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本書の要点

  • 世界経済はあらゆるセクターが過熱状態にある「エブリシング・バブル」が起きており、大暴落のリスクが高まっている。(森永卓郎)

  • 「経済は成長し続ける」という前提でいるのは危険だ。富の偏在に対する不満が高まれば、資本主義の枠組みが変わるかもしれない。また、台湾有事の可能性も否定できない。(森永康平)

  • 日本の経済政策の考え方には誤解が多く、それが社会問題の解決を阻害している。(森永卓郎)

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大恐慌がやって来る ―森永卓郎

投資はギャンブルだ

投資はギャンブルである。通常、お金が増えるのは、働いたときと他人から奪ったときだけだ。そのため、どんな投資も最終的には「ゼロサムゲーム」、つまり勝者の利益と敗者の損失の差分がゼロになる。長期投資では、一見パイが拡大しているように見えるが、それはバブルが発生しているからだ。バブルは必ずはじける。いま私たちは人類史上最大のバブルに直面しており、その先にはバブル崩壊、つまり大暴落が待っている。私自身、これまでさまざまな投資をしてきた。しかし、投資を勧められるのは「割安な時」だけだ。いま日経平均は史上最高値を更新し、不動産価格も急上昇している。現に、東京23区の新築マンション価格は2年連続で1億円を超えた。

世界経済は「エブリシング・バブル」

metamorworks/gettyimages

投資家でアナリストのエミン・ユマルズ氏によれば、「世界経済はエブリシング・バブル」だという。バブルとは、特定のセクターが部分的に過熱状態になる現象であり、1980年代の日本の「バブル経済」は不動産バブルであった。一方、現在の世界経済は「あらゆるセクターがバブル」という状況にある。リーマン・ショック以降、世界中で量的金融緩和が続けられたことに加え、コロナ禍では金融緩和と財政出動が行われた。その結果、膨大な量のマネーが市場に流入し、あらゆる資産がバブル化してしまった。つまり、「エブリシング・バブル」が起きているのである。

バブル崩壊は資本主義の宿命

現在の世界は、世界恐慌が発生する直前の1920年代と状況が酷似している。当時、アメリカでは自動車と家電のバブルが発生していた。その頃のアメリカ産自動車は世界最強であり、家電製品も世界中の人々が憧れるトップブランドであった。

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要約公開日 2025.04.20
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.Copyright © 2025 森永卓郎、森永康平 All Rights Reserved. <br>本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は 森永卓郎、森永康平、株式会社フライヤーに帰属し、事前に 森永卓郎、森永康平、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ることなく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。

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