ゴールドプランなら4,000冊以上が全文読み放題! 7日無料体験はこちらから
データで読み解く中国の未来の表紙

データで読み解く中国の未来

中国脅威論は本当か


本書の要点

  • 中国は2012年に米国を追い抜いて、輸出額世界第1位となった。先進各国よりもGDPに占める工業生産額割合が非常に高く、名実ともに「世界の工場」となっている。

  • 中国は安価な石炭をエネルギー源とし、都市部の農民を低賃金の労働力として使うことで、工業製品の輸出競争を優位に進めている。

  • 中国はアメリカとならぶ強国となったが、今後は「中進国の罠」にはまり、成長の鈍化に直面するだろう。人口の3分の1を占める農民を豊かにしなければ真の先進国にはなれない。

1 / 3

中国の強さとその理由

日本に競り勝つ、21世紀の「世界の工場」、中国

kzenon/iStock/Thinkstock

近年、日本からの輸出が伸びない。日本の貿易といえば、「加工貿易」や「貿易黒字国」といった言葉とセットで認識している人も多いと思うが、2011年以降、日本の貿易は赤字である。安倍内閣が発足した2012年、年平均為替レートは1ドル79.8円だったが、アベノミクスによる大胆な金融緩和により2014年には1ドル105.9円となり、実に30%以上為替が切り下がった。このような状況において、2012年に8013億ドルだった輸出額は、2014年には6944億ドルまで、つまり13%も減少した。それはなぜなのか。

輸出先の地域別にその内訳を見てみると、最大の貿易相手国であるアジアへの輸出が2011年から2014年にかけて18%減少し、同じ時期にヨーロッパへの輸出は28%も減った。対アジア・ヨーロッパの貿易黒字が大幅に減少した現在、日本が大幅な黒字額を出しているのは対米だけである。

その背景にあるのが、中国の輸出伸長である。2012年には輸出額でアメリカも抜き、世界第1位の輸出大国となった中国は、貿易収支でも大幅な黒字を叩き出しており、2007年から2008年にかけての黒字は3000億ドルを上回った。中国が輸出しているもののほとんどが工業製品であり、中国は「世界の工場」になったといえる。日本では、「中国の製品は安いが粗悪」といったイメージがずいぶん根深く、また、モノづくりに力を入れてきた伝統から「高くてもよい物であれば対抗できる」と考えがちである。しかし、今や中国製品の性能は日本とさほど変わらない上に、価格は安い。結果、先進国でも開発途上国でも中国製品は売れている。日本は世界のほとんどの地域において中国に競り負けている。

一方で、中国の対外直接投資額は日本の半分程度にとどまっている。だが今後、10年、20年後に中国の直接投資額が大きく増えることは間違いないだろう。中国は、昨今話題のAIIBに関する動きからしても、日本を含めたアジアに「元」で決済できる経済圏を作ろうとしていると考えられる。日本はこうした現実を冷静に見据えておく必要がある。

中国の強さの理由① 安価な石炭の大量消費

Adam88xx/iStock/Thinkstock

経済成長とエネルギーの消費量には相関性がある。2009年にアメリカを抜き、世界最大のエネルギー消費国となった中国だが、そのエネルギー源については、他の先進諸国と大きく異なる点がある。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3054/4068文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2016.06.07
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

ENIAC
ENIAC
ThomasHaighMarkPriestleyCrispinRope土居範久(監修)羽田昭裕(訳)川辺治之(訳)
国宝消滅
国宝消滅
デービッド・アトキンソン
安倍官邸vs.習近平  激化する日中外交戦争
安倍官邸vs.習近平 激化する日中外交戦争
読売新聞政治部
ビジネスを「先読み」する人の日本経済史の読み方
ビジネスを「先読み」する人の日本経済史の読み方
小宮一慶
企業家としての国家
企業家としての国家
マリアナ・マッツカート大村昭人(訳)
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれる男
陳潤永井麻生子(訳)
日本人の知らないHONDA
日本人の知らないHONDA
依田卓巳(訳)ジェフェリー・ロスフィーダー
フジテレビはなぜ凋落したのか
フジテレビはなぜ凋落したのか
吉野嘉高

同じカテゴリーの要約

非常識な「ハイブリッド仕事論」
非常識な「ハイブリッド仕事論」
文化放送 浜カフェ(著)入山章栄(編)
サピエンス全史(上)
サピエンス全史(上)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ・グラットンアンドリュー・スコット池村千秋(訳)
無料
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
針貝有佳
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
2050年の世界
2050年の世界
ヘイミシュ・マクレイ遠藤真美(訳)
教養としての「地政学」入門
教養としての「地政学」入門
出口治明
無料