本書の要点

  • ビジネスが抱える戦略的課題には、企業や店の規模は関係がない。大企業が抱える課題や取り組む戦略は、小さな店や企業にとっても有効である。また、スモールビジネスから学ぶ新しい知恵や発見も多くある。

  • 経営には共通する「法則」はなく、全てにおいて「場合によりけり」である。問題の本質を理解し、「何によりけりか」を見極め、正しい意思決定をすることが最も重要である。

  • 戦略とは決して解決しない課題である。めまぐるしく変化するビジネス環境のなかで、時代にマッチした戦略を絶えず模索する必要がある。

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事業規模の拡大

規模の経済(スケールメリット)を活かして、事業拡大を図る

©iStock/shironosov

ブレイシズ・バイ・バリスは矯正歯科、いわゆる永久歯の歯並びを整える矯正治療専門のクリニックである。ここ数年、新しい町で開業したり、引退する矯正歯科医院から医院を買い取り事業を拡大して、現在は11の都市でクリニックを展開している。

3人が訪れたオフィスが起点となる本拠地であり、各地域での一切の活動を調整する管理オフィスとしてハブ機能を担っている。比較的小さな町に進出しているため、医院を毎日開ける必要はない。1人の矯正歯科医にアシスタント2人、受付係1人がチームとなり交代制で出張する。本拠地である管理オフィスは、会計業務・IT・人事・請求と支払い業務に、コールセンターも兼ねている。ハブ機能の存分な活用により、利益拡大の第一原理である「規模の経済(スケールメリット)」をうまく利用している。生産量が増大して、生産物1個あたりの費用(平均費用)が安くなるとき、「規模の経済が働く」といわれている。

つまり、ブレイシズ・バイ・バリスの場合、医院の管理をオフィスで一手に担うことにより、生産量の増減に関係なく生じる費用である固定費(賃貸料や設備費、人件費など)を低く抑えることができ、効率的に事業を拡大できている。一方で、矯正治療に要する治療器具などを管理オフィスで一元管理することは、在庫の費用効率を上げ、生産量の増減に伴って変動する費用である変動費(材料費)のムダを省くことにつながっている。固定費に対して変動費が低く抑えられた場合に、規模の経済が働く。生産量が増加しても、総固定費が一定であれば、製品一個あたりにかかる固定費を減らせるからだ。

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要約公開日 2015.10.19
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