美貌格差

生まれつき不平等の経済学
未読
美貌格差
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生まれつき不平等の経済学
未読
美貌格差
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年03月12日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

美人は得だ。イケメンも得だ。そのように皆がうすうす感じていることを、さて本当に美形は得なのか、得だとしたらどのくらい得なのか、と長年にわたり研究してきたのが、労働経済学の権威である著者だ。人の美しさは所得や労働市場にどういう影響を及ぼすのか、著者は本書で成人のサンプルを使って調べる手法を用いて明らかにしている。

さらに、「服装や髪形、整形手術にいくらつぎ込んでも、きれいになる効果はそれほどない」「美形の働き手や重役がいる会社は売上がアップする」など、さまざまな統計から、衝撃的な結論が導き出される。

経済学の分野では、ゲイリー・ベッカーや、『ヤバい経済学』(Freakonomics, 日本語版は東洋経済新報社より刊行)などの著作で知られるスティーヴン・D・レヴィットらが、家族・差別・犯罪などの社会問題に経済学の分析手法をあてはめ、学問範囲を広げてきた。本書もそうした流れに連なるものであり、身近ゆえに興味を持ちやすいトピックがたくさん取り上げられている。

テンポのよい翻訳の力もあり、ズバズバと美醜の真実をつく文章に、ときどきウッとショックを受けつつも引き込まれながら読んでしまう。難しい経済学の本はちょっと……という方でも、問題なく、楽しく読めること請け合いの一冊だ。本書で、経済学のおもしろさをぜひ味わってみてほしい。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

ダニエル・S・ハマーメッシュ
テキサス大学オースティン校で経済の基礎に関するスー・キリアム寄付講座の担当教授、オランダのマーストリヒト大学では労働経済学の担当教授を務める。著書に『労働需要(Labor Demand)』、『どこでも経済学(Economics Is Everywhere)』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    美しさに関して、人びとの意見はだいたい一致する。美形はどこに行っても美形と認められるゆえに、希少な価値だといえる。
  • 要点
    2
    美しい働き手はそうでない働き手に比べて、より多くの賃金を得ている。生涯賃金で試算すると、その差はおよそ2700万円にもなるという。
  • 要点
    3
    美しい働き手は、美しさが重要な意味を持つ職場にあっても、それほど重要でない職場にあっても、何らかの得をしている。
  • 要点
    4
    企業にとって、美しい働き手は多くの賃金を払わねばならない、コストのかかる存在ではあるが、彼らが企業にもたらす収入はそれを上回って大きいと考えられる。

要約

美形の定義

美形は誰が見ても美形なのか
Vitaliy Pakhnyushchyy/Hemera/Thinkstock

経済学は、ある希少性が呼び起こすインセンティヴを研究する学問だ。本書では、美貌という希少性に着目して、それが労働やモノの市場にどんな影響を及ぼしているのかを観察する。

その前に、まず、人の美しさを決定づけている特徴とは何か、それについて人びとの意見は一致するのか、ということについて考えねばならない。

本書では、人の美しさを考えるにあたって、ひとまず顔に焦点を当てることとしている。美しさの基準は時代によって変わるが、ある時点のある社会では、美しさを構成する要素についてだいたい意見は一致することがわかっている。ただ、人それぞれに意見があり、唯一絶対の基準はないように見える。

一方、ある人の美しさについて人びとは同じ意見を持つのか、という点に関して、著者はカナダでの調査を紹介する。この調査では、数年おきに同じ人を面談し、美しさを5段階評価で評価する。評価する側の人は毎回変わる。すると、となりあった年の評価の差を比べると、女性も男性も54%がまったく同じ評価を得ており、評価の差が1点を超えた人は男性3%、女性2%しかいなかった。つまり、美しさに関して、人の意見はだいたい一致するということだ。美しいと評価される人はどこへ行ってもだいたい美しいと評価される。だからこそ、美しいという特徴は供給不足であり、希少だといえる。

美形になる努力は実るのか
Natasha Litova/iStock/Thinkstock

前述と同じ方法の調査によると、女性と男性では、女性のほうが美しさに関して極端な評価がされやすいことがわかった。「すばらしくハンサムか美人(5点)」、「醜悪(1点)」という評価を受けた人の割合が、男性よりも高かったのだ。

女性たちは、もっときれいになるということに貪欲で、服やヘアカット、マニキュアなどさまざまに投資する。しかし、上海で行われた調査によると、美容にまったくお金を使わない女性が平均的な額を使うようになっても、容姿の評価は3.31から3.36にしか上がらないのだそうだ。かけるお金を増やして得られる効果は、それまで使っていたお金が多ければ多いほど小さくなるという。つまり、私たちは基本的に、もって生まれた顔と一生つきあっていくことになるということだ。

【必読ポイント!】仕事と美形

美しさは収入にどう影響するか
denphumi/iStock/Thinkstock

典型的な働き手の場合、美しさはお給料にどれだけ影響するのだろうか。著者は全国的に無作為に収集したデータを使って分析した。データからは、従来の研究から収入を左右することがわかっている要因、たとえば、教育、年齢、健康、人種や民族などの要因を取り除き、容姿のみが収入に与える影響を抽出した。

すると、美人の収入にはプレミアムがつき、醜い人の収入にはペナルティがつくという方向性が明らかになった。男性の場合、容姿が並より良ければ、並の男性よりも4%収入が多く、並より悪ければ、並よりも13%収入が少ない。女性の場合、並より良ければ8%のプレミアム、悪ければ4%のペナルティがつく。

仕事人生全体に照らして試算してみると、美しさが収入に与える影響が実感できる。

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要約公開日 2015.09.04
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