人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃
人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃
人口問題民間臨調 調査・報告書
人口蒸発「5000万人国家」日本の衝撃
ジャンル
出版社
出版日
2015年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

高齢化や出生率低下、そして人口減少。こうした課題が日本に何をもたらすのかを具体的にイメージするのは難しいかもしれない。本書は、すでに人口減少が始まっている地域の実態や、これから起こりうる変化、そしてそこへの対応方法などについて、データを引用しながら解説している。シミュレーションに基づいた想定シナリオもあるので、人口減少の現実をリアルに想像することができる。

本書の冒頭では、人口問題を語る上での著者たちのスタンスが明示されている。人口政策の目的は「人口水準の維持」であり、一人あたりの国民所得が維持できれば人口が減少しても構わないという考え方ではないこと。人口減少を緩和することと、人口減少に適応することを並行して進めていくべきであること。結婚・出産の課題については、政府が出生率目標を掲げ、「産む意思のある人が産める環境」をつくるべきであること。海外人材を受け入れるベネフィットがあるということ。東京一極集中現象を東京対地方の二律背反の文脈でとらえるべきではないということ。高齢者と若年層は、世代間対立を越えて協同していく存在であるべきだということなどである。

本書が扱っているテーマは、人口減少の実態の概観や、過去の人口政策の検証、シルバー民主主義、人口動態と財政の関係、地方ビジネスの可能性など、多岐にわたる。綿密な調査に基づいた分析を読む中で、より多角的な観点から人口問題を考えられるようになるだろう。

著者

一般財団法人 日本再建イニシアティブ
●日本再建イニシアティブは、福島原発事故の原因究明を最初のテーマとして、2011年9月に設立された独立系シンクタンクである。
●「真実、独立、世界」をモットーに活動しており、日本が抱える国家的課題に絞って研究、提言を行っている。報告書は英語で世界に発信し、グローバル市民とともに課題に取り組んでいくことを目指している。
理事長・船橋洋一

本書の要点

  • 要点
    1
    地方だけでなく首都圏でも高齢化・人口減少は始まっており、将来的にインフラや商業施設などが今までどおり供給できない可能性が高まっている。財政改革と、技術革新などによる労働生産性の向上が急務である。
  • 要点
    2
    人口政策は急務であり、財政の見直しによる子育て世代の支援、外国人労働者の受け入れ、「コンパクトシティ」の実現、魅力ある地方ビジネスなど、あらゆる観点から人口減少を食い止めつつ、減少に適応していけるような国づくりをしていく必要がある。

要約

【必読ポイント!】 人口減少の現実

首都圏でも他人事ではない人口減少

日本の人口減少は、地方だけで起きているように思うかもしれない。しかし東京・埼玉・千葉・神奈川の東京圏は、2015年に人口のピークに達し、2020年以降、減少していくだろうという人口推計が発表されている。

実際、首都圏近郊の市町村では、市立病院の閉鎖、大型量販店の撤退、ニュータウンの空き家増加などが現実として始まっており、人口減少のペースも地方と変わらないかそれ以上の速さで進んでいる自治体がある。このまま首都圏の人口減少・高齢化が進んでいけば、老朽化したマンションが放置される「限界マンション」の増加や、学校の統廃合、公共交通機関の路線廃止、商店の閉鎖・撤退などが進むことになる。高齢者が増えることで救急医療の受け入れもパンク状態になるだろう。

まちが弱体化すれば、人はより便利な都心へと流れ、おもに高齢者が移転せずに取り残されることになる。実際、すでに首都圏の公営住宅などにおいてこのような現象が起きており、まちが活気を失いつつあるのが現実だ。

地方の生活インフラの崩壊
(C)iStock.com/winhorse

人口が減少していくと、ガス・水道・公共交通機関などのインフラや、商店・ガソリンスタンドなどの商業施設はどうなっていくのか。

国土交通省の発表した資料には、病院・銀行・郵便局・商業施設などが、どのくらいの人口規模の自治体に50%および80%の確率で存在するかがまとめられている。2050年には人口2千人以下の自治体、人口2千~4千の自治体が大幅に増えることになる。この規模では銀行、通所・短期入所介護事業、ショッピングセンターなどのサービス施設が不足する可能性が高い。

また、人口減少に伴い、スーパー、コンビニ、ガソリンスタンド、教育機関なども減っていく可能性がある。介護サービスの需要と供給のバランスが崩れていくことも考えられる。現在でも、公共交通機関の経営が立ち行かなくなり、自治体がコミュニティバスや乗合タクシーを独自に運営するという試みはすでに始まっている。ITを活用することで新たな生活スタイルに転換するという楽観的な見方もあるが、住民がどんどん流出するという悲観的なシナリオに備え、早急な対策を講じなければならない。

人口減少が経済にもたらす影響

人口減少を財政面から考えてみよう。実質GDP成長率をプラスに保つには、労働力人口の減少を上回って労働生産性を上げていかなければならない。

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要約公開日 2015.10.13
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