シン・人事の大研究

人事パーソンの学びとキャリアを科学する
未読
シン・人事の大研究
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シン・人事の大研究
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2024年07月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

近年の日本では、人材投資が組織の競争力向上に欠かせない要素として注目され、人的資本経営の重要性が高まっている。その根幹を支えるのは他ならぬ人事パーソンだ。だが本書は、これまで人事パーソンの学びやキャリアが十分に注視されてこなかったと指摘する。ただでさえ日本企業は人材育成への投資が少ないうえ、事業部門が優先され、人事パーソンの学びやキャリアは後回しにされてきたからだ。思い当たる節があるビジネスパーソンも多いのではないだろうか。

本書では、立教大学で教鞭をとる田中聡氏と中原淳氏、そして『日本の人事部』編集部が著者となり、人事パーソンの学びとキャリアに関する独自の調査結果を提示したうえで、その実態に迫っていく。特に、人事パーソンのキャリアには3つのアップダウンがあると指摘し、「若手期(20~34歳)」「中堅期(35~44歳)」「ベテラン期(45歳以降)」のそれぞれのフェーズにおける危機の乗り越え方を提示しているパートは必読だ。

本書によると、これまで「裏方」と捉えられてきた人事は、これからの時代は「主役」として位置づけられるという。自らを「裏方」と考えてきた人事パーソンはもちろん、経営者や、組織の成長に関心のある人、人的資本経営の実践を目指す人、人事としてキャリアを築いていきたい人、人事の仕事に関心を抱いている人などに広く勧めたい一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

田中聡(たなか さとし)
立教大学経営学部准教授。東京大学博士(学際情報学)。新卒で株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。株式会社インテリジェンスHITO総合研究所(現・株式会社パーソル総合研究所)立ち上げに参画し、同社リサーチ室長・主任研究員・フェローを務め、2018年より現職。専門は人材マネジメント論。著書に『経営人材育成論』(東京大学出版会)、『チームワーキング』(日本能率協会マネジメントセンター)、『事業を創る人の大研究』(クロスメディア・パブリッシング)など。

中原淳(なかはら じゅん)
立教大学経営学部教授。立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム(BLP)主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。大阪大学博士(人間科学)。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。著書に『企業内人材育成入門』『研修開発入門』『組織開発の探究』(ダイヤモンド社)、『職場学習論』『経営学習論』(東京大学出版会)、『フィードバック入門』(PHP研究所)ほか多数。
Blog:NAKAHARA-LAB.net(www.nakahara-lab.net)

『日本の人事部』編集部
人材採用・育成、組織開発のナレッジコミュニティ『日本の人事部』(https://jinjibu.jp/)のすべてのコンテンツの企画・制作を担当。『日本の人事部』が運営するWEBサイト、情報誌『日本の人事部LEADERS』に掲載する記事の制作のほか、HRの一大イベント「HRカンファレンス」や人事の学びの場「HRアカデミー」などの講演企画、大規模調査「人事白書」の発刊など、HRに関する情報を幅広く発信している。

本書の要点

  • 要点
    1
    人と組織にまつわる課題が長期的に重要な経営課題となりつつある現代は、人事が黒子ではなく主役となる、いわば「人事パーソンの時代」だ。
  • 要点
    2
    仕事の中で特に成長し、成果を出している「ハイパフォーマー人事」についての調査では、その他の人事パーソンに比べて「経験学習」「1on1」「フィードバックシーキング」の3つの学習行動を実行している割合が高いことがわかった。
  • 要点
    3
    幸福感と活躍度の掛け合わせによる「キャリア充実度」に注目すると、人事パーソンのキャリアには3つのアップダウンが存在している。若手期・中堅期・ベテラン期、それぞれの時期に陥りやすい課題と対応策を知っておこう。

要約

「人事」の仕事に生じている変化

人事は「黒子」から「主役」へ

人的資本経営、ジョブ型雇用、賃上げ、リスキリング、週休3日制、男性有休、高年齢雇用……今、かつてないほど人と組織にまつわる課題が注目される時代が到来している。

特に現在、社会的関心を集めているのは「人的資本経営」だ。これは、企業が従業員一人ひとりに投資を行い、そこで発揮される価値を最大限にして、企業全体のパフォーマンスを最大化しようとする経営のことを指す。近年、人的資本をはじめとする非財務情報の開示が国際的な経営トレンドとなる中、日本においても投資家に向けた人的資本情報の開示が進んでいる。

多くの企業において人と組織にまつわる課題が長期的に重要な経営課題になると予想されるこの時代、人事部の役割は「黒子役」から「主役」に変化しつつある。これからは人事パーソン一人ひとりの活躍が期待される「人事パーソンの時代」なのだ。

3つの「質的な変化」
Atomic62 Studio/gettyimages

人と組織にまつわる課題は次から次へと登場している。それに伴い、人事の仕事には大きく分けて3つの「質的な変化」が生じつつある。

1つめは「課題解決型人事」だ。多くの企業にとって人事はルーティン業務ではなくなっている。先行事例のないテーマに対して、課題を再定義し、自社の経営や組織に最もフィットする制度や施策に落とし込んで実行する業務が増えつつある。

2つめは「テクノロジーへの対応」だ。課題解決型の人事として価値を生み出すためには、テクノロジーを活用し、ルーティン業務の負荷を減らす必要がある。

3つめは「データに基づいた人事」だ。人事に関する意思決定のあり方は、従来の「KKD(勘と経験と度胸)」から、データに基づいたものへとシフトしている。採用から育成、定着支援、従業員満足度やエンゲージメントの測定・向上など、人事におけるさまざまな指標をデータ化して蓄積し、活用することが求められている。

このような変化のもと、人事の仕事内容は格段に高度化しているが、それに対応できていない人事パーソンも少なくない。日本企業はただでさえ人材育成への投資に及び腰であるうえに、事業部門の課題解決が優先され、人事部門への人材投資は後回しにされがちだからだ。また人事部門も、自部門を「枠の外」に位置づけて考える傾向にある。

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要約公開日 2024.11.15
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