50代からの独立・転職は、あなたが思っているより上手くいく

成功に導く7つのヒント
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50代からの独立・転職は、あなたが思っているより上手くいく
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年02月19日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「シニアの転職・独立・起業が、一般に考えられているより上手くいく時代が始まっている。」そう聞くと意外に感じた人もいるのではないだろうか。日本経済は「高付加価値化したニッチ市場」の集合体になりつつあり、高齢化、IT化、グローバル化の進展でこの動きは加速度を増している。そのため、豊富な知識や経験を蓄積させ、オリジナルの専門性を磨いてきたシニアの活躍の場が増えるというのだ。本書では、筆者を含め、「華麗な転身」を遂げた七人のケーススタディーを通じて、シニアの独立・起業を成功させるための要素を洗い出していく。

筆者はさらに、シニアによるビジネスは日本経済活性化においても重要になるとも述べている。組織の中でつかみ取った自分の仕事の意味や課題の解決に向けて、独立、転職するという働き方が、これまでの大手企業では対応できなかったニッチ市場の開拓を可能にするからだ。

本書ではシニア人材一人一人のイキイキした生き様がリアルに描かれているため、読み進めるうちに彼らに鼓舞され、自分の目指す生き方は何なのか考えるきっかけを得ることができるはずだ。七人の主人公たちは五十代以上のシニアであるが、経済や労働市場の変化を見据えて自分らしい生き方を模索する若手・中堅社員にとっても、本書はキャリアデザインのヒントを得るための格好の教科書となるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

大澤 信一
経済評論家。1980年、東北大学経済学部卒業。コンサルティング会社などを経て、1995年から日本総合研究所(日本総研)に勤務。研究員として調査研究・コンサルティングに従事した後、2011年に55歳で独立。主な著書に『プロフェッショナル農業人』(東洋経済新報社)、『「団塊」退職で変わる経済 伸びるビジネス』(同、共著)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    成熟化が進む日本経済の活性化には、「高付加価値化ニッチ市場」を開拓することが鍵を握っている。豊富な知識や経験、ネットワークを築いてきた五十代以降のシニアにこそ、独立や転職、起業を成功させるチャンスが到来している。
  • 要点
    2
    各人が元々もっている「興味・関心」を、仕事や趣味を通じて熟成させることで、本物のオリジナリティーを生み出すことにつながる。
  • 要点
    3
    自分自身を売り出すためには、自分と市場の関係を常に意識し、自分の仕事について棚卸しを行い、アウトプットを続けることが重要である。

要約

市場と経済の成熟化を追い風にする

地元乳業メーカーからチーズ工房起業へ
PicturePartners/iStock/Thinkstock

赤部紀夫氏は北海道の地場乳業メーカーに定年まで勤務して独立し、ナチュラルチーズの工房を開いた。もともと、会社員時代、五十四歳のときに加わった、ナチュラルチーズの製品開発の新規事業がきっかけとなった。地元浦幌町のお土産になる乳製品をつくるというプロジェクトで、牛乳の製造現場でリーダーをしていた赤部氏は担当に立候補したのだ。

ナチュラルチーズは、全て手作りで、完成まで三週間ほどかかり、レシピ通りつくっても失敗することもあるという。こうした奥深さに魅了された彼は、自費で六回もフランスへチーズ研修に行き、「美しい自然とおいしい生乳がおいしいチーズを生む」という確信を得た。ところが、会社勤めでは思い通りにアイデアを具現化できないため、チーズ工房の起業を決心する。開業資金調達と工房の建設用地といった課題があったものの、彼は良い立地、家族の協力、おいしい水、日本屈指の生乳という好運に恵まれた。

起業した「十勝野フロマージュ」は、地元十勝の特産物や優良企業とのコラボレーションにより、ハート形のチーズなどの独自商品を次々開発し、順調に売り上げを伸ばす。地域の酪農家、大豆農家、養豚農家、レストラン、菓子メーカーなどと連携してこの土地でしかつくれないニッチ商品を成功させていったのだ。

融合戦略によって独自の個性をもったチーズは海外でも注目されており、グローバル・ニッチへの展開も見えている。

個性的な商品づくりを支えるもの
Jason Enterline/iStock/Thinkstock

注目すべき点の一つ目は、赤部氏の勤めていた乳業メーカーはナチュラルチーズづくりから撤退したのに、赤部氏はこの分野に参入して成功した点である。

小規模な高付加価値型の「ホンモノ」商品の市場には、量産型、大企業型のメーカーが対応することは難しい。しかし、小回りの利く工房や小規模企業が個性的な商品を提供すれば、ニッチな消費者の支持を得ることができるのだ。

もう一つの注目要因は、赤部氏の趣味の多彩さと生き方である。彼は津軽三味線、社交ダンス、釣りに通じており、定年までのいわば一毛作目の職業人生もイキイキと楽しみ、そこで培ってきた視野の広さを、商品づくりにも生かしているのだ。

他産業との市場融合や技術融合といった戦略は、彼の「自分の興味や関心を大切に育てる」という生き方が支えているのだろう。また、好きなことに楽しむ姿を家族に見せてきたことは、シニアの転身にとって大きなハードルとされる「家族の理解」につながり、二毛作目の成功につながっていると言える。

大手企業で培った技術力を中堅・中小企業へ

エンジニアからコンサルタントへの転身

大手通信会社の機械系エンジニアだった鴫原正義氏は、早期退職制度を活用し、五十六歳でコネクターなどを手掛ける電子部品大手メーカーに転職した。そこでは、六十五歳まで商品開発プロジェクトの推進や知財戦略の進め方のアドバイスを行い、現在はコンサルタントとして、複数の中小企業にて、技術の標準化や特許の問題にかかわっている。開発スタッフの創造性の発揮を促すことが彼の役目である。

最初の転職の媒介となったのは、友人の奨めによる、人材紹介会社への登録であった。

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要約公開日 2015.04.10
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