働く力を君に

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出版社
出版日
2016年01月19日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

日本の流通業界を変革し続けるセブン&アイグループの会長を務める鈴木敏文氏。日本初の本格的なコンビニエンスストアチェーンの仕組みをゼロからつくり上げ、現在はグループ総売上高10兆円という巨大流通企業を率いている。そんな彼が、これまで積み上げてきた「仕事の要諦」を語り尽したのが本書である。

実は、セブン-イレブンの創業やセブン銀行の立ち上げなど、鈴木氏の挑戦はことごとく周囲の猛反対に遭ってきたという。しかし、彼は逆境を乗り越え、失敗を成功に変えてきた。

鈴木氏はこれまで様々な局面で果敢に挑戦するとき、どんな視点や発想を持ち、決断を下し、行動してきたのだろうか。そして人を動かすために、伝え方にどんな工夫をしてきたのか。本書では、鈴木氏のたどった軌跡とともに、彼の仕事哲学があますことなく紹介されている。仮説力を鍛え、ブレない視点を持ち、そしてシンプル思考に徹することの重要性を、鈴木氏の経験談や他の挑戦者たちの具体例とともに、学ぶことができる。さらには、消費者の視点から考える商品設計や心理経済学を用いた伝え方など、興味深い記述も多い。まるで鈴木氏の講話に耳を傾けているかのような臨場感を味わいながら、奮起させられる一冊だ。

本書を読み終える頃には、「運を味方につけ、大志を成し遂げる人は、揺るがない信念を持って挑戦し続けている」という原則に立ち戻ることができるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

鈴木 敏文(すずき・としふみ)
セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEO。
1932年、長野県生まれ。1956年、中央大学経済学部卒業後、書籍取次大手の東京出版販売(現・トーハン)に入社。1963年、ヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)へ移る。1973年、セブン‐イレブン・ジャパンを設立し、コンビニエンスストアを全国に広め、日本一の流通グループとして今日まで流通業界を牽引。2003年、勲一等瑞宝章を受章。同年11月、中央大学名誉博士学位授与。経団連副会長、中央大学理事長などを歴任。著書には『朝令暮改の発想―仕事の壁を突破する95の直言』(新潮文庫)、『売る力―心をつかむ仕事術』(文春新書)、『挑戦 我がロマン』 (日経ビジネス人文庫)ほかがある。

勝見 明(かつみ・あきら)
ジャーナリスト
1952年、神奈川県生まれ。東京大学教養学部中退。フリーのジャーナリストとして経済・経営分野で執筆・講演活動を続ける。専門はイノベーションを生む組織行動、リーダーシップ論。著書には、鈴木流経営学の真髄を解き明かした3部作『鈴木敏文の「統計心理学」〈新装版〉』『鈴木敏文の「話し下手でも成功できる」』(以上、プレジデント社)、『鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く」』(日経ビジネス人文庫)のほか、『全員経営』(野中郁次郎・一橋大学名誉教授との共著 、日本経済新聞出版社)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    鈴木氏は、自分の頭で掘り下げて考え、仮説を立てることを重視してきた。物事の本質をつかむには、既存の常識に対し「本当にそうなのか」と問い直すことが重要だ。
  • 要点
    2
    変化に対応するには「ブレない視点」を持つことが不可欠であり、セブン-イレブンの成功は、すべてを「お客様の立場で」考えるという視点によるものである。
  • 要点
    3
    挑戦することは、自分に妥協しない生き方へと踏み込んでいくことだ。理想や目標に向かって自分を変え、新しいことに挑戦し続けることが、人間本来の生き方である。

要約

仮説力を鍛える

すべては疑問を発することから始まる
egadolfo/iStock/Thinkstock

セブン-イレブンの創業、コンビニでのおにぎりの発売、セブン銀行設立、より上質なプライベートブランド(以下、PB)開発。鈴木氏は流通業界の常識に対し、疑問を発することで、業界の歴史を塗り替える新しい取り組みを実現させてきた。鈴木氏は、物事の本質をつかむため、既存の常識に対し、先入観を捨てて「本当にそうなのか」「なぜなのか」と問い直すことを習慣にしているという。

彼は新しい挑戦のたびに、周囲から猛反対を受けてきた。セブン-イレブンを創業する際も、「小型店が大型店との競争に勝てるはずがない」と反対された。しかし否定論の多くは過去の経験に縛られているにすぎない。鈴木氏は、商店街の小型店が競争力を失ったのは、商品が市場のニーズの変化に対応できていないことや生産性の低さが根本原因であると考え、「商品の価値と生産性を高めれば、小型店と大型店は共存できる」という仮説を立てた。疑問を発することで、問題意識とともに、「こういうことができるのではないか」という仮説が生まれる。

鈴木氏は、「仮説を立てる」ことが重要だと考えている。世の中の常識をうのみにせず、自分の頭で掘り下げて考えることで、仮説を立て、答えを導き出す力が身につき、チャンスを引き寄せることができるのだ。

「二匹目のどじょう」では成功できない

現在は、柳の下にどじょうが一匹いるかどうかもわからない時代だ。どじょうがどこにいるのか、自ら探し当てないといけない。

往々にして売り手は、Aという商品がヒットすると、その延長線上にあるAダッシュのような商品に飛びつきがちである。しかし顧客から見ると、両者の違いはほとんどない。だからこそBやCという商品を考えることが必要だ。セブンプレミアムも、他のPB商品と同様に低価格路線を選んでいたら、二匹目のどじょうをねらうことになり、現在のような圧倒的な支持は得られなかっただろう。

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要約公開日 2016.03.24
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権は鈴木 敏文、勝見 明、株式会社フライヤー に帰属し、事前に鈴木 敏文、勝見 明、株式会社フライヤーへの書面による承諾を得ること なく本資料の活用、およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、 本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
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