世界最先端の研究が教える新事実

対人心理学BEST100

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出版社
総合法令出版

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出版日
2024年07月23日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

この多様性の時代に、「あくまでも一般的な傾向」である心理学の知見が役に立つのか。そんな疑いを抱く人こそ本書を開いてほしい。1トピックが2~3ページ程度という読みやすさと、どこから読んでも引き込まれる面白さにページを繰る手が止まらず、気が付けば世の中がより多面的に見えていることだろう。

人が人と関わるときにどう感じ、どう行動するかを調べる「対人心理学」。一般には社会心理学と呼ばれ、著者はその専門家でありつつもビジネスなどへの応用に力を入れている。本書でもSNSから仕事、恋愛、子育てなど、幅広いシーンで活用できる知見や実践的な対人テクニックを取り上げる。

たとえば、夫婦の家事分担に関するトピック。ある調査によると、夫婦のどちらもが「自分ばかりがやっている」と感じているのだという。要約者も「自分に負担が偏っている」と思っていたため、この指摘にハッとした。本書にはこのように思い込みを手放し、対人関係を前向きに捉え直すためのヒントが散りばめられている。

最大の魅力はやはり、100トピック全てが海外の心理学研究に裏付けられている点だろう。興味深い研究を世界中から集め、類書も多く刊行する著者の原動力は、複雑でドロドロとした人間の心への関心や愛に基づくものではないだろうか。時に理論に囚われず発せられる鋭い警句や人間臭いユーモアは、隠れた読みどころにもなっている。

本書をぜひ身近な人間関係に役立てていただきたい。

著者

内藤誼人(ないとう よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。
著書に、『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』『世界最先端の研究が教える もっとすごい心理学』(以上、総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    「対人心理学」は、人が人といるときの行動や感じ方の傾向を調べる学問だ。本書では、海外から集めた研究とそれらに裏付けられた心理学的知見を、100個紹介している。
  • 要点
    2
    客観的に魅力的だと評価された人より、自分のことを魅力的だと思う人のほうが幸福を感じやすい。
  • 要点
    3
    いじめがなくならないのは、集団の結束に役立つからだ。いじめられる人は集団の「いけにえ」であるため、すぐさま逃げたほうがいい。
  • 要点
    4
    従業員の幸福が生産性に直結することは、科学的に裏付けられている。

要約

【必読ポイント!】社会と集団の心理学

人は他人の評価に同調する

人気の本や映画、音楽など、みんなが「いい」と言うものは、本当に「いい」ものなのだろうか。

パリ大学のクローディア・フリッツは、プロのバイオリニスト21名に、名器として名高い「ストラディバリウス」と、高品質な最新型バイオリン計6丁を、目隠しをして弾いてもらう実験をした。

その結果、最も音色が好まれたのは最新型で、ストラディバリウスは最下位だった。フリッツは、ストラディバリウスは高価ゆえに音色もいいという「バイアスがかかっているだけ」と結論付けた。

みんなが「いい」と褒めると「同調」が働き、自分もそう思えてくる。しかしそれは、他人の評価に「だまされている」だけなのかもしれない。

「自分ばかりがソン」は誤解
takasuu/gettyimages

「家事全体のうち、何%くらいを自分がやっていると思いますか?」。そんな質問を夫婦にすると、たいてい双方が「自分のほうがやっている」と答えるため、数値の合計は100%を超えてしまう。

カナダのウォータールー大学のマイケル・ロスによる調査では、20の家事リストを数十組の夫婦に見せたところ、16の活動が「自分のほうがたくさんやっている」という回答だった。自分の行動はよく覚えているが、相手のことはよく覚えていないため、このような結果になるのだとロスは推測する。

著者はトイレットペーパーの交換を自分ばかりがやっていると思っていたが、妻も同じように感じていたという。何事につけ、自分だけがソンをしていると思い込むのは誤解なのかもしれない。

匿名だと人は残酷になれる

ハロウィンで賑わう街では、なぜポイ捨てや暴力が横行するのか。これは人がコスプレ(仮装)をすると、悪いことへの抵抗感が下がる“匿名性の原理”が働くからだ。「どうせバレない」と思うとき、人は非人間的なことも平気でしてしまう。

米国アーカンソー州立大学のロバート・ジョンソンは、4人グループを先生役と生徒役に分け、生徒役が問題を間違えると先生役が偽の電気ショックを与える実験をした。その結果、先生役が全身を覆うコスチュームを着たときは強いショックを与える人が多く、逆にナースのコスプレだと弱いショックしか与えなかった。「自分だとバレない」という心理が、残酷な行動に突き動かすのだ。

コスプレをすると人は変わる。コスプレを楽しむ際は、このことを肝に銘じるべきである。

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要約公開日 2024.11.04
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