ロバート・ライシュ 格差と民主主義

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ロバート・ライシュ 格差と民主主義
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著者
ロバート・ライシュ 今井章子(訳) 雨宮寛(訳)
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
1,728円
出版日
2014年12月04日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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ロバート・ライシュ 今井章子(訳) 雨宮寛(訳)
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定価
1,728円
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2014年12月04日
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レビュー

米国ではこの30年間、経済成長による利益のほぼすべてがトップ層にわたっているという。資本主義の「勝ち組」が跋扈した結果、経済格差は著しくひらき、「超富裕」な人々が巨額な資金を手に、政治の世界に介入するようになった。所得と富がトップ層に集中するのと同じように、政治的権力もまた上層へと集中し、真の民主主義が脅かされるようになってきたと、著者のロバート・ライシュは説く。

広く知られているように、ライシュ教授は、長年アメリカの政権の内側から社会変革に携わってきた政治経済分野における第一人者である。本書において、共和党右派に多く見られる逆進主義者たちの特徴を挙げ、彼らの言い分に反論するくだりには、深く納得させられる。そして、政治経済問題を的確に解説するだけにとどまらず、終章において「もの言う有権者のすすめ」の道を説いているのは、ライシュ教授の本領発揮と言える。

著者本人の手によるユニークなイラストも合わせて楽しめる本書は、私たち市民を勇気づけ、励ます書だ。著者の思いは、米国の読者のみにとどまらず、「アラブの春」をつくりだした若者たちや、民主的な選挙を求めて政府の中枢に直訴している香港の大学生、そして非正規雇用や低収入で悩む日本の若い労働世代に共感する人にとっても、改革のための一歩を踏み出す一助となるだろう。

著者

ロバート・B・ライシュ
1946年、ペンシルバニア州に生まれる。ハーバード大学教授、ブランダイス大学教授などを経て、現在、カリフォルニア大学バークレー校公共政策大学院教授。クリントン政権での労働長官をはじめ3つの政権に仕えたほか、オバマ大統領のアドバイザーも務めた。
著書にThe Work of Nations(中谷巌訳『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』ダイヤモンド社、1991年)、Supercapitalism(雨宮寛・今井章子訳『暴走する資本主義』東洋経済新報社、2008年)、The Next American Frontier, The Future of Success(清家篤訳『勝者の代償』東洋経済新報社、2002年)、Reason(石塚雅彦訳『アメリカは正気を取り戻せるか』東洋経済新報社、2004年)など13作がある。
雑誌『ニューヨーカー』『アトランティック』や、『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』『ウォール・ストリート・ジャーナル』各紙への寄稿多数。雑誌『アメリカン・プロスペクト』の共同創立編集人であり、市民団体『コモン・コーズ』会長を務める。また公共ラジオ局番組『マーケットプレイス』で毎週行っている時流解説では500万人近いリスナーを持つ。2003年、経済・社会思想における先駆的業績によりバーツラフ・ハベル財団賞受賞。2008年、『タイム』誌の「最も業績を収めた20世紀の閣僚10人」の1人に選ばれたほか、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙で「最も影響力のある経営思想家20人」に選出。2013年、ライシュ自身をモチーフにして制作された映画『Inequality for All(万人の不平等)』(ジェイコブ・コンブラース監督)が、サンダンス映画祭ドキュメンタリー部門にて審査員特別賞を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    米国では超富裕層が富を独占し、その資金によって政治と癒着し、ますます自分たちに有利な方向へ政治を操っている。結果、経済格差がますます広がっている。
  • 要点
    2
    逆進主義者が席巻する現在の共和党では、金持ちが雇用を生み出し、その恩恵が低所得層にも落ちていくというトリクルダウン説が信じられている。彼らは富裕層への増税に断固反対し、経済への政府の介入もできるだけ減らしたいと考えている。
  • 要点
    3
    民主主義を取り戻すには、市民は選挙日に投票だけするのではなく、普段から行動を起こすことが大切だ。

要約

歪んだアメリカ社会

富と権力がトップ層に集中しすぎている
spawns/iStock/Thinkstock

米国には元来、「勇気と進取の気質があれば誰もが成功できる」という見識があった。それゆえ平均的なアメリカ人はこれまで、ベンジャミン・フランクリンやエイブラハム・リンカーンのように、懸命に努力をすれば誰にでもアメリカン・ドリームを成し遂げられると信じられる物話を愛してきた。成功への開かれた道を一途にたどる姿は、長らく国民的道徳劇のようなものであったが、もはやそうした物語は崩壊し、今では富と所得は異常なほど超富裕層のみに蓄積されている。

大企業のCEOたちは平均的労働者の賃金の300倍以上を手にしているのに、平均的労働者は仕事や賃金を失ってきた。高所得者層は、手にした富を、米国に雇用と成長をもたらすようには投資しない。高所得者以外の層には景気拡大に必要な購買力がないため、米国経済は窮地に陥らざるをえない。

それなのに企業や超富裕層は税金をより少ししか払わず、公的規制からも逃れている。現に、所得上位1.5%の人々だけが影響を受ける相続税は引き下げられたのに、平均的な給与水準の国民が最も痛手を被る消費税と給与税は引き上げられている。

大企業は政治も操っている

大企業の繁栄とほとんどの米国民の繁栄は分断されてしまった。米国企業はますますグローバル化を進め、自国に対する関心は薄らぐ一方だ。米国企業は海外で単純労働者を雇い入れているだけではなく、ハイテク関連の仕事も生み出し、研究開発活動にも力を入れている。アップルをはじめ米国大企業にとっては、最良の製品を最低のコストで生産できるのが中国やその他の国であれば、そこで生産するのが当然の選択なのだ。

問題は大企業がアメリカ国内で雇用を創出しないことではなく、ワシントンで強大な政治的影響力を持っていることだ。利益の最大化を狙う米国のグローバル企業は、減税と企業助成を含んだ政策に対して強力なロビイングを展開し、多額の政治献金を注いでいる。大企業や富裕層の期待に応えるような政治システムになってしまったら、国民の生活は良くはならない。

富の集中は民主主義を脅かす
GrashAlex/iStock/Thinkstock

同様に、億万長者たちが政治家に巨額の寄付をしたり、企業が数億ドルをロビー活動や政治家の選挙運動に投じたりするのは、それらの支出を投資と見なし、特別租税補助金や権益拡大に対する賛成票という形での十分なリターンを期待しているからだ。

超富裕層の人々は慈善団体を設立して寄付もするが、慈善寄付控除を受けている寄付金の大部分は、オペラや美術館など、彼らが余暇を過ごす文化施設に使われている。大学への寄付も含め、それらは彼らが自分の子どもたちにも与えたいと思っているライフスタイルへの投資に過ぎない。

慈善寄付控除による減収の影響は、公共財に現れる。公的歳入が減少すると予算が削減され、公共施設の質が低下する。

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