デジタル・ジャーナリズムは稼げるか

未 読
デジタル・ジャーナリズムは稼げるか
ジャンル
著者
ジェフ・ジャービス 夏目大(訳) 茂木崇(監修)
出版社
東洋経済新報社
定価
2,200円 (税抜)
出版日
2016年06月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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デジタル・ジャーナリズムは稼げるか
著者
ジェフ・ジャービス 夏目大(訳) 茂木崇(監修)
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出版社
東洋経済新報社
定価
2,200円 (税抜)
出版日
2016年06月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
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レビュー

誰もが情報の送り手となれる時代において、多くの報道機関が経営悪化の一途をたどっている。マスメディアはどうすれば生き残れるのか?

本書は、起業ジャーナリズムを標榜し、ニューヨーク市立大学大学院ジャーナリズム学科で教鞭をとるジェフ・ジャービスが、ジャーナリズムの危機をどう乗り越えるかという課題に立ち向かった意欲作だ。起業ジャーナリズムとは、新しい、持続可能なジャーナリズムの会社を立ち上げ、運営することを指す。

著者によると、ジャーナリズムは「公共奉仕」をミッションとしつつも、今後は「人間関係ビジネス」の様相を呈していくという。ジャーナリストは、サービスの提供者、プラットフォーム構築者、社会のまとめ役といった多様な役割を担うようになる。そのため、市民を「マス」ととらえるのではなく、一人一人のニーズを細やかに把握する必要があると述べている。さらには、「ジャーナリストはコンテンツクリエイターではない。人々の下僕になれ。」といった刺激的な提言が所狭しと並ぶ。同時に、記事を「サービス提供のためのツール」ととらえ、キュレーション、プラットフォーム、エコシステムなどの概念を紹介し、新しい時代のニュース・サービスのあり方を考察している。

激流が渦巻くメディアの集積地ニューヨークから見える「メディアの未来図」が描かれた本書が、あらゆるメディアに関わる人にとっての必読書であることは間違いない。

松尾美里

著者

ジェフ・ジャービス
Jeff Jarvis
ニューヨーク市立大学大学院ジャーナリズム学科教授。メディア事業、ジャーナリズムの未来に関する論客として注目を集めており、メディアとコミュニティの新たな関係について頻繁に発言している。メディア/テクノロジー関連でもっとも高い人気を誇るブログのひとつ Buzzmachine.com を運営している。2007~2014年の世界経済フォーラムでは、「世界のメディア・リーダー100人」の一人に連続して選ばれている。著書に『グーグル的思考』(PHP研究所)、『パブリック――開かれたネットの価値を最大化せよ』(NHK出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    今後メディアに携わる人にとっては、ユーザーと人間関係を構築するスキルが必須となる。
  • 要点
    2
    ジャーナリズムはサービス業となり、コンテンツはジャーナリストの提供するサービスやコミュニティで用いるツールの一つとなる。
  • 要点
    3
    報道機関の役割は、「コミュニティのまとめ役」となっていく。ジャーナリストは、民衆の利益になるかという点を第一義に、報道の有無を判断しなければならない。
  • 要点
    4
    メディア企業は、特定の分野や地域に集中し、徹底的に効率を求める必要がある。

要約

【必読ポイント!】 ユーザーとの新たな関係の始まり

メディアの成功をどう測るのか?
macgyverhh/iStock/Thinkstock

国民が一斉に同じメディアを体験する時代は、もはや過去のものとなった。インターネットの台頭により、大勢を「マス」ととらえる概念自体が崩れ去ったのだ。ところが、マスメディアの多くは、個々の顧客が何に興味を持ち、何を必要としているかという情報を集める手段を持っていない。ネット上ですら、ページビューといったマスメディアの既存の基準でメディアの成功度合いを測り続けている。

著者によると、今後メディアに携わる人に不可欠なのは、ユーザーと人間関係を構築するスキルだという。ユーザーの住所や勤務地、興味の対象といった情報を得られれば、個々人に、よりふさわしいサービスを提供し、より適切な広告を提示できるようになる。そのためには、相手が個人情報を明かしたくなるような、価値あるサービスを提供し、ユーザーと信頼関係を築く必要がある。その先駆的存在であるグーグルは、メール、地図、ドキュメント、ユーチューブなどのサービスを無料提供し、その価値を高めている。

ローカルのオンラインニュースサイトを例にとろう。ユーザーの声から、がん患者が多数いるとわかれば、がん専門医のブログやがん患者のコミュニティをサイトに加えるなど、よりユーザーにとって優先度の高い情報を提供できる。今後のメディアが生き残るには、ユーザーとの関係性を強化し、得られた情報の分析をもとに、サービスを向上させなくてはならない。

これからのメディアの成功を測る尺度は、発行部数やページビューといった「匿名の人をいかに集めたか」ではなく、「個々の顧客、ユーザーとどれだけ良好な関係を築けたか」になるだろう。具体的な指標は、ユーザーが個人情報を提供してでも利用したいサービスがあるか、集めた情報をユーザーの利益のためにどれだけ利用できているか、情報を自社の広告料や利用料の増加にどれだけ役立てられているかなどになるはずだ。あくまでジャーナリズムの追求すべき価値は、利用者の目標達成に役立つことなのである。

コンテンツクリエイターでは生き残れない
Mihajlo Maricic/iStock/Thinkstock

ジャーナリストが自分のことをコンテンツクリエイターだと見なしてしまうと、つくったものを自分の所有物だと考えがちになる。しかし、コンテンツをつくるだけでは、ジャーナリストという職業は成り立たない。今後ジャーナリズムはサービス業となり、コンテンツはジャーナリストの提供するサービスやコミュニティで用いるツールの一つとなるだろう。

今や、一般の人でも第三者を介さずに直接コミュニケーションができる時代だ。ジャーナリストに求められるのは、情報を入手し、他者とコミュニケーションできる場を提供することである。そのためには、ツイッターやフェイスブック、アメリカ最大級のソーシャルニュースサイトのレディットなど、既存のプラットフォームを活用するのが有効だ。その際、ジャーナリストは「読者は自分よりものを知っている」という前提に立つことが必要となる。現に、コンテンツの受け取り手が制作過程にも関わる動きも始まっている。

しかし、コミュニティ内のやり取りだけでは必要な情報が得られるとは限らない。そこでジャーナリストの出番となる。ジャーナリストは専門家や関係者への取材を通じて、誰も答えられない問いに答えたり、断片的な情報を体系化したり、情報の重要度や信ぴょう性を選別し、知らせたりする役割を担うのだ。さらには、実りある議論のためのイベントの開催や、情報を活かした活動の支援といったスキルも活かせるだろう。

従来のように、情報の出口に門番のように立ち、どの情報を流すかを独占的に決めるのは不可能である。むしろ、今後は情報の入手は一般の人々に委ね、ジャーナリストは情報に付加価値をつけることに注力すべきだと著者は説く。

このように、ジャーナリストと一般の人々との関係性は様変わりする。すると、人々の声に耳を傾けることがますます重要となり、その手段として、考えや知識を共有し合えるプラットフォームの構築が必要となるだろう。つまり、人々の提供する情報を整理し、わかりやすく提示し直すのがジャーナリストの役割となる。ジャーナリズムとは、コミュニティの知識の体系化を助ける仕事なのである。

生き残るための秘策は「協調」

20世紀後半のアメリカでは、報道は垂直統合型の寡占産業だった。それが可能だったのは、コンテンツをつくり、流通させるための資源の「希少性」による。しかし、デジタル化によって、情報提供においてメディアの仲介や審査が不要となった現在、かつてのメディアの事業は縮小せざるを得ない。

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