天才たちの日課

クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
未読
天才たちの日課
天才たちの日課
クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
未読
天才たちの日課
出版社
フィルムアート社

出版社ページへ

出版日
2014年12月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

どんなふうに予定を立てれば、最高の仕事ができるのだろう――迫りつつある締め切りを前に、仕事に身が入らなくてこまった著者は、他の人の仕事ぶりを調べてみることにした。そうして書きはじめたブログが本書のもとになった。

本書では、クリエイティブな仕事で偉大な成果を残した天才たちが、毎日どのように働き、どんなことを習慣にしていたのかにスポットを当てる。その数、なんと161人。ピカソ、ベートーヴェン、ヘミングウェイ、フロイトなどなど、なじみ深い芸術家や研究者の名前が並ぶ。

冒頭に掲げた疑問は、多くの働く人が共通して抱くものだと思われる。息抜きを効果的にはさめばよいのか、それともぶっ通しで集中するのがよいのか。朝型がよいのか、夜型がよいのか。著者は、本書を通してそうした問いに答えるつもりはない、としながらも、「すばらしい成功を収めた多くの人々が同じ問題に直面したことを、実例として紹介するように努めた」という。

天才たちの日常は、奇天烈だったり(シラーは、リンゴの腐敗臭が創作の刺激になると信じて、机の引き出しに腐ったリンゴをいっぱい入れていた!)、非常に地味だったり(カントは日課を忠実に守り、故郷の町からめったに外に出ず、数時間で行ける海さえ見たことがなかった)する。しかし、さまざまなタイプはあれど、どの天才もその人なりに仕事に立ち向かってきたのだな、ということが意外な親しみをもって感じられる。日々どんなふうに働くか、その答えは各々模索する必要があるとしても、「さて、今日もがんばるか」という気持ちにさせられる1冊である。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

メイソン・カリー
ペンシルベニア州ホーンズデール生まれ。ノースカロライナ大学アッシュビル校卒業。卒業後、2005~2013年まで、ニューヨークの雑誌『Metropolis』、『Print』 で編集者として勤務。その後、フリーランスライターとして『Slate』『New York Times』その他の媒体に寄稿。個人で運営していたブログ「Daily Routine」を元にした本書『Daily Rituals』(New York: Alfred A. Knopf, 2013)が初単著となる。現在は、ウェブサイト「Core77」のシニア・エディターとして勤務しながら執筆活動を行なっている。ブルックリン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    天才たちの仕事の背景にあるライフスタイルには、数かぎりないバリエーションがある。不摂生をして仕事にのめりこんだり、独特の習慣でメリハリをつけたり、規則正しくすることで仕事がはかどる効果を狙っていたりする。
  • 要点
    2
    とてもまねできないくらい勤勉にパワフルに仕事をした人も、インスピレーションがわくまで苦しみぬいて時間を浪費した人もいるが、多くの人は天才といえどもその中間で努力していたようだ。

要約

ほとんど狂気の仕事ぶり

フィンセント・ファン・ゴッホ【画家】
Piotr_roae/iStock/Thinkstock

「ひまわり」「星月夜」などで知られる、オランダ出身の画家、ゴッホ。彼はとりつかれたように仕事をするタイプだった。創造的なインスピレーションに突き動かされて休むことなく絵を描き、ときには食事も忘れてしまうほどだったという。

生涯にわたってゴッホを支えた兄テオへの手紙の中で、ゴッホは、午前七時から午後六時まで仕事をして、その間、動いたのは一歩か二歩の距離に置いてある食べ物を取るためだけだったと記している。また、手紙にはこうも書いてあったという。「毎日は、仕事、仕事で過ぎていく。夜にはへとへとになってカフェへ行き、そのあとはさっさと寝る! 人生はそんなものだ」

オノレ・ド・バルザック【作家】

バルザックは自分を追い込むように、過酷なスケジュールで仕事をした。

午後六時に軽い夕食をとって眠り、午前一時に起きて机につく。そこから七時間ひたすら書きまくる。午前八時になると、一時間半の仮眠をとり、さらに九時半から午後四時まで仕事。午後四時からは、散歩、風呂、客対応。そして午後六時からはもう一度同じことの繰り返しだ。

仕事の間、バルザックはブラックコーヒーを飲みまくる。一日に五十杯のコーヒーを飲んだともいわれているそうだ。

ジャン・ポール・サルトル【哲学者】

サルトルは、仕事は、「午前中に三時間、夕方に三時間、それが私の唯一の決まりだ」というふうに言っていたが、怠けていたわけではない。仕事のほかには活発な社交をこなし、豪華な食事と大量の酒、タバコとドラッグを摂取した。

標準的な一日の過ごし方は、アパートで正午まで働き、会合に一時間ほど出かけた後、パートナーのシモーヌ・ド・ボーヴォワールと、共通の知人とともにランチ。ランチで赤ワイン一本を飲みほしたという。午後はボーヴォワールと仕事をする。寝つきが悪かったサルトルは、睡眠薬を飲んで二、三時間眠った。

過労と睡眠不足、ワインとタバコの過剰摂取でぼろぼろのサルトルは、そのうえ、仕事のペースを維持するために当時まだ合法だったコリドランというドラッグに頼った。朝と正午に一、二錠ずつという規定の服用量を大幅に超えて、サルトルは一日二十錠も飲んだ。一錠ごとに、『弁証法的理性批判』を一ページか二ページ書けたのだという。それほどまでに、自らの哲学体系をかたちにしたかったのだ。

【必読ポイント!】規則正しく健康に

イマニュエル・カント【哲学者】
Garsya/iStock/Thinkstock

めちゃくちゃなやり方で仕事の成果を追い求める者もいれば、その逆もまたいる。カントの人生、特に40歳を過ぎてからの人生は、規則正しさそのものだった。カントは骨格に先天的な欠陥があって虚弱だったため、長生きできるように、また健康のことを気に病みすぎないように、生活にある種の画一性を必要としたのだ。

朝は午前五時に起き、執筆をして、大学で午前十一時まで講義をする。昼食を食べた後は、散歩に出かける。ハインリヒ・ハイネによると、「近所の人々は、カントが灰色のコートを着てスペイン製ステッキをもって玄関から出てくると、ちょうど三時半だとわかった」というくらい、すべての行動の時間はきっちりと決まっていた。

生まれ故郷の町からめったに外へ出ず、生涯独身を貫き、地元の大学で同じ教科を四十年以上教えたという。

村上春樹【作家】

長編小説を書いているときの村上は、日課を規則正しくこなす。そのことが創作の役に立っているのだという。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2360/3779文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2015.02.17
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
直感を信じる力
直感を信じる力
岩瀬大輔
未読
僕たちは「会社」でどこまでできるのか?
僕たちは「会社」でどこまでできるのか?
小杉俊哉塩見哲志編集
未読
それでも、人を愛しなさい
それでも、人を愛しなさい
佐々木常夫
未読
世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方
世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方
クリスチャン・ステーディルリーネ・タンゴー関根光宏(訳)山田美明(訳)
未読
人の気持ちがわかる人、わからない人
人の気持ちがわかる人、わからない人
和気香子
未読
スイスの凄い競争力
スイスの凄い競争力
R.ジェイムズ・ブライディング北川知子(訳)
未読
このムダな努力をやめなさい
このムダな努力をやめなさい
成毛眞
未読
デジタル&グローバル時代の凄い働き方
デジタル&グローバル時代の凄い働き方
ダイヤモンド社出版編集部
未読
法人導入をお考えのお客様