ブランディングの誤解
ブランディングの誤解
ブランディングの誤解
出版社
出版日
2024年12月16日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「ブランディングに成功した企業」として真っ先に思い浮かぶのは、アップルである。シンプルでスタイリッシュなプロダクトに加え、独自の世界観を表現した広告。誰もが憧れる世界的なブランド。それがアップルだ。

しかしここで重要なのは、アップルの成功は決して「ブランディング」が要因ではないという点だ。まず優れたプロダクトがあり、そこに広告の洗練されたイメージが加わった。たとえば有名なCM「Think different.」は様々な広告賞を受賞し、いまなお語り継がれているが、「売上」への貢献は限定的であったという。

実際にアップルが売上・時価総額ともに世界トップに躍り出るのは、「Think different.」の数年後、MacBookやiPhoneが発売されてからである。「アップルはブランディングに成功した」というのは、結果論にすぎないのだ。

人は美しいものやかっこいいものに惹かれるが、だからといって「買う」とは限らない。たとえば自宅にある日用品や化粧品、電化製品は、見た目や雰囲気で選んだだろうか? それも決め手の1つだったかもしれないが、「使いやすい」「効果を感じている」「値段がちょうどいい」といった理由が大きいはずだ。

本書では、世間に広まっている「ブランディングの誤解」を解き、真に効果の出るブランディングを教えてくれる。もしいま、なんとなくブランディングに取り組もうとしているなら、その手を一旦止めてほしい。まずは本書を読み、正しい道筋を知ってからでも遅くはないはずだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

西口一希(にしぐち かずき)
Strategy Partners および Wisdom Evolution Company 代表取締役社長
大阪大学経済学部卒業。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)ブランドマネジャー、マーケティングディレクター。ロート製薬執行役員マーケティング本部長を経て、ロクシタン代表取締役社長 グローバルエグゼクティブメンバー社外取締役戦略顧問。スマートニュース執行役員マーケティング担当(日本・米国)。2020年に日本と米国で特許取得した「9segs分析サービス」を提供するM-Force社を創業し、24年にマクロミル社に売却、マクロミル社の戦略アドバイザーに就任。24年12月現在、Strategy PartnersおよびWisdom Evolution Company代表取締役社長。
著書『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)、『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)、「マンガでわかる 新しいマーケティング』(池田書店)、「ビジネスの結果が変わるN1分析 実在する1人の顧客の徹底理解から新しい価値を創造する」(日本実業出版社)

本書の要点

  • 要点
    1
    「ブランディング」という言葉は定義が曖昧で、過剰期待を生んでいる。ブランディングに力を入れても、その商品・サービスの便益や独自性が弱ければ、顧客の購買にはつながらない。
  • 要点
    2
    買うかどうかの決め手となるのは「便益」と「独自性」である。
  • 要点
    3
    ブランディングの目的は「想起性の確立」「情緒的・心理的価値の提供」「インナーブランディング」の3つである。
  • 要点
    4
    ブランディングによる事業成果は「NPI(次回購入意向)」で測ることができる。

要約

ブランディングの誤解

あらためて「ブランディング」とは何か

「ブランディングをすれば商品が売れる」と思っているかもしれない。しかし、それは誤解である。

そもそも「ブランディング」の定義は曖昧で、それゆえに過剰期待を生んでいる。「かっこいいデザイン」「雰囲気の良さ」「流行の最先端」を“ブランド”だと考える人は多いが、それだけで物が売れることはほとんどない。

ブランディングに過剰な期待をしてしまう要因の1つが「ラグジュアリーブランド」の存在だ。ラグジュアリーブランドは、情緒的な価値観や哲学、思想、歴史を表現したスタイルやデザイン、ストーリーでサービスを提案する。しかし、これを一般的な消費財に適用したらどうだろうか。「美しいデザインだから買う」という人は少なそうだ。

ブランディングの目的は、商品やサービスを消費者の記憶に残し、識別しやすくすることである。また、ブランディングによって「好感度」という付加価値を生み出すことはできても、それだけで購買を促すのは難しい。商品やサービスそのものの便益や独自性が弱ければ、ブランディングに力を入れても継続的な購入にはつながらないのである。

アップルの伝説的広告は売上に貢献したのか
Riska/gettyimages

1997年に打ち出されたアップルの広告「Think different.」は、ブランディングの世界で語り継がれる伝説的な広告だ。しかしこのキャンペーンの翌年、売り上げは前年を下回った。

現在のアップルが誇る驚異的な売上と時価総額の成長は、「iPhone」「MacBook」「iPad」といった2000年代以降にリリースされた新商品の連続ヒットによるものだ。

「Think different.」がどのような目的で製作されたかはわからない。たしかなのは、視聴者やメディアから大きな反響を得たものの、売上や株価にはそれほど貢献しなかったという点である。

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要約公開日 2025.05.01
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