無印良品が、世界でも勝てる理由の表紙

無印良品が、世界でも勝てる理由

世界に“グローバル・マーケット"は、ない


本書の要点

  • 企業の海外進出はリスクも高いうえ、失敗も続くが、失敗をそのままにせず「勝ちパターン」を積み上げていくべきである。展開先の国の理解を深め、諦めずに続けることが重要である。

  • 企業の“オリジナリティ”を持たなければ、他社との差別化を図れない。企業のコンセプトを明確化し、社員へ徹底すること、お客さまにも理解してもらうことで“ファン”を増やすことができる。

  • 日本で仕事ができる人は、海外でも仕事ができる。海外赴任において最も大切なのは、語学力ではなく実行力や徹底力、現場・現実への対応力という基本的なビジネスパーソンの素養である。

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成功するまで、やり抜く――「早く」進出する、そして「確実に」進出する

一号店が赤字になったら

何事も最初が肝心である。初対面の第一印象でイメージが作られるのと同様に、海外進出もその国の第1号店は重要だ。ニューヨークの第1号店も初日こそ行列ができるほどの反響で好スタートを切ったが、2008年9月にリーマンショックが起きた直後は売り上げが3割も落ち、赤字に転落した。普通は傷が浅いうちに撤退するか新店舗で赤字を補おうとするが、黒字に転換するまで乗り切ろうと考えた。売り場をきちんとし、店内のディスプレイやウェブでコンセプトを知ってもらう工夫をすると同時に、経費を見直しムダを省き、2011年に黒字に転換した。ビジネスではじっと我慢しなければならない時期は必ずでてくるため、3年以内に赤字を解消できたらその地域から撤退しなくてもいいだろう。

「アーリーエントリー」という大原則

Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

海外事業は、他の企業が手を付けていない時期に真っ先に進出する「アーリーエントリー」が原則である。その国が急激に経済成長をしている段階で進出するほうが、成長率は高くなる。進出する段階ではMUJIの商品が割高でも、国民の生活水準が上がれば顧客層に厚みが増していく。そのため、早い段階で出店し、地域に浸透させておかなくてはならない。地域に早く浸透することにより、ライバル企業が出てくる前に自社のポジションをしっかり固められるうえに、日本流のサービスや製品の質の高さをいち早く体験してもらうことで、驚きを与えることも可能だ。

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【必読ポイント!】「日本の良さ」をも武器にできるか――「コンセプト」はやっぱり大事

世界が求めている「日本のサービス」とは

日本に来た外国人は皆、日本のサービスの質に驚く。日本人には当然のことが、外国人にとっては初めての経験になる。そのような「日本の良さ」を輸出することも、ビジネスチャンスの一つになる。勤勉で真面目で正直なのは日本人の長所である。協調性が高く、チームワークが良い。外国人と同じように強く自己主張をする必要は無く、分からないことや納得できないことを曖昧にせず、分かるまで説明を求めて納得するまで話し合う。このような協調性や誠実さといった日本人の良さで勝負すればいい。

「これ『で』いい」――こんなコンセプトを大事に

会社のコンセプトとは、直訳すると全体を貫く基本的な「概念」であり、その組織の核となる考え方である。無印良品には7500以上の商品があるが、どの商品も「シンプル」であり「無印らしさ」がある。「無印らしさ」とは言葉で説明するのは難しいが、一人ひとりの社員がなんとなく感じているものが、ゆるやかにつながっている。この「らしさ」の根底にあるのが、コンセプトだ。

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要約公開日 2016.04.12
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