データで読み解く中国の未来
中国脅威論は本当か

未 読
データで読み解く中国の未来
ジャンル
著者
川島博之
出版社
東洋経済新報社 出版社ページへ
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2015年10月16日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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中国脅威論は本当か
著者
川島博之
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定価
2,000円 (税抜)
出版日
2015年10月16日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

中国は、輸出額で2004年に日本を上回った。さらに、2014年にはGDPでも日本を追い抜き、日本のGDPは世界第2位から3位になってしまった。日本は、戦後奇跡の成長を遂げ、80年代には“Japan as No.1”とさえ言われたが、国是であった加工貿易は衰退してしまった。今、世界経済において大きな存在感を示しているのは、日本でなく中国である。実際、日常にあふれる中国製品の多さや、中国の金融市場の動きが日本経済に与える影響からして、日本にとっても中国がどれほど影響のある国となっているかがよくわかるだろう。

中国経済は今後も快進撃を続け、日本を、ひいては世界を脅かす国になり得るのではないかと感じるのも無理ないことだが、そのような事態には決してならないだろうというのが著者の見解である。現に、2015年に入ってから中国経済は鈍化してきている。どういったことが原因で、中国は今後どのような道に進むのか。本書は看板に偽りなく、中国の未来をデータに基づき分析・予想するものである。

しかし本書は決してデータ主義に偏るものではない。数十年にわたり、中国の都市部から農村までを歩いて研究し続けた著者自身の経験を下地にして書かれているため、非常にリアリティがあり信頼に足る書籍である。また、経済・政治・文化・思想など多角的に分析されていることも、本書の価値のひとつといえるだろう。

和田有紀子

著者

川島 博之
東京大学大学院農学生命科学研究科准教授。
1953年東京都生まれ。1977年東京水産大学卒業、1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得のうえ退学(工学博士)。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、ロンドン大学客員研究員などを経て、現職。主な著書に『世界の食料生産とバイオマスエネルギー』(東京大学出版会、2008年)、『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋、2009年)、『農民国家 中国の限界』(東洋経済新報社、2010年)『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版、2011年)、『「戦略」決定の方法』(朝日新聞出版、2012年)、『データで読み解く中国経済』(東洋経済新報社、2012年)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    中国は2012年に米国を追い抜いて、輸出額世界第1位となった。先進各国よりもGDPに占める工業生産額割合が非常に高く、名実ともに「世界の工場」となっている。
  • 要点
    2
    中国は安価な石炭をエネルギー源とし、都市部の農民を低賃金の労働力として使うことで、工業製品の輸出競争を優位に進めている。
  • 要点
    3
    中国はアメリカとならぶ強国となったが、今後は「中進国の罠」にはまり、成長の鈍化に直面するだろう。人口の3分の1を占める農民を豊かにしなければ真の先進国にはなれない。

要約

中国の強さとその理由

日本に競り勝つ、21世紀の「世界の工場」、中国
kzenon/iStock/Thinkstock

近年、日本からの輸出が伸びない。日本の貿易といえば、「加工貿易」や「貿易黒字国」といった言葉とセットで認識している人も多いと思うが、2011年以降、日本の貿易は赤字である。安倍内閣が発足した2012年、年平均為替レートは1ドル79.8円だったが、アベノミクスによる大胆な金融緩和により2014年には1ドル105.9円となり、実に30%以上為替が切り下がった。このような状況において、2012年に8013億ドルだった輸出額は、2014年には6944億ドルまで、つまり13%も減少した。それはなぜなのか。

輸出先の地域別にその内訳を見てみると、最大の貿易相手国であるアジアへの輸出が2011年から2014年にかけて18%減少し、同じ時期にヨーロッパへの輸出は28%も減った。対アジア・ヨーロッパの貿易黒字が大幅に減少した現在、日本が大幅な黒字額を出しているのは対米だけである。

その背景にあるのが、中国の輸出伸長である。2012年には輸出額でアメリカも抜き、世界第1位の輸出大国となった中国は、貿易収支でも大幅な黒字を叩き出しており、2007年から2008年にかけての黒字は3000億ドルを上回った。中国が輸出しているもののほとんどが工業製品であり、中国は「世界の工場」になったといえる。日本では、「中国の製品は安いが粗悪」といったイメージがずいぶん根深く、また、モノづくりに力を入れてきた伝統から「高くてもよい物であれば対抗できる」と考えがちである。しかし、今や中国製品の性能は日本とさほど変わらない上に、価格は安い。結果、先進国でも開発途上国でも中国製品は売れている。日本は世界のほとんどの地域において中国に競り負けている。

一方で、中国の対外直接投資額は日本の半分程度にとどまっている。だが今後、10年、20年後に中国の直接投資額が大きく増えることは間違いないだろう。中国は、昨今話題のAIIBに関する動きからしても、日本を含めたアジアに「元」で決済できる経済圏を作ろうとしていると考えられる。日本はこうした現実を冷静に見据えておく必要がある。

中国の強さの理由① 安価な石炭の大量消費
Adam88xx/iStock/Thinkstock

経済成長とエネルギーの消費量には相関性がある。2009年にアメリカを抜き、世界最大のエネルギー消費国となった中国だが、そのエネルギー源については、他の先進諸国と大きく異なる点がある。

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