本書の要点

  • 著者は馬主になり、北海道で牧場経営を始めたが、最初はうまくいかなかった。欧米から専門のコンサルタントを招き、それぞれの分野のスペシャリストのアドバイスを受けながら改善を行うことにより、競馬で結果を出せる馬が育つようになった。

  • ゼネラリストは、細かいことをしすぎないで大きなグラウンドデザインを描き、個々の仕事は現場のスペシャリストに任せることが大切だ。

  • スタッフ全員がすべての馬に関わるようにすることで、どの馬が勝っても、スタッフ全員が喜び、感動することができる。

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日本で一番美しい牧場をつくる

成功した理由は「成功するまでやり続けたから」

Dovapi/iStock/Thinkstock

著者は、20代はじめの頃、従兄弟に連れられて初めて馬券を買って以来、競馬を楽しむようになった。25歳のときには会社を興している。やがて、同業の先輩で馬主をしていた人物や、彼の紹介による馬の調教師と交流するようになり、1983年、34歳のときに馬主になった。北海道の生産地を見に行き、自分でも牧場をやってみたいと思うようになっていた著者は、翌年、北海道の新冠町で牧場経営を始める。

牧場をつくるために、設計士と一緒に欧米の牧場を見て回り、著者はその広大さ、美しさに感動したという。日本で一番美しい牧場をつくろうと決心し、土地を買って原野を切り拓き、サラブレッド生産牧場であるマエコウファーム(現ノースヒルズ)をつくった。

やがて、馬主になることを誘ってくれた人物から繁殖牝馬として譲り受けた馬が、ゴールデンアワーとゴールデンゼウスという2頭のオープン馬を産んだ。ゴールデンゼウスはノースヒルズの生産馬として、初めてダービーに出走した。21年後、生産馬として延べ12頭目の出走となったキズナはダービー初制覇を遂げ、翌年ワンアンドオンリーが連覇を果たすことになる。

成功することができたのは、「成功するまでやり続けたから」だという。

スペシャリストにアドバイスを受ける

牧場を始めてから最初の10年は失敗の連続だった。自分でも何度もやめようと思い、周囲からは「素人に牧場経営なんてできるわけがない。どうせ5、6年で失敗するだろう」と言われたという。

欧米の馬と日本の馬の圧倒的な差に頭を抱えていた頃、欧米には飼料や馬体管理を専門とするコンサルタントがいるということを知った。そこで著者は、世界トップクラスのスペシャリスト、ドクター・スティーヴ・ジャクソンをコンサルタントとして招く契約をした。1996年以来、ノースヒルズでは飼料や栄養管理、運動とのバランスなどについて彼のアドバイスを仰いでいる。

ほかにも、アメリカから放牧地の土壌管理のコンサルタント、馬専門の歯科医、イギリスから配合(種牡馬と繁殖牝馬の組み合わせ)のコンサルタントが年1回ノースヒルズを訪れる。世界のホースビジネスを知り、それぞれの分野のスペシャリストにアドバイスを受けることで、新しい技術や情報、世界の動向を知ることができるのだ。

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要約公開日 2015.10.02
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