弁護士の論理的な会話術の表紙

弁護士の論理的な会話術


本書の要点

  • 論理的な思考力を身につけないと、非論理的な思考にダマされやすくなってしまう。また、自分自身が間違った理論展開をしないためにも、論理的思考力を養う必要がある。

  • 議論で相手のペースに巻き込まれないためには、その根底にある価値観を見つけ出し、その部分に反論することが有効である。

  • 議論で主導権を握るためには質問が効果的だ。質問には、「強制的に思考させる」「答えを出させる」という2つの力があり、しかも相手に強制させているという感覚を与えにくい。

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なぜ会話に論理力が必要なのか

人は非論理思考にダマされやすい

Big Cheese Photo/Big Cheese Photo/Thinkstock

世間では、筋の通っていない非論理的な主張をされているにもかかわらず、それに従ってしまう人が後を絶たない。なぜなら、そのような主張の多くは、一見すると筋が通っているように見えるため、誤りに気づきにくいからだ。

ハーバード大学の社会心理学者エレン・ランガーが行った実験は、そのことを端的に示している。ランガーが、コピー機待ちの列に並ぶ学生に対し、割り込ませてくれるように、「コピーするページが5ページあるんです。先に使ってもいいですか。実はコピーをとらないといけないので」とお願いしたところ、実に93%の学生が先にコピーをとらせてくれたという。

だが、よくこの頼み方を見てほしい。一見理由づけをしているようで、「コピーをとらないといけないからコピーをとる」と、当たり前のことを言っているだけである。

このように、人は簡単に非論理的な言葉に騙されてしまうものだ。そうならないためには、論理力を身につける必要がある。論理的に考える習慣が身につけば、相手の主張が妥当かどうかを吟味し、毅然と対応できるようになるはずだ。そのためには、表面的な言葉に惑わされず、その言葉の本質がどこにあるのか、着目する視点を養っていくことが重要である。

人は誰しも、主張を正当化したい

大抵の場合、非論理的な主張を行っている相手に、「それは非論理的だ」と指摘したところで、そのことを認めようとはしない。なぜなら、人は自分自身を守るために、たとえ強引な論理展開であっても、自分の主張を正当化したがるものだからだ。

実際、罪を犯し、裁判にかけられている被告人と話していても、本当に自分の行為を反省し、自分が間違っていたと素直に罪を認める人は稀である。表面上は反省の言葉を語っていても、よくよく話を聞いてみれば、自分の行動を正当化している場合がほとんどだ。

さらに、「一貫性の原理」という心の働きも、正しい議論を行う際に邪魔になってくる。一貫性の原理とは、はじめにとった行動や、表明した意見を、最後まで支持し続ける傾向を意味する。いったん議論を始めてしまうと、自説と自分とが同化してしまい、自説の誤りを認めることが、あたかも人間としての誤りを認めることのように感じられる。こうなってしまうと、もはや議論は正しい結論に到達するためのプロセスではなくなり、単なる自尊心を守るためだけの戦いになってしまう。

人は、それが実際に正しいか正しくないかにかかわらず、どのような結論を主張するときも、論理的であろうとするものだ。だからこそ、相手の間違った論理に反論し、正しい結論を主張するためには、正しい論理力を身につけることが必要不可欠なのである。

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論理的な話し方をするためのテクニック

「3段論法」はあくまで道具

itchySan/iStock/Thinkstock

論理学の基本的な考えに「3段論法」というものがある。3段論法とは、「AならばB、BならばC、ゆえにAならばC」と展開していく方法だ。例を挙げると、(A)義務教育が廃止されるならば(B)勉強は本人の自由意思に任される、(B)勉強が本人の自由意思に任されるならば(C)勉強が個人の趣味に沿った自主的なものになる、ゆえに(A)義務教育が廃止されるならば(C)勉強が個人の趣味に沿った自主的なものになる、といった具合である。

このような3段論法に対して反論したいときは、

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要約公開日 2016.07.19
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