今さら聞けない 睡眠の超基本
快眠法の前に
今さら聞けない 睡眠の超基本
今さら聞けない 睡眠の超基本
出版社
朝日新聞出版

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出版日
2024年08月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

早起きがつらい、寝つきが悪い、食後に眠くなってしまう、細切れにしか眠れない、忙しすぎて睡眠時間が確保できない……程度の差こそあれ、ビジネスパーソンの多くは睡眠に課題を抱えているのではないだろうか。健康維持のため、また仕事のパフォーマンス向上のために睡眠習慣を改善したいと思うなら、ぜひ本書を読んでほしい。

本書は、睡眠の専門家として広く知られている柳沢正史氏が監修者となり、書名の通り「今さら聞けない 睡眠の超基本」をまとめた一冊だ。質のよい睡眠とは何か、睡眠不足によってどのような悪影響がもたらされるのかといった基本から、睡眠の質を高める具体的な方法、動物とヒトの睡眠の特徴のような読者の知的好奇心を満たしてくれる知識まで、睡眠にまつわる情報がたっぷり詰まっている。

働く世代が特に注目したいのは「睡眠の質を高める」と題されたChapter4だろう。「よりよく眠るための準備」「よく眠れる環境のつくり方」「快眠を招く習慣」など、今日から気軽に取り入れられるアドバイスばかりだ。一つずつでもトライすれば、睡眠の悩みが解決に近づくに違いない。

忙しい日々を送る中で、睡眠の優先順位が下がりつつある人も多いだろう。だが本書を読めば、睡眠不足によって引き起こされるリスクに衝撃を受け、すぐにでも改善に着手しようと決意するはずだ。よりよく生きていくために、多くの人に手に取ってほしい一冊である。

著者

柳沢正史(やなぎさわ まさし)
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授。株式会社S’UIMIN代表取締役。医学博士。筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了後、31歳で渡米し、テキサス大学サウスウェスタン医学センター及びハワードヒューズ医学研究所にて24年間にわたり研究室を主宰。2010年に内閣府最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。 2012年より、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム 国際統合睡眠医科学研究機構を創設。2017年、筑波大学発のスタートアップベンチャー企業「S'UIMIN」を起業。 2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。2016年の紫綬褒章、2018年の朝日賞、慶應医学賞、2019年の文化功労者、2023年の生命科学ブレイクスルー賞、クラリベイト引用栄誉賞など、国内外で数多くの受賞歴がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    休日に平日より2時間以上長く寝ている人は、慢性的な睡眠不足である「睡眠負債がたまっている」状態の可能性が高い。
  • 要点
    2
    睡眠時間は必要経費のようなものであると捉えて、睡眠時間をブロックしてから他のスケジュールを組もう。まずは数日間、普段より30分早く就寝してみるだけで、体調が変わるのを実感できるはずだ。
  • 要点
    3
    寝る前の行動を決めると入眠しやすくなる。これをベッドタイム・ルーティン(入眠儀式)と呼ぶ。

要約

睡眠不足だと何が起きる?

睡眠不足のリスク

睡眠不足は軽視されがちだが、実は病気の一種であり、「行動誘発性睡眠不足症候群」という名前もついている。睡眠不足になると、脳のパフォーマンスが下がるだけでなく、うつや糖尿病、高血圧、認知症、がんといった疾患リスクが上昇するなど、心身に深刻なダメージが生じる。

睡眠不足の基準の一つとなるのは、休日に平日より2時間以上長く寝ていることだ。これに当てはまる人は、慢性的な睡眠不足である「睡眠負債がたまっている」状態の可能性が高い。身体は規則正しいリズムを好むため、不規則な睡眠パターンが生じると体内時計が乱れ、さらに睡眠の質が低下し、健康リスクが高まってしまう。普段から十分な睡眠を確保しつつ、休日も平日も同じ時間に寝起きする習慣をつけたいものだ。

平日と休日の睡眠中央時刻(就寝時刻と起床時刻の中間の時刻)がずれると、いわゆる「時差ぼけ」の状態になってしまう。休日に長く寝るなら、その分就寝時刻も早めて、睡眠中央時刻がずれないように心がけよう。平日の睡眠中央時刻との差が1時間以内になるよう意識するといいだろう。

睡眠不足による損失額は年間33万円
Igor Suka/gettyimages

睡眠不足は、翌日のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。慶応大学の調査では、従業員の睡眠時間が長い企業ほど利益率が高いことがわかっている。また、経済産業省の報告によると、社員1人あたりの休養・睡眠不足による年間の損失は約33万円にのぼる。肥満による損失が約3万円、運動不足による損失が約3万5000円であるのに比べると、その大きさがわかるだろう。

睡眠を十分にとると、心身ともに健康な状態に近づくだけでなく、より効率的に仕事をこなせるようになり、生産性が高まる。また、創造性が向上するため、新しいアイデアやイノベーションを生み出しやすくなる。一方、睡眠不足になると、コミュニケーション力や理解力が低下したり、ささいなことでイライラしやすくなったりすることがわかっている。

睡眠不足から脱却する「睡眠時間」の考え方

休日にたくさん眠るなどしても、睡眠を余分にため込むことはできない。睡眠不足のときにたくさん眠るのは、単に睡眠負債を返済しているだけだ。

また睡眠負債は、週末の寝だめだけでは完全には返済できない。少し返せたとしても、平日の睡眠が1時間でも足りなければ、借金は膨らみ続けるいっぽうだ。

では、どのくらい眠ればいいのか。今の自分に必要な睡眠時間を調べる方法は2つある。

1つ目は、就寝時刻を30分早める方法だ。これを2~3日試して身体の調子がよければ、寝る時間をさらに15分早めてみよう。このサイクルを繰り返すことにより、あなたにとって十分な睡眠時間に近づいていく。

2つ目は、4日間続けて目覚まし時計をかけずに寝る方法だ。1日目の晩は、睡眠負債を返すために通常よりも長く眠ることになるだろう。だが、徐々に睡眠時間が短くなり、4日目にはある一定の時間以上は眠れなくなる。それがあなたにとって十分な睡眠時間だ。

【必読ポイント!】 睡眠の質を高める方法

「睡眠の質を下げる方法」を知る

万人に通用する「睡眠の質を高める方法」は存在しない一方で、睡眠の質を下げる方法は非常に明確だ。それゆえ、よい睡眠をとるには、悪い部分を改善するのが一番の近道である。なお「よい睡眠」とは、朝すっきり目覚めて、ぐっすり眠れたと感じられることだ。

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要約公開日 2024.11.12
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