小さな会社の幹部社員の教科書

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小さな会社の幹部社員の教科書
出版社
出版日
2015年11月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「小さな会社の幹部社員」向けと聞くと、ニッチをねらった本に思えるかもしれない。しかし、「2015年版 中小企業白書」によれば日本のすべての企業に占める中小企業の割合は99.7%であり、その幹部社員ともなるとかなりの人数に違いない。また、中小企業の社長の99%は幹部社員へ何らかの不満を持っているのだとか。その理由を明らかにしつつ、幹部社員が上司として、社長の右腕として、そして未来の後継者としてどう心がけ、どう振る舞うべきかを丁寧に説いているのが本書だ。

著者の井東氏は、銀行に就職しエリートの道を歩むも、大企業ならではの意思決定の遅さやダイナミズムの欠如に物足りなさを感じ、規模は小さくても経営に携わりたいと転職した。そこから中小企業を支援し再生させる、まさに奮闘の日々が始まったのだそうだ。著者は、不況の荒波に揉まれつつも大企業に立ち向かう中小企業を支援するという使命感に燃えた。担当企業が大企業との業務資本提携を直前に断られ涙した経験もあれば、無謀な事業拡大を繰り広げる企業の社長に「このままでは御社は潰れる」と啖呵を切った経験もあるという。

このようにして中小企業を支援してきた著者が説く幹部社員のあり方は、企業の大小に関わらず、ビジネスパーソンにとって、人材価値を圧倒的に高めるための有用な助けとなるはずだ。

ライター画像
下良果林

著者

井東 昌樹(いとう・まさき)
1967年生まれ。東京大学教育学部卒業後、90年三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。東京・上野支店やシンガポール支店、本部勤務などを経て99年に退職し、中堅アパレル会社に転職。赤字に陥った直営店部門の実質的な運営責任者となり、1年で黒字化を果たす。2005年、経営不振に陥った上場外食チェーンに入社し、取締役として再生に奔走。07年、会計事務所系コンサルティング会社の主席コンサルタントに就任。過剰在庫に苦しむ上場不動産会社の再生支援などを手掛ける。09年研修会社インソースに入社。10年取締役営業本部長に就任し、社長に約束した「3年で売上高2倍」を達成。11年「中小企業のための『経営幹部講座』」を企画。自ら登壇し人気シリーズに育てる。

本書の要点

  • 要点
    1
    中小企業の幹部社員に必要なスキルは「戦略的視点」、「マネジメント力」、「数字力」の3つである。
  • 要点
    2
    自社のビジョンを実現するための道筋を示すのが「中期経営計画」の役割であり、計画を立てる際には、外部環境と内部環境の両面から自社の現状を捉えることが必要だ。
  • 要点
    3
    マネジメントにおいては、「ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を上手に配分し、有効活用すること」と「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回すこと」が重要である。
  • 要点
    4
    幹部社員は、売上とコスト、そこから生まれる利益の3つに最大限の注意を払わなければならない。

要約

中小企業の幹部社員が心得ておくべきこと

幹部社員が抱える問題点

中小企業の社長が理想とする「頼れる右腕」「後継者を支える参謀」とは、社長の思いや考えを理解し素早く行動に移せる人物を指す。しかし、そのような人物はめったにおらず、ほとんどの社長は幹部社員に不満を抱いている。

具体的な問題点は、幹部社員が目の前の業務で手一杯になってしまい、その結果「会社全体を見る」という大局的な視点を養っていない点である。つまり、社長と理念や価値観を共有し、会社全体の経営状況や業界動向、市場環境などを俯瞰的に把握したうえで具体的な指示を出すことができないのだ。もちろん、組織体制が万全で分業化が進んでいる大企業とは異なり、中小企業の社員はえてして「何でも屋」になりがちだ。しかし、幹部社員たるもの、自社の全体像くらいはスムーズに説明できなくては困る。経営者的な視点を持ち、自社の置かれている状況から自分たちの業務の課題を割り出していく力を身につけることが重要だ。

さらに幹部社員の他の問題点として、「自律的に動けない」という点が挙げられる。中小企業の大多数はオーナー企業であり、時に強すぎるリーダーシップから「自分の言うとおりにしろ」「社長である自分のやり方に従うのが当然」と考えがちだ。そのため、自分の頭で考え、判断できる社員が育たなくなってしまう。そのような指示待ち社員が幹部になったのでは、組織としての成長は見込めない。

幹部社員として求められる3つの条件
cherezoff/iStock/Thinkstock

多くの問題を抱えた中小企業において、社長の右腕として会社を正しく導く幹部社員になるには、どのような条件が必要となるのだろうか。

先述した「全体を見ること」は「戦略的視点を持つこと」に、そして「自律的に動くこと」は「マネジメント力を発揮すること」にそれぞれ置き換えられる。そしてもう1つ、幹部社員に欠かせない条件が、戦略とマネジメントを支える「数字力」だ。川上で構築した戦略を川下で実行する際の底流には常に数字がある。しかし、「会計や簿記を習ったことがない」と案ずるには及ばない。見るべき数字は「売上」「コスト」「利益」の3つだけであり、「売上-コスト=利益」というシンプルな数式を頭に入れておけばいい。利益を増やすには「売上を伸ばす」か「コストを下げる」か、もしくはその両方をやるしかない。「額」や「率」をもとに数字を探ることで、会社や部門の課題を抽出し、売上や利益向上の施策を考え出すことができる。

中小企業の幹部社員の多くは、数字が経営の土台であるという意識に欠けているため、数字に無関心になりがちだ。しかし、幹部社員こそ、きめ細かく数字を見る必要がある。

最後に、「戦略的思考」「マネジメント」「数字力」という3つの条件を意識しながらも、幹部社員は部下から信頼される「人間力」も備えておきたい。人一倍、頭と体を使い、気合いと根性を持って仕事に向き合っている上司になら、部下はついていこうと考えるだろう。さらに、これらの要素は、あらゆる組織を率いるリーダーに必要なリーダーシップと、ほぼ同義なのである。

幹部社員に必須の「基本的なものの考え方」
IvelinRadkov/iStock/Thinkstock

ここでは、小さな会社の幹部社員が持つべき「基本的なものの考え方」を紹介する。

京セラを創業した稲盛和夫氏は「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という、素晴らしい人生を送るための方程式を説いている。そして、この「考え方」がマイナスなら、掛け合わせた結果がマイナスになってしまうとしている。よって、仕事に臨むときの正しい考え方や心構えを持つことは大前提となる。

著者が幹部社員に心掛けてほしいと考えている心構えは次の3つである。

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要約公開日 2016.08.22
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