「アイデア」とはそもそも何だろうか。アイデアの語源は古代ギリシア語の「イデア」にあるといわれている。「イデア」とは古代ギリシアの哲学者プラトンが掲げた概念で、「ここにはない理想の状態」を意味する。アイデアとは「ここにはない理想」なのである。
アイデアは人類誕生以来ずっと求められてきており、何も今に限った話ではない。人類が厳しい自然の中で生き延びるには、アイデアを生み出すことが不可欠だったからだ。たとえば、寒さをしのぐためのアイデア、猛獣から逃れるためのアイデア、獲物をとるためのアイデアなど、人類は多くのものを発明し、地球を支配しながら快適な暮らしを獲得してきた。もっといえば、コップ、箸、ノート、電気スタンド、スマホ、衣服など、私たちの身の回りにあるものすべてが「アイデア」だ。アイデアとは、人間が生きることそのものなのである。
アイデアのすごいところは、それが無限に生み出されるところにある。空を飛べたり、牙で獲物を捕らえることのできる動物も、人間のアイデアにはかなわない。無限の可能性を持つアイデアは、原子力や自律型AIも生み出してしまった。
アイデアの「すごい力」の発揮に貢献するのが、人間が持つ「考える能力」だ。とりわけ常識を超えた意外な発想を可能にする「哲学」という営みは、アイデアを無限大にするのである。
たとえばここに、ただの楕円形があるとする。これに価値を持たせて売るにはどうしたらいいだろうか――。
これは、著者が企業研修などで哲学を理解してもらうために出す問いである。なんの変哲もないものに新たな意味を見出してもらうこと、それこそが哲学なのだ。
哲学の意義は「物事に新たな意味を見出す」ところにあり、常識の枠を超えて考えるとも言える。普段私たちは物事を考えるとき、基本的には常識の枠内で考えているはずだ。だが哲学ではあえて普通の枠を超えて、異なる捉え方をしてみる。それが「考える」と哲学の違いである。
常識の枠に収まらない発想を生み出す「哲学思考」は、次の3つのステップで行う。最初のステップは「疑う」ことだ。自分が考える対象についてどう思っているか、その前提を確認する。
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