トップエコノミストが教える 金融の授業

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出版社
かんき出版
出版日
2015年02月16日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「景気と金融はどのようにつながっているのか」、「量的・質的金融緩和に効果はあったのか」、ニュースでなんとなく分かった気になっているが、実はあいまいにしか理解できていない。そんな悩みを華麗に解決してくれるのが本書である。

本書は、「金融のことがこの1冊でまるごとわかる」をコンセプトに、「株式」「為替」「金利」の3大マーケットをわかりやすく解説している。著者は、的確な経済・市場予測で確固たる評価と信頼を得ているエコノミストである。漠然としてつかみづらい「金融」の概念や、金融機関の種類や役割といった基本事項から、短期金融市場や外国為替市場、株式市場といった金融市場、デリバティブ、金融商品の知識、金融市場の読み方まで、網羅的にカバーしている。金融の本に特有のとっつきにくさはなく、具体的なデータや図解、用語の解説が随所で理解を助けてくれる。まさに、「かゆいところに手が届く一冊」だと言えよう。

金融・経済の基礎知識を身につけ、経済動向を理解しておくことが、ビジネスパーソンにとってますます重要になっている。金融の入門書を探していた人にも、知識をブラッシュアップさせたいと考えている金融業界の人にとっても、うってつけの一冊だと言える。ダイナミックに変貌を遂げている金融の世界の全体像を本書でつかんでおけば、自分の仕事と経済との関係をより俯瞰的に見られるようになるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

上野 泰也
みずほ証券チーフマーケットエコノミスト。1963年青森県生まれ、育ちは東京都国立市。85年上智大学文学部史学科卒業。法学部法律学科に学士入学後、国家公務員Ⅰ種試験に行政職トップで合格し、86年会計検査院入庁。88年富士銀行(現みずほ銀行)入行。為替ディーラーを経て為替、資金、債券の各セクションでマーケットエコノミストを歴任。2000年みずほ証券設立にともない現職に就任。質・量・スピードを兼ね備えた機関投資家向けのレポート配信、的確な経済・市場予測で高い評価を得ており、「日経公社債情報」エコノミストランキングでは2002年から6年連続で第1位を獲得。11年「日経ヴェリタス」エコノミストランキングで第1位となった。共同通信「経済予測ダービー」でも11年・12年に連続で第1位。

本書の要点

  • 要点
    1
    金融市場は、価格形成機能と、余剰資金の効率的な配分機能という二つの機能をもち、価格変動リスクや金利変動リスク、為替変動リスクなどのリスクをヘッジする役割も果たしている。
  • 要点
    2
    日銀は2%の物価安定の目標に向けて、2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入したが、賃金の上昇の成果は不十分で、目標達成のメドはまだ立っていない。
  • 要点
    3
    外国為替市場において、強い通貨はドル、ユーロ、円になる。円高、ドル高などは主にこの3通貨の力関係で決まると言ってよい。

要約

金融と金融業界の基本

金融とは何か
Ingram Publishing/Thinkstock

金融とは、お金が余っている人(資金運用者)から、お金が不足している人(資金調達者)へと、お金を融通することである。このお金の貸し借りを仲介するのが、銀行などの金融機関である。お金の調達や運用といった取引を円滑に行うためのしくみを金融システムといい、このシステムがうまく機能していれば、家計、企業、政府という経済の主体の間をお金がスムーズに流れていく。このマネーフローを起こすしくみこそが「金融」であり、金融の働き次第で経済が活性化したり、停滞したりするのだ。

金融に不可欠な機能として「為替」と「金利」がある。「為替」とは、現金を使わずに、口座からの引き落としや送金がなどの取引ができる機能だ。現金受け渡しの手間やリスクをなくす便利なしくみである。また、為替は、国内でお金をやり取りする「内国為替」と、外国とお金をやり取りする「外国為替」の2つに分けられる。

もう一つの機能である「金利」とは、「お金を借りたお礼」を果たす機能である。金利はお金の需給バランスによって日々変動する。一般に金利が下がると利払い負担が軽くなるため、企業は銀行からお金を借りて新規事業や設備投資を積極的に行うようになり、経済が活性化する。このように金利の変動は経済活動に大きな影響を及ぼすと言える。

景気と金融の関係

景気の変動は、お金の需給関係に影響を及ぼしている。景気拡大時には、経済全体が活発になり、資金需要が増加して資金の供給を上回るようになり、「金融が逼迫」した状態となる。一方、不景気の時には、経済全体が停滞するため、資金需要が減り、資金の供給が需要を上回り、「金融が緩和」した状態となる。

また、企業の業績も景気に左右されるため、株価も景気の波の影響を受ける。好景気だと株価が上がる。ただし、株価は景気循環を先取りして動く傾向にあるため、景気が良くなる前に株価が上がり始める。なぜなら、投資家は日本や海外の景気が今後どうなるかを予測しながら株式を売買するからである。

金融市場とは何か

金融取引を行うネットワークを金融市場と呼び、短期金融市場、債券市場、株式市場、外国為替市場などに分類される。また、市場は取引期間が1年以下になる「短期金融市場」と、1年超になる「長期金融市場」に分けられる。

各国の金融市場は、グローバル化により結びつきが強まっている。そのため、どこかの国で金融不安が起こると、その国の混乱が世界中に波及するようになった。2008年のリーマン・ショックはその典型だと言える。

そうした性質をもつ金融市場には、価格形成機能と、余剰資金の効率的な配分機能という二つの機能がある。前者は、多くの市場参加者の売買注文が集まる中で、人気の銘柄は高くなり、そうでない銘柄は安くなるという「市場メカニズム」が働き、公正な価格が形成されていくというものだ。

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要約公開日 2015.05.01
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