21世紀の貨幣論

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21世紀の貨幣論
出版社
東洋経済新報社

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定価
2,860円(税込)
出版日
2014年09月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、古典学、開発経済学、国際関係学、経済学という多領域の学問を修めた気鋭のエコノミストであるフェリックス・マーティン氏による処女作である。筆者は、「マネー」の歴史をひも解きながら、過去の出来事の紹介にとどまらず、読者の想像を助ける近現代の事例とも照らし合わせて解説をしており、現実味を帯びた解釈が可能となっている。古代ギリシャやメソポタミアを始め、中世ヨーロッパの歴史に関する記述も多いが、常識的な範囲であるのでさほど抵抗感を感じさせない。

筆者は「古代の人びとは物々交換でモノのやりとりをしていたが効率が悪かったので、交換の手段として硬貨や貨幣を生み出し、それがマネーとなった」という従来の貨幣論を覆す。モノのやり取りをする際に相手を信頼するその信用システムこそがマネーの本質だとする著者の「異端の貨幣論」は、序盤から読者の知的好奇心を存分にあおる。

現在の格差を生んだ金融政策を見直すカギを握っているのは経済学であり、経済を正しく理解することは、政治、歴史、心理学、そして倫理を理解することでもあるという。著者は、ケインズの言葉をひいて「経済学は、道徳科学であって、自然科学ではない」から、経済学者は「数学者であり、歴史家であり、政治家であり、哲学者でもなければならない」と主張する。資本主義と経済学への新たな視点を知りたいというすべての人に、現代のマネーの問題に真っ向から挑戦する大作として、本書をお薦めしたい。

著者

フェリックス・マーティン
オックスフォード大学で古典学、開発経済学を、ジョンズ・ホプキンス大学で国際関係学を学ぶ。オックスフォード大学にて経済学の博士号を取得。世界銀行に10年にわたって勤務し、旧ユーゴスラビア諸国の紛争後復興支援に関わる。現在、ロンドンの資産運用会社ライオントラスト・マネジメントでマクロエコノミスト、ストラテジストとして活躍。本書が初の著書となる。

本書の要点

  • 要点
    1
    マネーとは、ドルやポンドといった交換可能な物理的な物質ではなく、信用取引・決済のシステムである。
  • 要点
    2
    リーマン・ショックに端を発した世界的な金融危機が経済に大きな打撃を与えたことで、金融政策は極めて政治的なものだということが明らかになった。民主政治の究極の指針こそが、マネーの創造と管理に有効に機能する。
  • 要点
    3
    金融政策の究極の目標は、公平で豊かな社会を築くことだ。マネーは最強の自治の道具である。マネーの本質を正しく理解し、自ら動いてマネーを改革しよう。

要約

【必読ポイント!】 マネーとは、モノではなく社会的技術である

信用と清算のメカニズムこそが、マネーの本質
Tanya Puntti/iStock/ThinkStock

「マネーとは何か。どのようにして生まれたのか」と問うと、人はだいたい次のように答える。「古代の人びとは物々交換でモノのやりとりをしていたが、自分が欲しいものと相手が欲しいものが必ずしも一致するとは限らず、効率が悪かった。そこで交換の手段として耐久性がある金や銀が選ばれ、それ自体が価値のあるものとして取引されるようになった。これがマネーである」。こうした理解は広く共有され、標準的な貨幣論となっている。だが、多くの人類学者が研究を重ねても、物々交換で成り立っていた社会の証拠を見つけることはできなかった。

一例として、太平洋に浮かぶヤップ島に存在する巨大硬貨は、信用取引の代用貨幣であった。ヤップ島におけるマネーは、債権と債務を管理しやすくするための信用取引・決済システムであった。

マネーシステムが機能するには通貨が不可欠で、商品価値は「交換の手段」として機能していたというこれまでの貨幣論は間違っていた。信用取引をして、通貨による決済をするシステムこそがマネーである。譲渡可能な信用という社会的な技術こそが基本的な力であり、マネーの原始概念なのだ。マネーは実際にはモノではなく、社会的な技術である。

マネーという革命的な発明~普遍的な経済的価値~

古代メソポタミアでは経済が発達し、文字や数の概念が生まれ、会計が形づくられたが、マネーは発明されなかった。それは、メソポタミアの官僚主義的な指令経済はきわめて高度なものだったため、「普遍的な経済的価値」という概念が必要なかったからである。

マネーは3つの構成要素を必要とする。1つ目は経済的価値という普遍的な概念、2つ目は価値単位で記録する慣習、3つ目は譲渡の分権化である。

この3つの要素がそろって、マネーは「市場」という奇跡を創造した。硬貨が発明されると、金銭的義務を記録して、人から人へ譲渡させるという夢の技術が生まれた。そして市場が取引の原理を作り、価格が人間の活動に指示を出し、野心、起業家精神、イノベーションが次々に生まれるマネー社会の時代が到来する。社会的地位はお金を蓄積する能力で決まり、人間の価値を測る唯一の物差しがお金になった。さらには、マネー社会では社会移動と政治の安定を約束できるとされた。

また、「普遍的な経済的価値」という概念は、物理的世界の属性ではなく社会的現実の属性であり、富や所得をどう分配し、だれが経済的リスクを負うかという倫理の問題もはらむため、その標準は政治によって決まるものでなければならない。

「マネー権力」をめぐる闘い

貨幣鋳造益をめぐる権力争い
Jason Reed/Digital Vision/ThinkStock/Thinkstock

マネーが社会や経済のあり方を革命的に変えた後にでてきた疑問は、「だれがマネーを支配するか」という問題だった。現在ではどの国でも中央政府が貨幣を鋳造する権利を独占的に有しているが、国は本当にマネーを支配しているのだろうか?

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