1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力

未 読
1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力
ジャンル
著者
大津秀一
出版社
大和書房
定価
1,650円(税込)
出版日
2013年07月18日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
2.5
応用性
4.5
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1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力
1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力
著者
大津秀一
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ジャンル
出版社
大和書房
定価
1,650円(税込)
出版日
2013年07月18日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.0
革新性
2.5
応用性
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レビュー

人の話を聴く技術についての書籍は既に世に溢れている。良書も多い。そうした中で本書を読む価値がどこにあるかといえば、それは本書の著者が緩和ケア・終末期医療を専門とする医師であり、1000人を超える人々を看取る立場から人間の本質的部分に向き合う、極めて特異な経験にあろう。

がんなどの重病や老衰など、死を目前に感じている人はそれまでの人生では感じたことのなかったようなストレスにさらされる。身体の苦しみと共に、この世から様々なものを残して去らなければならないという何とも言えない寂しさを味わう。しかし往々にして、そうした心境は周囲の人間には理解されず、また本人も自ら語ることがないために、ひたすら内に籠って苦しんだり周囲との軋轢を生んでしまったりすることも多いという。本書はそうした心境を周囲の人間が“傾聴”することによって、苦しみから解放され穏やかな最期を迎えられると説き、またその技法についても解説している。

傾聴の技法については際立った目新しさはないかもしれない。しかし本書では、死を待つ人や老いを迎えた人の心境が緩和ケア・終末期医療の現場で働く医師ならではの視点で丁寧に、そして温かく語られている。今後我々の誰もが直面するであろう親などの周囲の人の老い、そして老いに対して誰もが抱く不安を理解するためには非常に優れたものといえるだろう。それが不安な立場にある人の話をじっくりと聞く技術として、ビジネス等の現場で応用がきくものであるのは言うまでもないことであろう。

猪野美里

著者

1976年生まれ。茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。緩和医療医。内科専門研修後、日本最年少のホスピス医(当時)として京都市左京区の日本バプテスト病院ホスピスに勤務した後、2008年より東京都世田谷区の入院設備のある往診クリニック(在宅療養支援診療所)に勤務し、入院・在宅(往診)双方でがん患者・非がん患者を問わない終末期医療・緩和医療を実践。2010年から東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターに所属し、緩和ケアセンター長として緩和ケアチームを運営している。現在多数の患者の診療に携わる一方、著述・講演活動を通じて緩和医療や死生観の問題等について広く一般に問いかけを続けている。

本書の要点

  • 要点
    1
    傾聴力とは「お互いを支える力」である。相手の話に耳を傾け、その人の苦しみの根源を聴き出すことには、苦悩する人を支えるだけではなく、自らもまたそこから支えられるという力がある。
  • 要点
    2
    近年では、医療現場において「傾聴」は「治療的対話」であると言われ、患者を支え助けるための力を「傾聴」が持っていると認められてきている。
  • 要点
    3
    人間の苦痛は「身体的な痛み」「社会的な痛み」「精神的な痛み」「スピリチュアルペイン」の4つに大別される。4つの苦しみが絡み合い悪循環を形成している場合も多い。苦痛を持つ人、そしてその人を支える立場にある人は、苦しみをこの4つに整理しながら聴くとよい。特に、衣食が事足りている日本においては、「スピリチュアルペイン」、すなわち、「自分が存在することの意味」についての問いが苦しみの原因になっていることが多いため、それについて深く理解することが欠かせない。
  • 要点
    4
    傾聴する際には「苦悩している人を支えたい」という心が何よりも重要である。そして、その人自身の「物語」を意識しながら聴くようにする。苦悩する人自身が物語を語り、再構成していくことが「スピリチュアルペイン」の癒しに繋がっていくからである。

要約

「聞く」ではなく「聴く」

Jupiterimages/Creatas/Thinkstock
人に話を聴いてもらうことによって、様々な不安を癒すことが求められている

「聞く」と「聴く」には違いがある。「聞く」の「聞」の由来は、門の外で門に耳を当て、中の様子をうかがっているさまである。これに対し、「聴く」の場合は下もとの字は「聽」であるため、「耳を王様にして十四(脳を表す)の心をもって、心の声まできくこと」という解釈がある。すなわち、「聞く」に対して「聴く」は深奥まで聴くことを表しているといえる。本書が語ろうとしているのは「聴く」力についてである。

現代においていかに「聴く」ことが求められているか、その例の一つを挙げよう。

著者の祖母が経営している漢方薬局は、多くの街の薬局が経営難に陥っている現在でも、患者に根強い人気がある。著者は、人気の理由は的確な薬の調合だけにあるのだけでなく、症状や病気への不安、家族や職場等の人間関係の軋轢など、さまざまな悩みを聴いてもらえる薬局であるためだと考えている。お客さんは単に薬を買いに来ているのではなく、話をしに来て、話を聴いてもらうことそれ自体によっても癒されているのである。

病に苦しんでいる人を癒すのは薬などの治療だけにとどまらない。苦悩する人の話に耳を傾けること自体にも苦しみを癒す効果がある。そのように近年では、医療の現場でも「聴く」ことの力が認められてきている。

人間の苦痛とは

iStock/Thinkstock
苦痛の中でもスピリチュアルペインに注意が必要

4つの苦痛とは「身体的な苦しみ」、すなわち胃の痛みやめまい、不眠等の身体症状、「精神的な苦しみ」、すなわち不安や孤独感、うつ状態、いらだち、恐れなど、「社会的な痛み」、すなわち経済的な困窮や人間関係や家族関係の悩み、「スピリチュアルペイン」、すなわち存在が揺らぐことによって起きる苦しみである。この4つは互いに絡み合ったものになっていることも多いが、援助者がそれを整理し分析してやることで苦痛の根本原因を発見できたり、苦痛が緩和されたりすることも多い。

4つの中でも「スピリチュアルペイン」が最も重要である。「スピリチュアル」は“宗教的”な意味も含むものの必ずしも同じ意味ではなく、生きている意味や目的について深く関わるという側面を持つ。たとえば、膝をすりむいたくらいでは「スピリチュアルペイン」は生じないが、重大な事故に遭い肢体不自由となった場合には、「自分の生きている意味は何だろうか」などと考え、「存在の揺らぎ」が生じるためスピリチュアルペインが生じる場合もある。

病気や老いなどによる終末期においては、人生の残り時間が少ないことを自覚するため、スピリチュアルペインが現れることが特に多い。体力が弱れば、次第に歩けなくなり立てなくなり、最期には水を飲み込むことすらできずにむせるようになる。このような状態になると「私はなぜ生きているのか」と考えるようになりどうしても存在の揺らぎが起きてしまうが、周囲の人々の「傾聴」により人間関係を強めることで、弱った存在を補完していくことが出来る。

スピリチュアルペインをどのように癒すか

iStock/Thinkstock
傾聴を通し、苦悩する人の新たな物語を紡ぎ出すことが癒しに繋がる

スピリチュアルペインとは、自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛であり、「時間存在(将来の時間)」「関係存在(他社との関係)」「自律存在(自立と生産性)」から成り立つ。終末期にはそのどれもが一度揺らぐものであるが、支援者は「関係存在」「自律存在」を下支えすることで、必然的に終末期に弱まる「時間存在」の低下による影響を和らげなければならないのである。

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