キャズムVer.2 増補改訂版の表紙

キャズムVer.2 増補改訂版

新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論


本書の要点

  • ハイテク業界の市場は、イノベーター、アーリー・アドプターからなる初期市場、アーリー・マジョリティー、レイト・マジョリティーからなるメインストリーム市場、そしてテクノロジーに関心を示さないラガードで構成される。

  • アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティーの間には、キャズムと呼ばれる溝があり、そこから這い上がるのには大変な労力を要する。

  • キャズムを超えるために、ニッチ市場を選びそこでナンバーワンになる、「小さな池で大きな魚になる」戦術が有効である。その後口コミを梃子に、アーリー・マジョリティー層を開拓していくべきだ。

1 / 3

ハイテク・マーケティング ~錯覚~

テクノロジー・ライフサイクル

Nerthuz/iStock/Thinkstock

人々の行動様式に変化をもたらすような、不連続なイノベーションあるいは破壊的イノベーションと呼ばれる製品に直面すると、人は様々な反応をする。例えば、あなたはいつ電気自動車を買うのだろうか。誰も持っていないときに買うのであれば、イノベーター(革新者)あるいはアーリー・アドプター(先駆者)と分類される。もし、電気自動車向けのサービスステーションが街中に展開されたら買うのであれば、アーリー・マジョリティー(現実的な購買者)だ。ほとんどの人が電気自動車に乗り換えた後に買う場合、レイト・マジョリティー(追随者)。永久に買わないのであればテクノロジーに関心を示さないラガード(無関心層)である。電気自動車のような革新的な製品の市場は、イノベーターからラガードに至るテクノロジー・ライフサイクルを形成する。それぞれの顧客グループは似た考えを持ち、市場拡大のためには隣り合った顧客グループの間の溝を乗り越えなければならない。特に革新的な製品を好むアーリー・アドプターと実利を求めるアーリー・マジョリティーの間には最も大きな溝があり、それをキャズムと呼ぶ。その2つの顧客グループは一見似ているようで、全く異なる市場を構成していることが特徴である。次にキャズムに落ち込んで失敗した典型的な企業のストーリーを紹介しよう。

あるハイテク企業の物語

あるハイテク企業は一年目に、製品を市場に出しテクノロジー・マニアからの称賛を受け、順調な滑り出しをする。二年目はアーリー・アドプターの属性の顧客から受注を増やし、売上目標を達成、次年度の売上を300%増と見込むほどに勢いづく。三年目に営業部隊を拡大し、広告を開始、カスタマーサポート・チームも強化する。しかし、年度半ばに売上目標の未達が発覚し、営業費用の増加が重くのしかかる。緊急ミーティングでは、営業部隊はプロダクトの問題を指摘、エンジニアはスケジュール通りの開発をしたと主張、カスタマーサポートも経営層もそれぞれ不満を表明する。結局、何も解決されず、第3四半期に突入し、売上未達が顕著となり、ベンチャーキャピタルからのプレッシャーからマーケティング担当のバイスプレジデントを解雇。資金が底を尽き不利な条件での資金調達を経て、会社救済の専門家を呼ぶも、業績は改善せず衰退が決定的となっていく。つまり、初期市場の開拓で上昇気流に乗ったと感じても、メインストリーム市場の成功は約束されないのである。言い換えれば、新たな市場は連続的に現れる訳ではないということだ。キャズムに落ち込む危険を回避するためには、ハイテク・マーケティング・モデルの理解が不可欠だ。

2 / 3

【必読ポイント!】ハイテク・マーケティング ~悟り~

初期市場 ~イノベーター:別名 テクノロジー・マニア~

Jacob Wackerhausen/iStock/Thinkstock

テクノロジー・マニアは、テクノロジーの価値がわかる人達であり、信じられないような欠陥もひどいパフォーマンスも全て受け入れてしまう層である。例えば、HDTV(高精細テレビ)、デジタルカメラなどを1000ドルをはるかに超える額で購入するような人だ。つまり、テクノロジー・マニアは新製品を真っ先に手に入れることに執着する層と言える。そのようなテクノロジー・マニアは新しいテクノロジーを普及させるための橋頭堡(きょうとうほ)となり、最初に支持を取り付けるべき相手と考えるべきだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2247/3655文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2015.01.20
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

ストラテジック・イノベーション
ストラテジック・イノベーション
ビジャイ・ゴビンダラジャンクリス・トリンブル酒井泰介(訳)
宇宙の「一番星」を探して
宇宙の「一番星」を探して
谷口義明
ワイドレンズ
ワイドレンズ
ロン・アドナー清水勝彦(監訳)
透明マントを求めて
透明マントを求めて
雨宮智宏
大前研一ビジネスジャーナル No.1
大前研一ビジネスジャーナル No.1
大前研一(監修)good.book編集部(編)
マッキンゼー成熟期の成長戦略
マッキンゼー成熟期の成長戦略
大前研一
ザ・ファーストマイル
ザ・ファーストマイル
川又政治(訳)スコット・D・アンソニー山田竜也(監修)津田真吾(監修)津嶋辰郎(監修)
中国市場で日本の商品を「高く売る」ためのマーケティング戦略
中国市場で日本の商品を「高く売る」ためのマーケティング戦略
中野好純

同じカテゴリーの要約

【新】100円のコーラを1000円で売る方法
【新】100円のコーラを1000円で売る方法
永井孝尚
起業の天才!
起業の天才!
大西康之
経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
15秒!集客革命
15秒!集客革命
仲野直紀
ユニクロ
ユニクロ
杉本貴司
心理的安全性のつくりかた
心理的安全性のつくりかた
石井遼介
ローソン
ローソン
小川孔輔
ジョブ型人事の道しるべ
ジョブ型人事の道しるべ
藤井薫
組織と働き方の本質
組織と働き方の本質
小笹芳央
地頭力を鍛える
地頭力を鍛える
細谷功