僕たちは「会社」でどこまでできるのか?

起業家のように企業で働く 実践編
未読
僕たちは「会社」でどこまでできるのか?
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僕たちは「会社」でどこまでできるのか?
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年01月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

今ではベンチャー企業の登竜門の一つとして定着した感もある「モーニングピッチ」。日本経済新聞など各種メディアで取り上げられているため、目にした方も多いのではないだろうか。その起源は、会社を跨いだ20代の3名の有志連合が、仕事を抱えながら行なった企画・運営にあった。

日本のベンチャー業界が抱える問題は数多いが、最も大きく難しい問題は大企業との連携の難しさにあるだろう。新サービスを積極的に使うシリコンバレーの文化とは異なり、日本の多くの企業では取引基準など厳格なルールがあり、商売することはおろか話をライトパーソンに届けることも簡単ではない。ベンチャー企業はプロダクトを作り、初期の資金調達などのハードルを越えたら、自身のサービスを伸ばす方策を打ち続ける。その成長の機会は多い方が良いに決まっている。

ベンチャー企業と大企業を高い熱量でマッチングする「モーニングピッチ」は、日本のベンチャーシーンで大きなうねりを生み出した。初めは小さな取り組みだったにも関わらず、巨大なビジネスを運営している野村證券という大企業で、それをどのように行っていったのか。本書で語られる、実体験に根差した言葉の数々は味わい深い。起業ブームとはいえ、日本において圧倒的多数の有能な人は大企業の中にいる。その大企業が著者の塩見氏のように起業家精神を持つ人材で満たされれば、「モーニングピッチ」を超えるような、日本経済を本当に動かす巨大なうねりになるだろう。本書を読みその一翼を担う人が増えることを、願ってやまない。

ライター画像
大賀康史

著者

小杉俊哉(こすぎ・としや)
慶應義塾大学SFC研究所上席所員 合同会社THS経営組織研究所代表社員
1958年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、NEC入社。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修士課程修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク、ユニデン株式会社人事総務部長、アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を歴任後独立。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授を経て、現職。

塩見哲志(しおみ・さとし)
野村證券株式会社 コーポレート・ファイナンス八部 Associate
1985年生まれ。成蹊大学経済学部経営学科卒業後、野村證券株式会社に入社。
なんば支店、大東支店、渋谷支店、新宿野村ビル支店における証券営業、エクイティファイナンス、M&A、IPO等業務を経て、現在投資銀行業務に従事。

本書の要点

  • 要点
    1
    モーニングピッチは、ベンチャー企業と事業会社をつなぐマッチングプラットフォームであり、毎週木曜日朝7時からベンチャー企業5社が3分間のプレゼンを行い、質疑応答をする形態である。
  • 要点
    2
    モーニングピッチの企画は、別の会社に所属する3名のメンバーが有志で集まって進められ、わずか1回にしてその形態を変えるなど、迅速にPDCAサイクルをまわしていった。
  • 要点
    3
    出る杭は打たれると言われるが、出過ぎた杭になれば打たれることはない。さらに周りを自分の杭の高さまで上げれば決して打たれず、既存事業に組み込まれていく。

要約

モーニングピッチというイノベーション(小杉氏)

我が国におけるベンチャーを巡る環境
Sergey Nivens/iStock/Thinkstock

2000年前後のITバブル期においては、年間の上場企業数は203社に及び、多くのベンチャー経営者がIPOにより膨大な富を得るも、ITバブルが崩壊。その後はITという分類は投資家から避けられるようになる。

リーマンショックで2009年にはIPO数が19社まで落ち込むが、2014年には80社程度に回復し、ベンチャー環境の改善が進んでいるように見える。しかし、まだ日本で起業することは依然としてハードルが高い。

ベンチャー企業で事業化ができていないシード期では、そのフェーズを支援する個人エンジェル投資家が十分育っていないため資金調達が困難だ。また、銀行からの融資では原則個人の不動産が担保になるなど、会社と個人のリスクが同一となってしまう。さらにベンチャー・キャピタルから資金提供を受け、送り込まれた取締役の要求への対応に四苦八苦するベンチャーも多い。

その他にも、資金繰りが事業の存続を決めるというプレッシャーから、ワークライフ・バランスとは無縁となり、年間稼働日数が360日になるような例もあるなど、四六時中事業のことを考えることになる。

このように日本の起業家は、今もなお決して良好ではない起業環境に直面していると言える。

モーニングピッチとは何か?

そのようなベンチャーを取り巻く過酷な環境を救うべく、モーニングピッチは創られた。毎週木曜日の7時~9時という早朝に、ベンチャー経営者5名が企業の事業開発担当者やメディア関係者などに、事業のプレゼンテーションを行うというものだ。2014年8月時点で既に累計300社のベンチャーが登壇しているという。

この場を野村證券という大企業が支援をすることで、ベンチャー企業の信用を補完するという意味は大きい。今では、ニコン、ホンダなどの老舗企業や、国会議員や経済産業省の官僚も参加するようになり、国を挙げての取り組みになっている。この流れで他証券会社もベンチャー支援のイベントを積極的に開催するようになり、今、日本中を動かすムーブメントになりつつある。

野村證券はこの場も活かしてIPOの主幹事を獲得するなど、実際の事業への貢献も進んでいる。そのような意義の大きいモーニングピッチは、当時27歳の塩見氏が、会社は異なるが同じ志を持つ2人と手を組み、会社も巻き込みながら日本経済全体のムーブメントにしたシンボリックな事例なのである。

サラリーマンが自律する時代(塩見氏)

自分の人生は自分で決める
inxti/iStock/Thinkstock

いま勤めている会社に毎日の仕事をやらされている、と思っていないだろうか。塩見氏も入社当時、会社にいるのが苦痛で外交に行ってきますと言い出かけ、カフェや公園のベンチで休んでいたこともあったという。ただ、冷静に考えれば「会社」「仕事」「毎日の行動」の全ては自分で選択したものである。

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要約公開日 2015.02.13
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