたが、今ならやり方を変えなかったことが問題だったのだとわかる。成長には段階があると理解しておくことが重要だ。

本書では熟達のプロセスを「遊(ゆう)」「型(かた)」「観(かん)」「心(しん)」「空(くう)」の5段階に分けている。このプロセスには、領域を超えた普遍的な要素がある。

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要約公開日 2023.11.30
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