キャズムVer.2 増補改訂版

新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論
未読
キャズムVer.2 増補改訂版
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新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論
未読
キャズムVer.2 増補改訂版
出版社
出版日
2014年10月03日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
5.0
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おすすめポイント

キャズムは初版が1991年に刊行されて以来、ロングセラーとなりシリーズ累計で60万部を超えている定番書である。日常会話でも「あの企業は鮮やかにキャズムを超えた」というように語られることもあり、ほとんどの読者は「キャズム」という言葉を耳にしたことがあるのではないだろうか。本書はそのキャズム理論を最新事例を使って再編成したものである。

ベンチャー企業には多くの試練が待ち受けている。まずは初期市場でサービスの評価が受けられるのかが難関と言え、多くの企業はそこで選別されてしまう。その難しさのあまり、初期市場で一定の評価を得るとふと安心してしまう局面がある。しかしその先には連続した事業拡大という易しい道はなく、キャズムという次の壁が立ちはだかるのである。キャズムの前後では、ビジョナリーから実利主義者に顧客属性が変わるため、今までの方法論が活かしにくい。そんな中で無理矢理営業力に頼った展開をしてしまうことで、事業収益が急激に悪化し、ベンチャー企業が衰退への道を辿ってしまうという。

そのようなハイテク市場の理解と、キャズムを超えるための方法論を、本書が事例も交えて詳細に指南してくれることは、多くの人にとって大変有難いことだろう。本書はハイテク業界を中心に議論されているものの、内容は多くの事業に該当するもので、新規事業を担うビジネスパーソンであれば、本書の内容はビジネスに不可欠な一般教養とも呼べるものだろう。もし読者の方が、キャズム理論に体系的に触れていないのであれば、本書こそ一読すべき一冊である。

ライター画像
大賀康史

著者

ジェフリー・A・ムーア
ハイテク企業向けにマーケティングに関するコンサルティングサービスを提供する「キャズムグループ」の名誉会長ほか、「アカマイテクノロジーズ」および数社の非上場企業の取締役を歴任。これまでに、幾多のスタートアップ企業をはじめとして、Cisco、HP、Microsoft、SAP、Yahoo!などの企業にもアドバイスを与えている。

本書の要点

  • 要点
    1
    ハイテク業界の市場は、イノベーター、アーリー・アドプターからなる初期市場、アーリー・マジョリティー、レイト・マジョリティーからなるメインストリーム市場、そしてテクノロジーに関心を示さないラガードで構成される。
  • 要点
    2
    アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間には、キャズムと呼ばれる溝があり、そこから這い上がるのには大変な労力を要する。
  • 要点
    3
    キャズムを超えるために、ニッチ市場を選びそこでナンバーワンになる、「小さな池で大きな魚になる」戦術が有効である。その後口コミを梃子に、アーリー・マジョリティー層を開拓していくべきだ。

要約

ハイテク・マーケティング ~錯覚~

テクノロジー・ライフサイクル
Nerthuz/iStock/Thinkstock

人々の行動様式に変化をもたらすような、不連続なイノベーションあるいは破壊的イノベーションと呼ばれる製品に直面すると、人は様々な反応をする。

例えば、あなたはいつ電気自動車を買うのだろうか。誰も持っていないときに買うのであれば、イノベーター(革新者)あるいはアーリー・アドプター(先駆者)と分類される。もし、電気自動車向けのサービスステーションが街中に展開されたら買うのであれば、アーリー・マジョリティー(現実的な購買者)だ。ほとんどの人が電気自動車に乗り換えた後に買う場合、レイト・マジョリティー(追随者)。永久に買わないのであればテクノロジーに関心を示さないラガード(無関心層)である。

電気自動車のような革新的な製品の市場は、イノベーターからラガードに至るテクノロジー・ライフサイクルを形成する。それぞれの顧客グループは似た考えを持ち、市場拡大のためには隣り合った顧客グループの間の溝を乗り越えなければならない。特に革新的な製品を好むアーリー・アドプターと実利を求めるアーリー・マジョリティーの間には最も大きな溝があり、それをキャズムと呼ぶ。その2つの顧客グループは一見似ているようで、全く異なる市場を構成していることが特徴である。次にキャズムに落ち込んで失敗した典型的な企業のストーリーを紹介しよう。

あるハイテク企業の物語

あるハイテク企業は一年目に、製品を市場に出しテクノロジー・マニアからの称賛を受け、順調な滑り出しをする。二年目はアーリー・アドプターの属性の顧客から受注を増やし、売上目標を達成、次年度の売上を300%増と見込むほどに勢いづく。三年目に営業部隊を拡大し、広告を開始、カスタマーサポート・チームも強化する。しかし、年度半ばに売上目標の未達が発覚し、営業費用の増加が重くのしかかる。

緊急ミーティングでは、営業部隊はプロダクトの問題を指摘、エンジニアはスケジュール通りの開発をしたと主張、カスタマーサポートも経営層もそれぞれ不満を表明する。結局、何も解決されず、第3四半期に突入し、売上未達が顕著となり、ベンチャーキャピタルからのプレッシャーからマーケティング担当のバイスプレジデントを解雇。資金が底を尽き不利な条件での資金調達を経て、会社救済の専門家を呼ぶも、業績は改善せず衰退が決定的となっていく。

つまり、初期市場の開拓で上昇気流に乗ったと感じても、メインストリーム市場の成功は約束されないのである。言い換えれば、新たな市場は連続的に現れる訳ではないということだ。キャズムに落ち込む危険を回避するためには、ハイテク・マーケティング・モデルの理解が不可欠だ。

【必読ポイント!】ハイテク・マーケティング ~悟り~

初期市場 ~イノベーター:別名 テクノロジー・マニア~
Jacob Wackerhausen/iStock/Thinkstock

テクノロジー・マニアは、テクノロジーの価値がわかる人達であり、信じられないような欠陥もひどいパフォーマンスも全て受け入れてしまう層である。例えば、HDTV(高精細テレビ)、デジタルカメラなどを1000ドルをはるかに超える額で購入するような人だ。つまり、テクノロジー・マニアは新製品を真っ先に手に入れることに執着する層と言える。

そのようなテクノロジー・マニアは新しいテクノロジーを普及させるための橋頭堡(きょうとうほ)となり、最初に支持を取り付けるべき相手と考えるべきだ。

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要約公開日 2015.01.20
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