勉強ができる子は何が違うのか

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勉強ができる子は何が違うのか
出版社
出版日
2023年11月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

誰しも「勉強ができるようになりたい」と思ったことがあるだろう。保護者や教育者であれば、子どもが勉強をできるようになるかどうかは大きな関心ごとだ。勉強ができる子とできない子の違いはどこにあるのか。

多くの人が経験的に感じているように、知能には遺伝的要因が関係する。本書はそれを認めながらも、個人の努力や環境の影響も大きいと指摘する。同じくらいの能力を持っていても、それを活かせる子と活かせない子がいるというのだ。さらに、学業成績は、知能の高さよりも学ぶ力があるかどうかにかかっている。だったら、子どもの持つ力を最大限伸ばすにはどうしたらいいのか気になるところだ。

本書は、知的能力を意味する「認知能力」だけでなく、教育界で注目され始めている「非認知能力」、そして今後注目されるであろう「メタ認知能力」の3つの視点から学ぶ力を解説していく。たとえば、勉強ができるようになるには忍耐ややる気が必要だが、これは「非認知能力」次第だという。逆境にあっても困難にめげずに忍耐強く取り組む力は、頑張らなければ手が届かない目標に向けて努力することで育まれる。そして、勉強でもなんでも、がむしゃらに取り組むことで潜在能力が開発され、取り組んでいく物事への適性が増していくのだそうだ。

こうした勉強への取り組み方は、子どもに関わる人だけでなく、自分自身が何か習得したい人にとっても希望がもてる情報だ。何かを成し遂げるときの取り組み方を知りたい方に広くおすすめしたい一冊である。

ライター画像
安齋慎平

著者

榎本博明(えのもと ひろあき)
1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。心理学博士。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。産業能率大学兼任講師。著書に『〈自分らしさ〉って何だろう?――自分と向き合う心理学』『「対人不安」って何だろう?――友だちづきあいに疲れる心理』『「さみしさ」の力――孤独と自立の心理学』(ちくまプリマ―新書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    知能や学業成績は、自分の力で伸ばすことができる。勉強をできるようにするには、「認知能力」「非認知能力」「メタ認知能力」から成る学ぶ力を伸ばすことが大切だ。
  • 要点
    2
    いくら知的能力が高くても、やる気や忍耐力がなければ学力は向上しない。これを支えるのが、非認知能力である。
  • 要点
    3
    勉強の理解度ややり方の効率化を図るために必要なメタ認知能力は、小学校中学年ごろから発達していく。

要約

成績の良い子と悪い子、何が違うのか?

IQよりも重要な「非認知能力」
koumaru/gettyimages

知能には遺伝的要因が大きく関係している。そう聞くと、勉強ができるかは生まれつき決まっていて自力では変えられないものだと思うかもしれないが、そうではない。知能には遺伝要因と環境要因が半々で影響しているといわれる。つまり、知能は後天的にも向上させることができる。また、知能と学業成績は必ずしも直結していないこともわかっている。知能がさほど高くなくとも、学業成績を高めることはできる。

知能や学業成績は、自分の力で伸ばすことが可能である。能力が同じでもそれを活かせる子と活かせない子がいる。大切なのは学ぶ力だ。本書では、学ぶ力を「認知能力」「非認知能力」「メタ認知能力」の3つの側面から考えていく。

学習する際は、今ある知識を用いて新しい知識を理解しなければならない。文章を読んで理解したり既存の知識を引き出して用いたりすることは、知的活動と呼ばれる。最近の研究では、勉強ができるようになるかどうかは、知的活動以外の要因が深く関わることがわかってきている。2000年にノーベル賞を受賞した経済学者のヘックマンは、幼児期における教育の効果に関する研究データをもとに、幼児期にとくに重要なのは、IQなどで測られる認知能力ではなく、非認知能力を身につけることであると結論づけている。

非認知能力とは、自分をやる気にさせる力や忍耐強く物事に取り組む力、集中力、我慢する力、自分の感情をコントロールする力などである。いくら知的能力が高くても、やる気や忍耐力がなければ学力は向上しないのである。

【必読ポイント!】 やる気も粘りも非認知能力次第

目の前の欲しいものを我慢できるか?

非認知能力の中核をなすのは自己コントロール力だ。自己コントロール力についての研究の原点は、「マシュマロ・テスト」とも呼ばれる心理学者ミシェルたちの満足遅延課題を用いた実験である。これは、子どもにマシュマロを見せて、今すぐ食べるなら1個あげるが、研究者がいったん席を外して戻るまで待つことができたら2個あげると告げ、待つことができるかを試す実験だ。

幼児期に、より大きな満足のために欲求充足を延期することができた者は、成人初期から中年期になったときの追跡調査でも高い自己コントロール力を維持していて、学業面でも社会的にも成功していることが多いことがわかっている。つまり、幼児期に欲求充足を先延ばしできるかどうかで、その後の人生でうまく立ち回れるか予測できるということである。また、中高生を対象とした調査研究でも、自己コントロール欲の向上がその後の学業成績の向上につながることが確認されている。

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要約公開日 2024.04.14
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