女子高生と学ぶ稲盛哲学

豊かな社会と人生の方程式
未読
女子高生と学ぶ稲盛哲学
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豊かな社会と人生の方程式
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女子高生と学ぶ稲盛哲学
著者
出版社
出版日
2015年12月07日
評点
総合
3.0
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

稲盛和夫氏は京セラや第二電電(現KDDI)の創業者にして、経営破綻した日本航空(JAL)を見事に立て直した功績も持つ、日本を代表する経営者のひとりだ。

本書は、その稲盛氏の思想や実践を「社会哲学」という観点から、「女子高生への講義」というスタイルで教える一冊となっている。女子高生への講義というスタイルにしたのは、内容をわかりやすくさせるという意図もあるが、高校生がまだ社会を知らず、また人間関係の悩みが深くなる思春期であるため、社会哲学を説くにはもってこいの対象だからだという。

著者は「稲盛氏の思想と実践は個人の体験の域を超え、社会全体に大きな影響を及ぼす『社会哲学』になっている、と感じている」と述べている。破綻した会社が、再建はおろか上場まで果たすというのがいかに困難なことかを踏まえたうえで、その裏にある稲盛哲学の存在に着目したというわけだ。そして、現代社会に多大な影響を及ぼした2つの伝統的社会哲学「自由至上主義」と「社会自由主義」との比較から、稲盛哲学ならその2つの哲学が抱える問題点をも克服できるとまで説いている。

本書では、その哲学をどう活かすべきかという具体的な手法は書かれていない。しかしその有効性は、稲盛氏のこれまでの実績を鑑みればおわかりだろう。すぐには目に見える成果につながらないかもしれないが、困難に直面したときや、仕事や人生に悩んだときに、指針となりうる知見が本書には詰まっている。稲盛氏の書籍をまったく読んだことがない人にも、よく読んでいる人にもお薦めの一冊だ。

ライター画像
下良果林

著者

高 巖(たか いわお)
麗澤大学大学院 経済研究科 教授
1956年大分県生まれ。85年に早稲田大学商学研究科博士課程を終え、95年に博士号取得。20代で稲盛和夫氏の思想と実践に強い関心を持ち、「企業家の信念体系と組織の急成長:京都セラミックの場合」を著す。その後、米ペンシルベニア大学ウォートンスクールで企業倫理を学び、帰国後は政府審議会委員などを務め、2008年全米企業倫理コンプライアンス協会(SCCE)より国際倫理コンプライアンス賞を受賞。2007年4月から7年間、京都大学経営管理大学院・京セラ経営哲学寄附講座で教鞭をとると同時に、稲盛哲学研究を深める。おもな著作として、『H・A・サイモン研究』(文眞堂)、『誠実さを貫く経営』(日本経済新聞社)、『コンプライアンスの知識』(日本経済新聞出版社)、『ビジネスエシックス{{企業倫理』(日本経済新聞出版社)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    自由至上主義は、所得や富の分配は市場に委ねたが、その結果として格差を生じさせた。自由至上主義の欠陥を是正すべく登場した社会自由主義は、政府や国が富の分配に偏りがないよう措置を講じるべきとした。しかしどちらも人をバラバラの個人として考えているところに欠点がある。
  • 要点
    2
    稲盛哲学では、人を個ではなく関係の中に存在するものとして考える。そして、関係の中で自分が正しくあるかどうかを自問することを重視し、所得や富はその関係の中で分配されるべきだとしている。これは、長期的な視野で「豊かさ」を得るための思想であるといえる。

要約

「伝統的社会哲学」の問題点

自由至上主義が格差を生んだ
shutter_m/iStock/Thinkstock

Orderという言葉は、「秩序」という名詞であるのと同時に、「命令」を指す動詞でもある。このことからも察せられるように、古くから「命令があるから秩序ができる」と考えられてきた。しかし17世紀以降、ヨーロッパでは市民革命により、それまでの封建制度は瓦解した。それは秩序の源を、市民が自らの手で絶ったことを意味した。

その後、新たな秩序として生まれたのが「功利主義」と呼ばれるものである。功利主義とは、幸福の中身を誰からも強制されず各自で決めてよいとするもので、当時の市民には拍手喝采で迎えられたが、そこには大きな落とし穴もあった。というのも、功利主義は「幸福の分配」に触れず、多数派の満足が増すのであれば少数派の不利益は考えなくてもよいとしたからだ。

功利主義を是正するべく生まれたのが、少数派の自由や利益まで考慮し、所得や富の配分について明確に示した「自由至上主義」である。自由至上主義では、あらゆる取引は「政府」でなく、財やサービスの交換の場である「市場」にゆだねればよいとされた。また、自由至上主義では、一人ひとりを努力に応じて評価することで、結果として社会の中に「正しい配分」が実現すると考えられた。

また、自由至上主義も功利主義と同様に、なにか特定の価値を「よきもの」として提唱することを避けた。

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要約公開日 2016.07.23
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