ビジネス心理学大全

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出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2024年08月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

なぜ部下のやる気が低いのか。なぜ人事評価への不満が多いのか。これらの悩みに頭を抱える管理職や経営者は多いはずだ。マネジメント方法の見直しや評価制度の改善などの打ち手は必要であるが、それと同時に、行動の背景にある人間の心理を理解することも重要である。心理学博士である著者は、ビジネスは心で動く人間同士がするものであり、心理学はビジネスのあらゆる局面に関わりがあると続ける。

本書は「モチベーション」「人事評価」「職場の人間関係」「リーダーシップ」「マーケティング」の5つのテーマを挙げ、職場でありがちな「なぜ」を題材に、50項目を解説している。心理学の観点からの考察に、要約者は人間が持つ「そもそも」の性質に強い魅力を感じた。例えば、モチベーションを向上させる項目では、「そもそも」人間は意味を求める存在であると説明され、評価制度に関する項目では「そもそも」大半の人が自分を平均以上だと考えている調査結果が紹介される。人間全体の傾向を捉えようとする考察は、新しい視点を与えてくれた。

経営者や管理職向けの内容が中心ではあるが、職場の人間関係に悩む従業員にとっても本書は役立つはずだ。心理学を学ぶことは、ビジネスパーソンとしての強みになる。経営学やマーケティングを勉強する人は多くても、心理学を学ぶ人は少ないからだ。「ビジネスは心で動く人間同士がするもの」という著者の教えを信じ、手にとってほしい一冊である。

ライター画像
霧島大和

著者

榎本博明(えのもと ひろあき)
心理学博士。MP人間科学研究所代表。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、 東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現職。 著書に『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』『「指示通り」ができない人たち』 『「上から目線」の構造』『かかわると面倒くさい人』『薄っぺらいのに自信満々な人』 (以上、日経プレミアシリーズ)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    精神科医フランクルは、人間はそもそも意味を求める存在だと考えた。ゆえに、仕事のモチベーションを上げるためには、仕事に社会的使命感を意味づけることが有効である。
  • 要点
    2
    人間は自分が平均以上と考える傾向がある。だからこそ、人事評価には不満がつきない。
  • 要点
    3
    人間には物事を都合良いように解釈する心理傾向がある。そのため、人の手柄を奪っても平気でいられる人がいる。
  • 要点
    4
    期待する方向に相手が変わっていく「ピグマリオン効果」と呼ばれるものがある。従業員に頑張ってほしいならば、期待を示すことが大切だ。

要約

モチベーションの心理学

人間は意味を求める存在

イキイキと仕事をするためには、どうしたらよいのだろうか。それは働くことに意味を見出すことである。しかし、経費節減や効率化の論調が強まるなか、数値目標の達成にひたすら追い立てられ、仕事に意味を感じられていない人も少なくないはずだ。何のためにこんな毎日を繰り返しているのか、これからも続くのか。ふと立ち止まり自分の生活を振り返って、無意味感に苛まれることもあるだろう。

一方で、「虚しさを感じる暇はない」と言う人もいる。こうした人の中には、仕事に無理してのめり込み、忙しくすることで、働く意味と向き合うことを避けているだけの人もいる。そう考えると、無意味感に苛まれている方がむしろ健全なのかもしれない。

なぜ、仕事や生活に意味が重要なのか。精神科医フランクルは、現代人の多くは実存的欲求不満に苦しんでおり、意味への欲求不満に陥っていると主張した。そして、「意味への意志」という概念を打ち出した。そもそも、人間は意味を求める存在だというのである。フランクルは、人間には自分の生活をできるかぎり意味で満たしたいという欲求があると考えていた。そこで重要な役割を果たすのが「社会的使命感」だ。

社会的使命感による意味づけ
Flashvector/gettyimages

どこの職場でもモチベーションの高い社員と低い社員が混在しているものだが、全員がやる気マックスになるのは難しいにしても、今よりもモチベーションを高めることは可能であるはずだ。鍵は、従業員が自分のしている仕事に意味を感じられるように導くことだ。

松下電器(現パナソニック)創業者松下幸之助は、社会的使命感を意識していた。松下は水道の水のように大量にあるものは、価値があってもただ同然に扱われていることに気づいた。そして、電気器具を大量に生産し、ただ同然の安さで出回らせることに自分の使命があると感じたという。松下は自分の心に生まれた社会的使命感を水道哲学と呼んでいる。

このことから、仕事の意味づけにおいては、利己的なものではなく、社会に貢献する意味づけが重要であることが分かる。金銭報酬や生活の保証もモチベーションにはなりうるが、それには限界がある。誰かの役に立っていると心から感じられることでモチベーションは一気に高まる。

自分たちの仕事がどう人々の役に立っているか、仕事と社会的使命感をつなげて語ることができれば、職場のモチベーションの様相は一変するはずだ。

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要約公開日 2024.11.18
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