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本書の要点

  • トヨタ自動車の相談役(※文中の肩書はいずれも『致知』掲載当時)、張富士夫氏は、「トヨタ生産方式」の生みの親たる大野耐一氏から「カイゼン」の基本を教わり、最低5回は「なぜ?」を繰り返す習慣がついた。

  • 脳外科医の上山博康氏は信念をもって「医師道」を貫いてきた。凄まじい覚悟で手術台に上る患者に対し、それと同等の覚悟を持って執刀する。

  • 角谷敏雄氏は青函トンネルの元トンネルマンである。あまりにも劣悪な環境において、仲間たちが次々に命を落としていく中、青函トンネルは開通した。

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張富士夫(トヨタ自動車相談役)

常識を変えたトヨタ生産方式

張富士夫は「トヨタ生産方式」の生みの親、大野耐一の薫陶を受けて現場主義の教えを実践してきた。

トヨタ生産方式とは、トヨタ自動車が自動車の製造を通じて確立した生産管理の理念・方式であり、「ジャスト・イン・タイム」や「自働化」などにより製造工程の無駄を徹底的に排除してきた。当初は多くの批判にさらされたが、今では海外からトヨタ生産方式を学びに来る人が引きも切らない。

トヨタが自動車を生産し始めた頃はフォード方式という大量生産の方式が支配的だった。品種を絞り、機械で自動化して大量につくることで生産性が上がる。それが当時の常識だった。

張は、トヨタ生産方式をつくり上げた大野耐一の下に配属になったとき、その“常識”をこき下ろされるとともに、様々な種類の車をいかにして効率的につくるかが大事だという考え方を徹底的に叩き込まれた。

トヨタが歩んだ独自の道

Axis_arw/gettyimages

フォード方式は、一つの工程を高速で繰り返せるため、一台の機械で大量生産できる。他方、つくる量が少ないと高い機械を買ってもペイしない。

そこで大野たちは、複数の工程を一人でこなすことで生産性を上げるという考えに至る。これは欧米のやり方とは全く異なる方向性だった。

当時日本のメーカーと欧米の先進メーカーには大きな差があり、追いつくのは至難の業だった。とはいえ、他に打ち手はない。トヨタ自動車は、無駄を省いて原価を下げていくという独自の道を、20年、30年とひたすら歩んでいった。

張が弟子入りした頃、大野は既に20年も無駄のないつくり方を追求してきた大ベテランだった。そんな大野から最初に言われたのは「現場には仕事と無駄の二つしかないと思え」だ。現場へ出る度に「この無駄が見えんのか」と叱られたものだ。

組み立ての現場に向かうと、ネジを締める音がする。大野は張に目をつむらせ、「いま聞こえる音が仕事だ。音のしないところは全部無駄だ」と言い聞かせた。

カイゼンの本質

「現場ではまず疑問を持て」とも教わった。その教えのもと、「なぜ?」を5回繰り返す訓練をさせられた。

何かトラブルが発生したとき、張が報告に行ったとして、「ああ、そうか」で済んだためしはない。機械が故障して予定の台数をつくれなかったとき、事情を説明すると「なぜだ?」と徹底的に追及され、口ごもると「馬鹿もん!」と雷が落ちたものだ。

だが、そのあと故障した機械の所に行って同じように「なぜ?」を繰り返すうちに真の原因へと辿り着く。真の原因に対処すれば二度と同じトラブルは起きない。こうした教育があって、張も最低5回は「なぜ?」を繰り返す習慣がついた。

改善とは、まず実行し、それをチェックし、問題があれば「なぜ?」を何度も繰り返して真因を突き詰めていくものだ。これを回していくから改善は1回では終わらない。

また、結果のチェックも不可欠だ。ある現場でよい結果が出たとしても、別の工程によくない影響が出ているかもしれない。その点もあわせてチェックする必要がある。張はそう教わってきた。

いいと思ったらすぐやる。その結果を見る。そしてまずいと思ったら直す。こうした訓練を現場で繰り返したことで、夢中でカイゼンに取り組んでいけた。物事を本当に理解するためには経験が大事なのだ。

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上山博康(旭川赤十字病院第一脳神経外科部長・脳卒中センター長)

仕事の根底にある「医師道」

MTStock Studio/gettyimages

脳の血管にできる瘤、脳動脈瘤は患者を命の危険にさらす病気である。手術は困難を極め、一歩間違えれば患者に後遺症を残す。他の病院で見放された患者を含め、手術の依頼が月に数十件も舞い込む医師、それが上山博康である。

手術は時に17時間半にも及び、仕事を終えて自宅に戻れば患者からの手紙やメールに目を通す。1日の睡眠時間はわずか4時間だ。趣味に使う時間はない。

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要約公開日 2024.03.20
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