日本型モノづくりの敗北
零戦・半導体・テレビ

未 読
日本型モノづくりの敗北
ジャンル
著者
湯之上隆
出版社
文藝春秋(文春新書)
定価
832円
出版日
2013年10月20日
評点(5点満点)
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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レビュー

日本は本当に「技術力が高い」のであろうか。現代はグローバル競争が激化し、各業界における主要プレーヤーが世界で選別される時代である。その中で日本が、本来世界に製品を販売できる「モノづくり」の領域で、近年遅れを取り始めているのはどのように理由づけられるのか。本書はそのような難題に対し、「日本は技術力が高い」という根本的な認識そのものに疑問を投げかける、挑戦的な書である。

自動車業界のように、イノベーションが持続的に進んでいる業界においては、今も日本の優位性は維持されているようにも見える。しかし、それが今後も続くかといえば、不安を感じざるを得ない。つまり、内燃機関を動力とし、その周辺の機器を含めて高度な摺り合わせが求められるテクノロジーから、バッテリーの容量拡大に併せて電気自動車等の需要が増大することによる、モジュール化が劇的に進みやすいテクノロジーへのシフトが、現実になりつつあるからである。そのようなパラダイムシフト時の「イノベーションのジレンマ」にこそ、優位性の転換が起こる可能性を秘めているのだ。

本書には、日立で世界の第一線の技術者として研究を続けられた著者が、その波乱万丈な半生の中で感じた日本の製造業の課題を中心に、他のビジネス書とは一線を画す分析を多く含む。技術力をブレークダウンした上で、なぜ日本の製造業がグローバル市場で欧米企業の逆襲、新興国企業の飛躍を許してしまっているのか、技術の専門家でない方にもわかりやすい内容である。本書は製造業に関わる方だけでなく、それを扱うメディアの方などにも、一読いただく価値のある良書である。

大賀 康史

著者

湯之上 隆
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(修士課程原子核工学専攻)を修了後、日立製作所に入社。以後16年にわたり、中央研究所、半導体事業部、デバイス開発センター、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて、半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士授与。現在、半導体産業と電機産業のコンサルタントおよびジャーナリスト。微細加工研究所所長。京大原子核工学および東北大工の非常勤講師。著書に『日本「半導体」敗戦』『「電機・半導体」大崩壊の教訓』。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本の半導体、電機産業、インテル等の、世界で覇権を握った企業が、凋落する共通項は、パラダイムシフトに対応することができず、「イノベーションのジレンマ」を免れなかった点にある。
  • 要点
    2
    技術力には、高品質をつくる技術力、高性能をつくる技術力、低コストでつくる技術力、短時間でつくる技術力、といったように様々な評価軸がある。一つの評価軸で技術力が高いだけでは、「技術力が高い」とは言えないのである。
  • 要点
    3
    日本は、高品質を作る技術は高いが、低コストで作る技術に関しては、韓国・台湾勢に劣っている。これは半導体に限らず、日本の電機産業、ものづくり産業全体にも当てはまる。

要約

激動の半導体産業

iStock/Thinkstock
パラダイムシフトとイノベーションのジレンマ

著者は日立の半導体微細加工技術の技術者出身で、エルピーダ、半導体先端テクノロジーズ等、第一線で研究をされた方である。いわゆるビジネス面の分析ではなく、技術力を具体的に細分化して戦略を語る視点が他著者と異なる点だと言えよう。序章において、日本の半導体産業の凋落過程を語っている部分から紹介したい。

日本の半導体、電機産業、インテルには、世界シェア1位かつ世界最先端の技術があったところから、凋落している点に共通項がある。その原因は、各産業や各企業が、世の中の変化、つまり、パラダイムシフトに対応することができず、「イノベーションのジレンマ」に陥ったことである。

イノベーションのジレンマを言い換えると、トップ企業が収益源である既存顧客の要求を重要視するあまり、性能や品質が劣るが「安い、小さい、使いやすい」破壊的技術に駆逐される現象をいう。

コンピューターのトレンドは、1970年から十年ごとにメインフレーム、ミニコン、PC、ノートPC、タブレット・スマホと遷移する中で、日本の半導体、電機産業、更にはインテル等の企業は破壊的技術への対応に後手を踏んだのだ。

日本半導体産業と零戦の共通性
iStock/Thinkstock

日本の半導体産業の栄枯盛衰は第二次大戦時の戦闘機、零戦を彷彿させる。開戦当初、米国の零戦対策は、「零戦を見つけたらひたすら逃げること」だったという。しかし、戦争も終盤になると、徹底的に研究され、その弱点が露呈する。零戦は高高度性能、高速性能、防弾性能に問題があった。米国の戦闘機グラマンは、高高度からの一撃離脱戦法で攻撃し、零戦を次々に撃墜するのだ。

さらに、海軍から要求された格闘戦性能や航続距離を実現するため、機体を極限まで軽くする必要があり、パイロットを守る防弾壁が設置されなかったのだ。そのため、なにより貴重なベテランパイロットを、日本海軍は次々と失うことになった。

かつて日本のDRAMメーカーは、顧客のメインフレームメーカーから、「壊れないDRAMをつくれ」と言われ、25年保証の高品質DRAMをコスト度外視でつくった。顧客からの要求に必死に応じた結果、衰退するという点で、零戦と日本の半導体産業は類似していると言える。

日本の技術力神話の弊害

日本で喧伝される「日本の技術力は高い」ということに対しても、筆者は疑問を提起する。

一般の日本人もマスコミも評論家も学者も、日本は「ものづくり国家」であり、「日本の技術力は高い」ということをなんの疑いもなく無邪気に信じている。日本は確かに1980年代に、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われるほどに世界を席捲した。しかし、それから30年も経つというのに、「それでも日本の技術力は世界一」と言い続けているのはどういうことだろうか。おそらくなんら深い見識もないのではないか、と考えざるを得ない、という。

技術力には、高品質をつくる技術力、高性能をつくる技術力、低コストでつくる技術力、短時間でつくる技術力、といったように様々な評価軸がある。ある一つの評価軸で技術力が高いというだけでは、十分ではないのだ。特に1970年~80年代に入社した人たちは、強烈な成功体験を持つため、「技術力では負けていない」という根拠のない過信を持っているため、企業変革の妨げになる方も散見されるのである。

【必読ポイント!】なぜ日本型モノづくりが負けたのか?

低コストでつくる技術は低かった

技術力には複数の評価軸があることは前述の通りである。日本は、高品質を作る技術では高いものを持っているが、低コストで作る技術に関しては、韓国・台湾勢に劣っている。これは半導体に限らず、日本の電機産業、ものづくり産業全体にも言えることではないか。特にテレビにおいて、ソニーのトリニトロンから始まってシャープの液晶テレビに至るまで、高画質および高品質につくる技術では世界を圧倒してきた。

しかし、テレビが薄型デジタルテレビにパラダイムシフトする中で、

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日本型モノづくりの敗北
未 読
日本型モノづくりの敗北
ジャンル
産業・業界 テクノロジー・IT
著者
湯之上隆
出版社
文藝春秋(文春新書)
定価
832円
出版日
2013年10月20日
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