弁護士の論理的な会話術

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弁護士の論理的な会話術
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弁護士の論理的な会話術
著者
出版社
出版日
2010年06月28日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

会議や交渉の場面で、話の筋が通っていないにもかかわらず、そのまま丸め込まれてしまった経験はないだろうか。人は、あたかも正しいことを言っているようで、実際は見当違いなことを言っている「論理の落とし穴」に陥りやすい。しかも、議論に夢中になってしまうと、その落とし穴にハマっていることさえ気づかないものである。だが、そのままでは相手にとって有利に話し合いを進められてしまうだけだ。そうならないためには、しっかりとした論理的な思考力を身につける必要がある。

著者は、企業法務、事業再生を得意とする弁護士であり、持ち前の論理思考を活かし、これまで数々の案件を担当してきた。だが、昔は議論にめっぽう弱く、何も言い返せないこともしょっちゅうだったという。そんな著者が変わったきっかけが、司法試験の勉強であった。以来、著者の論理的思考力はめきめきと伸びていき、議論に負けないための思考法が身についた。

論理的な思考力を鍛えるためのヒントは、弁護士の思考パターンにあるというのが著者の持論である。とはいえ、論理的な会話を学ぶために、私たちがわざわざ弁護士を目指す必要はない。本書を読めば、論理的な思考が苦手な人であっても、話し合いを有利に進めるための「論理」の扱い方を知ることができる。今なお、法廷という現場で活躍する著者の、論理的に考えるための「秘訣」は実践しやすいものばかりだ。意義のある議論を行いたいビジネスパーソンに、ぜひ読んでいただきたい1冊である。

ライター画像
流石香織

著者

谷原 誠(たにはら まこと)
「みらい総合法律事務所」パートナー弁護士。明治大学法学部卒業。企業法務、交通事故、不動産、倒産などの案件を主に処理する。読者数約1万7000人(2010年5月現在)のメールマガジン「弁護士がこっそり教える絶対に負けない議論の奥義」を発行。ブログも運営中。著書に『人生を思い通りに変える51の質問』『人を動かす質問力』(ともに角川書店)、『弁護士の論理的な決断術』(あさ出版)、『思いどおりに他人を動かす 交渉・説得の技術』(同文舘出版)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    論理的な思考力を身につけないと、非論理的な思考にダマされやすくなってしまう。また、自分自身が間違った理論展開をしないためにも、論理的思考力を養う必要がある。
  • 要点
    2
    議論で相手のペースに巻き込まれないためには、その根底にある価値観を見つけ出し、その部分に反論することが有効である。
  • 要点
    3
    議論で主導権を握るためには質問が効果的だ。質問には、「強制的に思考させる」「答えを出させる」という2つの力があり、しかも相手に強制させているという感覚を与えにくい。

要約

なぜ会話に論理力が必要なのか

人は非論理思考にダマされやすい
Big Cheese Photo/Big Cheese Photo/Thinkstock

世間では、筋の通っていない非論理的な主張をされているにもかかわらず、それに従ってしまう人が後を絶たない。なぜなら、そのような主張の多くは、一見すると筋が通っているように見えるため、誤りに気づきにくいからだ。

ハーバード大学の社会心理学者エレン・ランガーが行った実験は、そのことを端的に示している。ランガーが、コピー機待ちの列に並ぶ学生に対し、割り込ませてくれるように、「コピーするページが5ページあるんです。先に使ってもいいですか。実はコピーをとらないといけないので」とお願いしたところ、実に93%の学生が先にコピーをとらせてくれたという。

だが、よくこの頼み方を見てほしい。一見理由づけをしているようで、「コピーをとらないといけないからコピーをとる」と、当たり前のことを言っているだけである。

このように、人は簡単に非論理的な言葉に騙されてしまうものだ。そうならないためには、論理力を身につける必要がある。論理的に考える習慣が身につけば、相手の主張が妥当かどうかを吟味し、毅然と対応できるようになるはずだ。そのためには、表面的な言葉に惑わされず、その言葉の本質がどこにあるのか、着目する視点を養っていくことが重要である。

人は誰しも、主張を正当化したい

大抵の場合、非論理的な主張を行っている相手に、「それは非論理的だ」と指摘したところで、そのことを認めようとはしない。なぜなら、人は自分自身を守るために、たとえ強引な論理展開であっても、自分の主張を正当化したがるものだからだ。

実際、罪を犯し、裁判にかけられている被告人と話していても、本当に自分の行為を反省し、自分が間違っていたと素直に罪を認める人は稀である。表面上は反省の言葉を語っていても、よくよく話を聞いてみれば、自分の行動を正当化している場合がほとんどだ。

さらに、「一貫性の原理」という心の働きも、正しい議論を行う際に邪魔になってくる。一貫性の原理とは、はじめにとった行動や、表明した意見を、最後まで支持し続ける傾向を意味する。いったん議論を始めてしまうと、自説と自分とが同化してしまい、自説の誤りを認めることが、あたかも人間としての誤りを認めることのように感じられる。こうなってしまうと、もはや議論は正しい結論に到達するためのプロセスではなくなり、単なる自尊心を守るためだけの戦いになってしまう。

人は、それが実際に正しいか正しくないかにかかわらず、どのような結論を主張するときも、論理的であろうとするものだ。だからこそ、相手の間違った論理に反論し、正しい結論を主張するためには、正しい論理力を身につけることが必要不可欠なのである。

論理的な話し方をするためのテクニック

「3段論法」はあくまで道具
itchySan/iStock/Thinkstock

論理学の基本的な考えに「3段論法」というものがある。3段論法とは、「AならばB、BならばC、ゆえにAならばC」と展開していく方法だ。例を挙げると、(A)義務教育が廃止されるならば(B)勉強は本人の自由意思に任される、(B)勉強が本人の自由意思に任されるならば(C)勉強が個人の趣味に沿った自主的なものになる、ゆえに(A)義務教育が廃止されるならば(C)勉強が個人の趣味に沿った自主的なものになる、といった具合である。

このような3段論法に対して反論したいときは、

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要約公開日 2016.07.19
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