言葉力が人を動かす

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言葉力が人を動かす
出版社
東洋経済新報社
出版日
2012年03月08日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

世界第2位の建設機械メーカー、コマツで社長、会長職を務めた坂根正弘氏。米ハーバードビジネスレビュー誌の「在任中に実績をあげた実行力のある最高経営責任者(CEO)」トップ100の17位に選ばれたこともある名経営者だ。坂根氏は社長就任時、800億円の最終赤字にあったコマツを建て直し、驚異的なV字回復を達成した。改革の成功要因は何だったのか? それは、「見る」「語る」「実行する」を三位一体とする「言葉力」にあった。坂根氏の発する言葉に社員が耳を傾け、納得し、協力してくれたことが、成功の原動力だったという。

経営者やリーダーとしてチームを率いる者は、人心を掌握し、進むべき方向と各人の役割を言葉で示し、その言葉に心の底から納得してもらう必要がある。そのための道具は言葉しかない。あらゆる企業において、組織の舵取りに迷う局面が増えているであろう現在、言葉力はいっそう重要度を増している。

言葉力とは、決して口先のトークテクニックを指すのではない。人を動かすには、言葉を発する前に現実をよく「見る」こと、そして発した後にリーダー自身がその言葉を「実行する」ことまで求められる。行動を伴って初めて、その言葉に力が宿るのだ。

経営者や管理職、人材育成に携わる方にとって、本書が学びの宝庫であることは間違いない。坂根氏の経験に裏打ちされた教えを糧とし、実践することで、人を引きこむリーダーへの一歩を力強く踏み出せるのではないだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

坂根 正弘(さかね まさひろ)
コマツ(株式会社小松製作所)取締役会長、日本経済団体連合会副会長
1941年生まれ。島根県出身。63年、大阪市立大学工学部卒業、コマツに入社し、粟津・大阪工場でブルドーザーの設計を行う。71年品質管理課、81年小松アメリカ・サービス部等の勤務を経て、89年取締役、91年小松ドレッサーカンパニー(現コマツアメリカ)社長、94年常務取締役、97年専務取締役、99年代表取締役副社長、2001年代表取締役社長就任。
就任直後、創業以来初の赤字に直面するが、構造改革を断行し、翌期にはV字回復を達成。中国や東南アジア、アフリカなどの新興国にグローバル展開を進める。2007年代表取締役会長。2010年より現職。2008年デミング賞本賞を受賞。
著書に『限りないダントツ経営への挑戦』日科技連出版社、『ダントツ経営』日本経済新聞出版社。

本書の要点

  • 要点
    1
    事実・本質・大局を「見る」力と、リーダーが自分の言葉で「語る」力、そして、言行を一致させ実績を伴わせる「実行する」力の3つがそろったことで、社員の理解と納得、信頼が生まれ、コマツのV字回復につながった。
  • 要点
    2
    改革を成功させるには、リーダーは部分最適論の声にも配慮を示しつつ、全体最適を貫く必要がある。
  • 要点
    3
    リーダーは、全体を見て進むべき方向を示す「着眼大局」と、大局をめざすための具体的な一手を自分自身で示す「着手小局」を実践しなければならない。

要約

【必読ポイント!】 V字回復の軌跡:コマツを甦らせた言葉力

問題の本質は「固定費の高さ」にあった

人を動かすには、リーダーが自分の言葉で「語る」力だけでなく、事実・本質・大局を「見る」力と、言行を一致させ実績を伴わせる「実行する」力が不可欠だ。これらがそろって初めて、社員の理解と納得、そして信頼が得られる。「見る」「語る」「実行する」という視点から、コマツのV字回復の軌跡を振り返ってみたい。

人を動かす言葉の必要条件の一つは、その言葉が本質を突いていることだ。よって、事実を的確に「見る」ことが不可欠である。

コマツの経営が厳しい状況にあった90年代、社内外では「日本のものづくりは、海外より製造コストが高いために競争力を失った」という意見が主流だった。しかし、坂根氏は、コマツの問題の本質は、固定費の高さにあると見ていた。彼の分析によると、2001年時点で、米国の競合よりもコマツのほうが、固定比率が約6%重く、その分売上高営業利益率も6%程度低かったという。この事実を社員に突き付けたことで、「固定費を減らせばいい」という坂根氏の言葉に、誰もが耳を傾けるようになった。

「正しい危機感」の欠如という数字に表れない問題
Violka08/iStock/Thinkstock

坂根氏は、固定費削減策の一つとして、年齢や役職、業務内容を問わず希望退職を募った。本来、大幅な賃金カットで対応することも可能だった。しかし、坂根氏は固定費よりもさらに一段深いところにある、社員の「正しい危機感」の欠如という問題にメスを入れたいと思っていた。当時の社員の大部分は「業績悪化は、コマツが半導体関連事業に手を出しているせいだ」とし、本業である建設機械が赤字になりそうだという現実を直視していなかったのだ。

経営者は数字に表れない問題を見抜く力が求められる。なぜなら雇用が保証されているうちは、社員が本物の危機感を抱くことはないからだ。こうした確信を得た坂根氏は、危機感を社内に醸成するべく、全員一律に希望退職を募るという英断を下した。

希望を語り、犠牲にすべきものを明示する
kasto80/iStock/Thinkstock

坂根氏は希望退職を募る際、全社員に2つの約束をした。

1つ目の約束は「必ず2年以内に結果を出す」というものだ。人は進む先に光が見えていれば、多少は我慢できる。だからこそ、リーダーは出口の見通しを具体化する必要がある。坂根氏は、不採算事業の見直しなど、コスト削減を徹底した結果、約束通り2年後には成果を目に見える形にすることができた。

2つ目の約束は、「雇用に手をつけるのは、今回一度きりにする」という内容である。

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要約公開日 2016.07.28
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