バリアバリュー

障害を価値に変える
未読
バリアバリュー
バリアバリュー
障害を価値に変える
未読
バリアバリュー
出版社
新潮社
出版日
2016年03月18日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「あらゆる障害(バリア)は、価値(バリュー)に変えられる」。ユニバーサルデザインという広大な未開拓市場を見つけ、設立6年目にして年商2億円の企業へと成長してきた株式会社ミライロ。ミライロを学生時代に立ち上げた垣内氏は、骨形成不全症により、現在は車いすで生活をしている。車いすの高さ106センチの世界で生きているからこそ得られる視点を活かし、これまで冒頭の言葉を自身で体現してきた。垣内氏が提唱する「バリアバリュー」は、障害や短所、苦手なことを無理に克服しようとするだけでなく、それを価値や強みに変えるという発想だ。思春期の頃の彼は、歩けるようになりたい一心でがむしゃらに努力したものの、障害を克服できないことに絶望し、命を断とうとまで思い詰めた経験があるという。しかし、自身のバリアと向き合う中で、このバリアバリューの考え方を見出した。そして、仲間と起業し、日々奮闘しながらも、ユニバーサルデザインの革命児と呼ばれるまでに成長を遂げていった。

本書では、垣内氏の半生を振り返りながら、どのような課題意識のもとに事業を考え出し、軌道に乗せてきたのか、そしてバリューを育てるためにどんな習慣を大事にし、仲間たちとどうコミュニケーションをとっているのかが、力強くも感性豊かな等身大の言葉で綴られている。

ブルーオーシャンの見つけ方を知りたい人や起業を志す人はもちろん、「短所を長所に変えたい」という切なる願いを持つ人に、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。読んだ後には心が浄化され、勇気が湧いてくるにちがいない。

ライター画像
松尾美里

著者

垣内 俊哉(かきうち としや)
株式会社ミライロ代表取締役社長。日本ユニバーサルマナー協会代表理事。1989年生まれ、岐阜県中津川市出身。立命館大学経営学部在学中の2010年、(株)ミライロを設立。障害を価値に変える「バリアバリュー」の視点から、企業や自治体、教育機関におけるユニバーサルデザインのコンサルティングを手がける。2014年には日本を変える100人として、日経ビジネス「THE100」に選出される。2015年より、日本財団パラリンピックサポートセンターの顧問に就任。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者は車いすの生活やリハビリなどの経験を通じて、障害(バリア)や弱点を、価値(バリュー)や強みに置き換えるという「バリアバリュー」の思考法を身につけた。
  • 要点
    2
    株式会社ミライロは「ハードは変えられなくても、ハートは変えられる」というコンセプトをもとに、ユニバーサルマナー研修により、「意識のバリア」の突破をめざしている。
  • 要点
    3
    ビジネスでは、正しさや同情心を武器にせず、相手にとってのメリットや共感を大事にすべきである。

要約

バリアがバリューに変わるまで

自分のバリアに気づく

バリアバリューとは、「短所を長所に変えよう」という考え方である。著者の人生を振り返りながら、この思考法の生まれた背景を紹介していく。

著者は生後一カ月が過ぎた頃、骨が脆くなってしまう「骨形成不全症」だと診断された。幼稚園時代は歩けていたが、走って転んでは骨折し、何度も病院に担ぎ込まれていた。小学生になり学年が上がるにつれ、骨折で入院すると学校の勉強についていけなくなるため、著者は徐々に「歩かない」ようになっていった。すると、骨に圧力がかからないので骨の成長も止まり、5年生の頃には車いす生活を余儀なくされた。

そんなとき、担任の先生はこう言った。「今日、俊哉くんと遊んであげる人は誰?」まるで「かわいそうな子」と言われたかのように著者は感じた。思いやりゆえの発言に、5%は感謝の気持ちを抱いたが、残りの95%は怒りの感情で埋め尽くされた。「自分は『普通』ではない、自分は障害者なんだ」と、心の中にバリアが生まれた瞬間だった。幸い、彼の行き場のない怒りは、「どうすればみんなに一緒に遊びたいと思ってもらえるか」を考えるというポジティブなエネルギーに転換されていった。お笑い番組のネタを披露したり、女子トークにも参加したりすることで、思いがけずコミュニケーション能力が磨かれていった。

バリアと向き合う
shironosov/iStock/Thinkstock

高校時代、エレベーターも車いす用の昇降機もない校舎では、クラスメイトに車いすを運んでもらい、自分は階段を四つ這いで上っていたという。常に周囲の視線を気にし、誰かの手を借りなければいけない生活に、著者はほとほと疲れ切っていた。16歳の秋、障害を克服したいという思いが爆発し、高校を辞めて手術とリハビリに専念しようと心に決めた。三者面談の際、担任と親の前で彼は退学の必要性についてプレゼンテーションをする。あくまで、人生を好転させるステップだと強調したのだ。もちろん、両者から猛反対に遭うが、「退学ではなく休学」という条件付きで許可を得られることになった。

しかし、手術後の経過が思わしくなく、先生からは気の毒そうに「(歩くのは)簡単ではないだろう」と告げられた。著者はその夜、絶望のあまり、自ら命を断とうと決めたが、彼の足では屋上の柵をよじ登ることすらできなかった。

毎晩のように泣き明かしながら入院生活を送っていると、ある日、富松さんというおじいさんと話をする機会を得た。「具合がよくないのか?」と富松さんに尋ねられ、堰を切ったように著者は思いの丈を吐露した。富松さんの返事はこうだった。「君はちゃんと登り切った先の景色を見たのかい?」

リハビリを始めてまだ3ヶ月。「もう一度チャレンジしてみよう」と背中を押された瞬間だった。

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要約公開日 2016.07.24
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