私たちは食べなければ生きていけない。商売も同様である。損得や儲けを考えずして、商いを続けていくのは不可能だ。
だが、人は食べるためだけに生きているわけではない。それと同様、商売も儲けてこそ続けられるが、儲けること自体が目的ではないはずだ。
戦前から経営指導者として、また出版人として商業の発展と商人の育成に尽力した倉本長治によると、商売の目的は「人の幸せを育むこと」であり、店が繁盛するのはその目的が達成された結果である。利益もまた、人としてあるべき道を選べているかどうか、その達成度合いを測る尺度にすぎない。
一人のお客様に対し、心から誠実に対応しよう。注視すべき基準は、損得よりも善悪だ。その結果、関わる人すべてが幸せになる。
本当の商売は3つの要件から成り立っている。自分の仕事が「愛」に基づいているかどうか、行いの隅々まで「真実」に徹しているかどうか、お客様、従業員、取引先、そして自分にも相応の「利潤」をもたらしているかどうか、だ。この3つの要件を満たし、正当な報酬を誇り高く手にする――これこそ倉本長治が提唱する「本当の商売」である。
売らないほうがそのお客様のためになる、そんな商品もある。
商品が売れれば目先の利益は上がる。しかしお客様はその商品を買ったことに納得できないままだろう。そうした店はいずれ選ばれなくなってしまう。
お客様のためにあえて売らない。あなたには、そういう商売ができるはずだ。
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