ブロックバスター戦略

ハーバードで教えているメガヒットの法則
未読
ブロックバスター戦略
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ハーバードで教えているメガヒットの法則
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ブロックバスター戦略
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2015年09月25日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

ハリー・ポッター、レディー・ガガ、マルーン5。こうした大ヒット作や大スターを誕生させる戦略があると聞くと驚く人も多いのではないだろうか。ハリウッド映画をはじめ、エンタメ業界では「一人勝ち」と呼べる圧倒的なメガヒット(ブロックバスター)が増加の一途をたどっている。これは圧倒的勝者に共通する「ブロックバスター戦略」によるものだ。

著者は、ハーバード・ビジネススクールでクリエイティブ産業の戦略的マーケティングを教える、エンターテインメントにおけるビジネス理論研究の第一人者である。この授業はハーバードで異例の人気を誇る授業だ。著者が言う「ブロックバスター」とは、第二次世界大戦時に空爆によってブロック(町の区画)を一気に破壊するほどの強力な爆弾にちなんだ、圧倒的な影響力を持つ大ヒット作品を指す。世間で話題になっているものに注目する消費者心理を突き、少数の作品に莫大な製作費や宣伝費を投入し、成功確率を高めるのが、ブロックバスター戦略の肝である。

本書を読めば、エンタメ市場の現在の仕組みと、ビジネスの発展と存続に効果をもたらす戦略について、豊富な具体例やデータをもとに理解を深めることができる。また、映画や音楽、出版、スポーツ業界だけでなく、アップルやバーバリーなど他の業界の企業における活用事例も紹介されている。もはや無視することのできない影響力を持つブロックバスター戦略の真髄と、今後の可能性を本書で学んでみてはいかがだろうか。知的好奇心が大いに刺激されることは間違いない。

ライター画像
松尾美里

著者

アニータ・エルバース
ハーバード・ビジネススクール教授
ハーバード・ビジネススクールのリンカーン・フィレーン記念講座教授。同校の女性教授として史上最年少で終身在職権を取得し、MBA1年目の必修カリキュラムの議長を務める。人気授業「クリエイティブ産業の戦略的マーケティング」を担当し、映画、テレビ、音楽、出版をはじめ、スポーツ産業やナイトクラブまで、ビジネスのロジックで分析していく。『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『バラエティ』誌、『フォーチュン』誌などで研究が取り上げられる。マサチューセッツ州ボストン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    エンタメ業界で成功するには、圧倒的な大ヒットが見込める作品に多額の費用をつぎ込み、「その他大勢」の作品の費用を抑えるブロックバスター戦略をとることが有効である。
  • 要点
    2
    デジタル技術の進化によって、消費が分散化し、無名のニッチ商品が市場で大きなシェアを占めるという「ロングテール理論」の予測ははずれた。むしろ、デジタル技術の進化はブロックバスターの一極集中化と一人勝ちの力学を助長している。
  • 要点
    3
    ブロックバスター戦略は、映画や音楽などのエンタメ業界だけでなく、サービスやITなど他の業界でも通用する。

要約

【必読ポイント!】 エンタメ業界で成功のカギを握るブロックバスター戦略

ブロックバスター戦略とは

映画・テレビスタジオのワーナー・ブラザーズは、1999年、年間で25本製作された映画の中から、看板映画を4、5本選び、その映画の製作とマーケティングに多額の予算を集中的に投資した。多数の作品に少しずつ賭けて「利ざやを求めて管理する」ほうが賢明に見えるが、回収不可能と思えるほどのコストを少数の作品に費やすのはなぜなのか。

これは映画やテレビ、音楽、出版などのエンタメ業界がその有効性を証明してきた「ブロックバスター戦略」を根拠にしている。ブロックバスターとは、第二次世界大戦時に空爆によってブロック(町の区画)を一気に破壊するほどの強力な爆弾にちなんだ、圧倒的な影響力を持つ大ヒット作品を指す。ブロックバスターを狙って多額の費用をつぎ込み、「その他大勢」の作品の費用を抑えることが、確実に成功を収める方法なのである。

ブロックバスターに賭ける映画業界
©iStock.com/Deklofenak

この戦略が映画業界にどんな影響を及ぼしているかを紹介しよう。

ブロックバスター戦略をとる映画スタジオは、最もヒットしそうな作品に大金を投入し、莫大な売り上げと利益を狙う。この大型投資は、「集中と選択」の経営理論の実践としてとらえることができる。

2010年を例にとると、先述のワーナー・ブラザーズは製作費予算の3分の1を、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』『インセプション』『タイタンの戦い』というスター作品につぎこんだ。最大の予算を投入した映画は高収入、高利益を見込めると期待されていた。ワーナーの業績を見ると、高額を投じた上位3作品は、2010年の興行収入に占める割合が全米で40%以上、全世界で50%以上となった。

映画作品の群雄割拠といえる現在においては、観客の注目を勝ち取るために、競合作品より抜きん出ることが目標となる。ワーナーの社長兼COOであるアラン・ホーンは次のように語る。「筋金入りのファンでさえ、1週間に1本しか映画を観ない。その人たちに必ず選んでもらえる映画をつくらなくてはならない」。

また、広告宣伝費を含めると、ブロックバスター戦略の有効性はますます明白となる。

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要約公開日 2016.01.20
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