パクリ経済

コピーはイノベーションを刺激する
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パクリ経済
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おすすめポイント

『パクリ経済』というタイトルから、イミテーションによるイノベーションの阻害例や、アジアを中心とした著作権保護の弱い地域の解説を想像した人は、実際に本書に触れると驚きがあるに違いない。本書は、著作権保護が行われていない業界においても、イノベーションが活発に行われている事例を通じた「実証的アプローチ」で、イミテーションがイノベーションを破壊するという通説に疑問を投げかけている。

メディアではとかくイミテーションは悪だと言われがちである。その中で、本書のメッセージである「イミテーションがイノベーションを促進する」という事実はショッキングなものだ。ファッション業界やレストラン業界、コメディ、アメリカンフットボール、金融業界では、主な創作物が著作権保護の対象外でありながら、次々とイノベーションが引き起こされている。その要因として挙げられている、「トレンドとサイクル」「社会規範」などの説明は納得感が高く、なるほどと膝を打つことだろう。

イミテーションがイノベーションを促進している業界が存在する、という事実を理解すること自体が、本書の第一の価値だと言える。また、第5章に位置付けられる「結論」の存在により、本書の主張を裏付ける理論が整理でき、体系的に理解しやすい構成となっている。本書は、イノベーションの本質への理解を深めたい人や、経済の常識を疑わせる知的な面白さを味わいたいという純粋な欲求を持つ多くの人にとって、一読の価値がある野心的な一冊だ。

ライター画像
大賀康史

著者

カル・ラウスティアラ(Kal Raustiala)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法律学教授。デューク大学を卒業後、ハーヴァード・ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を、カリフォルニア大学サンディエゴ校で政治学の博士号(Ph.D.)を取得。専門分野は国際法、国際関係、知的財産。
クリストファー・スプリグマン(Christopher Sprigman)
ニューヨーク大学法学部教授。ペンシルヴェニア大学を卒業後、シカゴ大学ロー・スクールで法務博士号(J.D.)を取得。専門分野はコピーライト、知的財産、法と経済学、特許、商標。

本書の要点

  • 要点
    1
    ファッションや料理、アメリカンフットボールの戦略、金融イノベーションなど、コピーが許容されているのに、創造性が活発な領域は広く存在する。
  • 要点
    2
    著作権保護が行われていない領域において、活発にイノベーションが行われているという事実は、イミテーションとイノベーションが共存できることを実証している。
  • 要点
    3
    イミテーションとイノベーションが共存できる背景を理解するためには、「トレンドとサイクル」、「社会規範」、「製品とパフォーマンス」、「オープン性とイノベーション」、「先行者利益」、「ブランド作りと宣伝」について考察を深めることが重要だ。

要約

コピー商品とファッションの虜たち

ファッション界におけるコピー
Creatas/Creatas/Thinkstock

2007年、セレブで有名なパリス・ヒルトンが、あるトーク番組でフォリー+コリーナ・デザインのドレスを着ていた。番組後、ファストファッション小売業のフォーエバー21が、そのドレスに驚くほどそっくりのドレスを作成し、40ドルで売り出した。オリジナルのドレスの約10分の1の価格だった。

フォーエバー21のドレスを見て、オリジナルのドレスのデザイナー、アンナ・コリーナは「不愉快だわ」と断言した。フォーエバー21のデザイナーが、自分のデザインを盗んでいることに腹を立てているのだった。

このようなファッション界におけるコピーの横行は、アメリカ著作権法の隙間がもたらした必然的な結果だと言えるだろう。アメリカにおいて著作権保護は、ファッション・デザインには適用されないのである。コピーから保護されるのは、ブランド名やプリント柄などごく一部の要素に留まっている。

なぜコピーが合法なのか

なぜファッション・デザインはこれまで一度もコピーから保護されてこなかったのだろうか。それはアメリカの著作権法に対する考え方の特徴である、実用物なら自由にコピーして構わないという姿勢による。一般的に著作権法では、音楽のように機能性を持たない、あるいは最低限の機能的属性しかもたない芸術形態を対象にする。

保護対象となるのは、きらびやかな宝飾品や、アディタスの三本線マークのように商標と結び付きが強いものに限られる。その結果、影響力が強く高価なファッション・ブランドのデザインのコピーが大がかり、かつ合法的に行われているのである。

著作権侵害のパラドックス

人々が服を買う理由は様々であり、体を覆って暖かくする、という面もある。しかし、カクテルドレスに何千ドルも払う理由はむしろ、ステータスへの欲望に駆られたものである。

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要約公開日 2016.02.02
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