はじめての統計学

レジの行列が早く進むのは、どっち!?

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レジの行列が早く進むのは、どっち!?
出版社
総合法令出版

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出版日
2021年02月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

統計学という言葉に普段から慣れ親しんでいる読者は少ないかもしれない。しかし私たちは、日常生活のあらゆる場面で、統計や確率に接している。著者によれば確率論の始まりは、16世紀のイタリアで、「数学的に、ギャンブルに勝てる方法はないのか?」を検討し始めたことであるという。一方、統計学の基礎は、17世紀のイギリス人商人が、伝染病が蔓延する社会背景の中で、死亡統計表から「36%の子どもは6歳までに死ぬ」ということを発見したことに始まる。こうした成り立ちから、確率論と統計学は必勝法や法則発見のための学問であるといえる。

数字を使って言語化することは、課題における因果関係を明確にすることはもちろん、他者に対して説明する際にも役立つ。確率・統計は「この怪しい民間療法は本当に効くのか」「このワインは将来的にどれくらい価格が上がるか」といった、「解決したい何らかの謎」をきっかけとしている。これを著者は「数字を使ったリアル謎解き」と表現する。本書はあらゆる日常の「謎解き」をするように、ギャンブルではどのような原則が働くか、あるいは因果関係があることを説明するにはどういった数字が必要かなど、具体的な事例について図やグラフなどを用いながら解説されている。

著者は自身を「大の数学アレルギー」と称しており、今でも数学の専門書には眠気をさそわれるのだという。だからこそ、本書は数字を扱っていながら、数字嫌いにも直感的にわかりやすい説明で、数字を「どう見るか」に焦点が当てられている。数学が苦手でも、数字を「読める」ようになりたいという読者は、必読である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

サトウマイ(佐藤舞)
合同会社デルタクリエイト 代表
桜花学園大学客員教授
数学アレルギーから文系の道に進むが、国立福島大学経済経営学類に入学後、統計学と出会い数学アレルギーを克服する。
在学中、株式会社野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」入賞。
26歳で独立、データ分析・統計解析事業を始める。
YouTubeチャンネル「謎解き統計学 | サトマイ」を運営。チャンネル登録者数は約36万人(2024年2月現在)。
統計学やマーケティングリサーチを元にした時事ネタの解説が人気を博している。

本書の要点

  • 要点
    1
    勝率に偏りがあるとき、複数回試行すると本当の実力がデータに表れやすいことを「大数の法則」という。大数の法則はギャンブル店などに利用され、お客がたくさんプレイするほど損するように調節されている。
  • 要点
    2
    統計学をもとに未来を予測する際には、「データのバラつき=標準偏差」がより小さいものを選ぶ方が、誤差が生まれにくくよい意思決定といえる。
  • 要点
    3
    相関関係を因果関係と見誤ることを「疑似相関」という。数字に騙されないために、相関関係にあるデータを見た際は、疑似相関を疑うクセをつけたい。

要約

賭け事に勝つには

じゃんけんに勝つ
tylim/gettyimages

2009年に日本経済新聞に掲載された、桜美林大学の芳沢光雄教授が行った「ジャンケンに関する研究結果」によると、学生725人による、延べ1万1567回のじゃんけんの結果、グーを出す人が35.0%と一番多かった。このことからじゃんけんでは、パーを出すのが一番勝ちやすい選択だといえる。

しかし、じゃんけんをはじめとする運のゲームや、ギャンブルには、100%勝つ方法は存在しない。勝率を上げるためには、一回きりの勝負ではなく「複数回の勝負にして、勝った回数が多い方が勝利する」というルールにするとよい。スポーツでは、数回戦のゲームを行って総合的に勝敗をつけることがある。これは、1回の勝負では運よく勝つことがあるが、数回戦の長期戦のゲームならば実力のあるチームが勝つという統計的な前提に基づくためである。じゃんけんであれば、「本当の実力=各手の勝率」である。潜在的な勝率に偏りがあるとき、長期戦にすることによって本当の実力がデータに表れやすいことを「大数の法則」という。

「大数の法則」はサイコロで考えるとわかりやすい。サイコロを振って各数字が出現する確率は、それぞれ1/6(16.67%)である。だが、サイコロを6回投げたとしても、各目1回ずつ出るとは限らない。サイコロを振る回数を12回にしたら各目が出る期待値は2回ずつであるが、実際にコンピュータでシミュレーションすると、出現確率は0~33.3%とバラつきがある。しかし投げる回数を60回、600回、6000回と増やしていくと、各目の出現確率のバラつきはどんどん小さくなっていく。試行回数が多いほど、どの出目の出現確率も16.67%に近づいていく大数の法則が働くからだ。

大数の法則は、幅広く利用されている。ギャンブル店は、お客がたくさんプレイするほど、設定した控除率(店の取り分)に収束しやすいようにコントロールしている。自動車保険の場合なら事故を起こしやすそうな人、銀行の貸付金利では返済が難しそうな人ほど、保険料や金利が高くなるのも、確率が絡んでいる。加入者を増やすのが重要なのは、加入者が増えれば増えるほど、予測が正確になっていくからだ。

一流は宝くじ売り場に並ばない
makisuke/gettyimages

ギャンブルに関する重要な指標に、まず「期待値」がある。「年末ジャンボ宝くじ」でいえば、期待値は1枚あたりの当せん金額の平均値のことである。「当せん金額の合計÷くじ本数」で導くことができる1枚あたりの価値は149円。つまり、300円払って149円のくじを買っていることになる。

次に重要な指標が「還元率」で、これは投資したときにそのうち何%がリターンとして返ってくるかを表す。宝くじの場合は「当せん金額の合計÷購入金額の合計」で計算され、49.8%とギャンブルの中では最低ランクだ。

最後の指標は、投資したときに、そのうち何%が運営者、すなわち胴元に引かれるのかという指標である「控除率」だ。これは還元率と裏表になっていて、「1-還元率」で計算される。宝くじでは50.2%。

まとめると、「一万円の宝くじを買ったら平均して5000円分くらい当たる」計算になる。しかし、多くの人はそこまで当たるイメージを持っていないのではないだろうか。おそらく「1万円分買ったら3000円当たるか当たらないか」くらいの感覚だろう。

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要約公開日 2024.05.24
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