女性活躍から始める人的資本経営
女性活躍から始める人的資本経営
多様性を活かす組織マネジメント
NEW
女性活躍から始める人的資本経営
ジャンル
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

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出版日
2024年05月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「人的資本経営」や「女性活躍」という言葉をよく聞くようになった。しかし、実際それらに取り組むためには具体的にどうすればいいのか。そもそも、なぜ必要とされているのか。改めて問われると、容易に答えられない人は多いのではないだろうか。

本書は、そんな疑問に鮮やかに答えてくれる一冊だ。人的資本経営の重要性や、女性活躍を含めたダイバーシティの推進が必要な理由、そして、日本企業で女性活躍がなかなか進まない背景などが詳細に記されている。また、組織で実践するためのステップも提示されているため、今まさに人的資本経営やダイバーシティに取り組もうとしている経営者・人事担当者にとっては、理想的な指南書となるだろう。

要約者が特に納得させられたのは、「属性に関係なく公平に評価される組織は、誰もが活躍できる組織である」という点と、「育児期の社員が働きやすい環境は、他の人にとっても働きやすい環境である」という点である。世間では「子持ち様」という言葉が流布しているように、育児で休みがちな社員の仕事で負担が増えることを嫌悪する風潮がある。しかし、何かあったときに早退したり休みを取りやすかったりする職場は、他の誰にとっても負担が少ない環境であるはずだ。

女性活躍やダイバーシティの推進は、組織全員にとっての利益となる。本書を組織づくりのテキストとして、大いに活用していただきたい。

ライター画像
大賀祐樹

著者

堀江敦子(ほりえ あつこ)
スリール株式会社 代表取締役
立教大学大学院経営学研究科(博士前期課程/リーダーシップ開発コース)修了。 ISO 30414リードコンサルタント/アセッサー、千葉大学教育学部非常勤講師。
楽天株式会社を経て2010年にスリール株式会社を創業。企業向けに女性活躍・ダイバーシティ推進の研修・コンサルティングを実施。推進体制づくりやDEIポリシーの作成支援、女性管理職パイプライン構築に向けた各階層や管理職向けの研修などを提供している。女性活躍推進の分野にてトータルで企業の伴走支援を行う。
内閣府男女共同参画局 専門委員として第5次男女共同参画基本計画の策定に関わり、現在はこども家庭庁の有識者委員を務める等、行政委員を多数経験。行政・大学向けに実施しているライフキャリア教育事業(仕事と子育ての両立体験/ワーク&ライフ・インターン)では、第5回経済産業省 キャリア教育アワードを受賞。その他、日経ビジネス「チェンジメーカー10」、第9回若者力大賞「ユースリーダー賞」を受賞。日経BP Human Capital ONLINEで「女性活躍から始めるサステナブル経営」連載執筆。企業研修実績、メディア出演実績多数。
著書に『新・ワーママ入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    ダイバーシティの推進は、女性と育児期の社員から始めるといい。女性は社会的マイノリティの中のマジョリティであるため、多様な人材が活躍できることを示すバロメータとなる。
  • 要点
    2
    日本企業で女性管理職が増えない背景には、日本企業特有の「構造」と「意識」の問題がある。
  • 要点
    3
    女性が「管理職になってよかった」と感じるまでには時間がかかる。はじめは自信が無くても、経験を重ねていくにつれポジティブに変化していくだろう。
  • 要点
    4
    女性活躍推進の実践には、「経営」「人事(現場)」「社内外コミュニケーション」の3つの視点を持ち、連携していくことが必要だ。

要約

【必読ポイント!】理論編

「人的資本経営」が重要視される理由

人的資本経営とは人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方である。人材をコストではなく「価値を生み出す資本」として捉え、効果的に投資することでリターンを生み出そうという考えに基づいている。

近年、なぜ人的資本経営が重要視されるようになったのか。そのきっかけの1つは、2008年のリーマン・ショックである。リーマン・ショックの背景には、リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの社内ガバナンスの脆弱さがあったと言われる。これにより、財務情報のみで投資判断をする危険性が周知され、人材投資への関心が高まっていった。

ESG投資も関係している。環境(Environment)や社会(Society)に配慮して、適切にガバナンス(Governance)されている企業に投資する「ESG投資」。このうち、社会とガバナンスが人的資本に関わっているため、投資の観点から人的資本を重視する声が高まっている。

近年は、外国人投資家による人的資本への取り組み要請も増えている。また、コーポレートガバナンス改革の推進によって、企業の中核人材における多様性の確保が取り入れられた。

2023年3月期からは、「有価証券報告書」で人的資本の情報開示が義務化されている。全ての上場企業が「ダイバーシティ」、その第一歩としての女性活躍推進に対して、本気で取り組まなければならないのである。

女性活躍からDEIを始める
P.40 より引用(日本能率協会マネジメントセンター提供)

人的資本経営の推進に欠かせないのが、ダイバーシティ(多様性)だ。ダイバーシティは、単に多様な人材が存在するだけではなく、「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)」として捉える必要がある。

DEIの推進には、「女性」「育児期」社員から始めるといい。その理由の1つは、女性は社会的マイノリティの中のマジョリティであるため、ダイバーシティを計る第一のバロメータとなるからだ。人数が多い属性でさえも活躍できない環境ならば、当然、他の属性の人達の活躍も難しい。

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要約公開日 2025.05.05
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