ストラテジック・イノベーション
戦略的イノベーターに捧げる10の提言

未 読
ストラテジック・イノベーション
ジャンル
著者
ビジャイ・ゴビンダラジャン クリス・トリンブル 酒井泰介(訳)
出版社
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2013年08月05日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.5
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戦略的イノベーターに捧げる10の提言
著者
ビジャイ・ゴビンダラジャン クリス・トリンブル 酒井泰介(訳)
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定価
2,000円 (税抜)
出版日
2013年08月05日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
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レビュー

成熟し、成長が停滞している大企業が競争力を取り戻すには、どうしたらいいのか? 自らイノベーションを起こして成功した大企業は、やがて、新たなイノベーターたちに道を譲るしかないのか? 著者らはこのテーマから出発し、研究を重ねてきた。本書は、大企業が自ら戦略的にイノベーションを起こしていくための道筋を明らかにするものである。

本書の素晴らしい点は、著者らの提言が、具体的かつ明確であることだ。ガラス材メーカーのコーニングや、ニューヨーク・タイムズなどの、アメリカの企業内で起こった新規事業が例として挙げられている。それら新規事業は、既存事業との関わりの中でどのような課題に直面し、どうやってそれを克服していったかということを紹介しつつ、すべきことをいくつかの項目に絞り込み、最終的には10のルールを導き出している。

イノベーションは、優れたアイデアさえあればなんとかなるというものではない。アイデアが新規事業として成功するまでの道筋には、いくつもの落とし穴がある。その落とし穴に落ちない方法を、本書では懇切丁寧に教えてくれているといえるだろう。

本書のテーマはまさに、多くの日本企業が現実に直面している問題の、ど真ん中のところを突いている。創業からある程度年数の経った企業の経営陣の方々、社員の方々は、この1冊から得るものは非常に大きいといえるだろう。イノベーションはベンチャー企業の専売特許ではない。歴史ある企業だからこそ起こせるイノベーションがあるのだ。

熊倉沙希子

著者

ビジャイ・ゴビンダラジャン
ハーバード・ビジネススクールでMBAと博士号を取得。現在は、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス、アールC・ドーム1924教授。世界有数の戦略とイノベーションの大家の一人。
フォーチュン500社の25%以上の企業をコンサルティングし、ダボス会議などのグローバルなフォーラムで基調講演などを行なっている。2011年には、世界に最も影響力を与えたビジネス思想の権威50人を選出する「Thinkers50」の第3位に堂々ランクイン。トリンブルとの共著に『イノベーションを実行する――挑戦的アイデアを実現するマネジメント』(NTT出版)、『リバース・イノベーション』(ダイヤモンド社)などがある。

クリス・トリンブル
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスでMBAを取得後、現在は同ビジネススクールで教鞭をとる。ゴビンダラジャンとの共著、GEのジェフリー・イメルトとの共同執筆で『ハーバード・ビジネス・レビュー』に論文を発表している。

本書の要点

  • 要点
    1
    イノベーションを成功させるにあたって、ニューコ(新規事業)は三つの課題に直面する。コアコ(既存事業)とのあいだでは、既存のやり方を「忘却」し、既存の資産を活用する「借用」の課題をクリアせねばならない。また、事業成果の予測精度を高めるための「学習」をしなければならない。
  • 要点
    2
    ニューコは、課題をクリアするために、自らの組織的DNAを利用しなければならない。言い換えれば、課題をクリアできるような価値観や方向性を組み込んで、組織的DNAをつくっていく必要がある。

要約

【必読ポイント!】戦略的イノベーションとは何か

大企業が生き残るためのイノベーション
robuart/iStock/Thinkstock

イノベーションに成功した企業が大企業に成長する。しかし、そのビジネスモデルの成長は必ず停滞するときがくる。大企業は新たなイノベーターに地位を追われる運命にあるのだろうか。著者らは、そうしたとき、新たなビジネスモデルを探る

「戦略的イノベーション」こそが、大企業にとって選ぶべき選択肢であると述べる。

戦略的イノベーションは、「ビジネスを定義する三つの根本的要素――顧客は誰か、彼らにどんな価値を提供するのか、それをどうやってもたらすのか――の少なくとも一つに取り組む、新たな試みでなければならない」という。

また、戦略的イノベーションとは、継続的な事業プロセスの改善や、製品やサービスのイノベーションとは性質が異なる。費用規模も大きく、所要時間も長く、結果もどうなるか見えない。難しく複雑で、たいへん危険な経営的試練であるが、企業の長期的な存続は、戦略的イノベーションにかかっているといっても言い過ぎではない。

本書では、戦略的イノベーションにつながる新規実験事業を「ニューコ(NewCo)」、それにもっとも緊密に関係する既存の事業部門を「コアコ(CoreCo)」と呼んでおり、本要約でもそれを踏襲することとする。

戦略的イノベーションの成功のために

ニューコは独立した事業部門であることが望ましく、事業計画から収益の段階に至るまでは、相反する創造性と規律正しい実行との両方が必要になる。加えて、同じ会社に新旧の事業が共存するという事態は、独特の課題を生む。それらは、「忘却」、「借用」、「学習」の三つである。

ニューコは、既存事業であるコアコがそうあることを選んで成功した、人事評価の方法や、組織文化、既成概念などを「忘却」して事に当たる必要がある。また、コアコの持てる、既存の顧客や流通網などの資産を「借用」することは、ニューコがベンチャーに対して優位な点である。さらに、ニューコは、不確実な新興市場で成功するために、事業成果の予測精度を上げるという「学習」をしなければいけない。

これらの課題をクリアするために、ニューコが自らの組織的DNA――つまり、スタッフや、組織構造、システム、組織文化――を活用できるよう、DNAに価値観や意思決定の方向性などを組み込むことが必要である。

忘却

コーニング・マイクロアレイ・テクノロジーズの忘却の課題
EtiAmmos/iStock/Thinkstock

忘却の課題について、コーニングという特殊ガラス製品やセラミックス製品をつくる会社の事例に沿って考えてみよう。コーニングは、特殊ガラス製品の製品開発技術を活かして、DNAマイクロアレイの製造に乗り出すことにした。DNAマイクロアレイとは、バイオテクノロジーの研究が進むにつれて需要が高まった研究資材のひとつで、長方形のガラス製スライドに、数百ものDNAサンプルが塗りつけてある。

そのために立ち上げられたコーニングの新規事業が、コーニング・マイクロアレイ・テクノロジーズ(CMT)である。が、CMTは、社の幹部がコーニングの組織的DNAをそのまま移植したために、忘却の課題に苦しむことになった。

忘却の課題と、それがニューコに与える意味合いを理解するためには、ニューコのビジネスモデルや持つべき能力がコアコのそれとどう違うのか、ビジネスモデルの不確実性はどの程度なのか、という視点が欠かせない。

CMTにとって最も難しかった課題は、

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