社員100人までの会社の「社長の仕事」

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社員100人までの会社の「社長の仕事」
出版社
かんき出版

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出版日
2015年07月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

いわゆる大企業と中小企業では、経営者の仕事の要諦は異なる、と著者は言う。中小企業が安定した経営を行い、右肩上がりに成長していくために、大企業向けのノウハウが書かれた経営指南書のやり方を真似ても、思うような効果は得にくいだろう。

著者は、公認会計士としてこれまで多くの中小企業経営者と接してきた。また、著者自身が代表を務める古田土会計もまた中小企業であるが、創業以来赤字ゼロ、33期連続増収を続けており、日本有数の優良会計事務所のひとつに数えられていえる。著者がそうした経験のなかから見出した、社員数100人までの会社の社長がなすべき仕事とは、「経営理念・ビジョンを明確にして浸透させること」「社員が一丸となれる施策を打ち出し、がんばって働ける環境を整備すること」「会社の収益構造を正しく認識し、事業を通してお金を稼ぎ、会社にお金を残すこと」の3つだという。

本書は、そうした点を実現させていくための、古田土会計とその顧客も活用するさまざまなツールを紹介しつつ、中小企業の「社長の仕事」の本質に迫っていく。印象に残るのは、社長は、社員とその家族の幸せを一番に考え、会社に利益を残すことだという著者の信念だ。また、そのために必要な、会社にとって大事な数字の見方がかなり詳しく解説されているので、じつは数字にあまり自信がない……という経営者の方々には、ぜひご一読いただきたい。

ライター画像
下良果林

著者

古田圡 満(こだと みつる)
公認会計士・税理士。税理士法人古田土会計(注:著者名「古田圡」と異なり、法人名称は「古田土」)代表社員。1952年生まれ。法政大学卒業。「中小企業の経営に役立つことこそ、会計事務所としての社会的使命」が持論。
「数字はこうあるべき」という理論のみで顧問先を指導するのでは説得力がないと考え、自ら顧問先の手本になるべく、「月次決算書」と「経営計画書」のPDCAを全社員で徹底的にまわし、「教える」でなく、「見せる」スタンスで顧問先と向き合っている。
創業以来33年連続の増収、赤字は一度もなく自己資本比率90%、クチコミだけで年間180件の新規顧客がくる日本有数の優良会計事務所を経営。2015年の顧問先数は1950社以上、さらに全国の会計事務所300法人を指導。「月次決算書」による会計指導と「経営計画書」の作成指導は業界内でも有名。また2014年に士業界初の経済産業省『おもてなし経営企業30選』に、2015年には『がんばる中小企業300選』に選ばれ、2014年には障がい者を率先して雇用し、その能力の活用に積極的な民間企業に与えられる『東京都障がい者雇用優良企業』に、厚生労働省からは『精神障がい者雇用優良企業』に認定されている。おもな著書に『掃除、挨拶、計画で会社は儲かる』『CD-ROM付 ドロくさいけど必ず結果が出る!経営計画のつくり方』(ともにあさ出版)、『中小企業は行列のできるラーメン屋を目指せ!』(秀作社出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    社長は「顧客満足」よりも「従業員満足」を第一とすべきだ。社員に「この会社で働くことが、私の幸せだ」と思ってもらえれば、会社のためにがんばろうという姿勢が生まれ、それがやがて売上・利益につながる。
  • 要点
    2
    経営の理念・ビジョンは、一人ひとりのやるべき行動にまで落とし込み、社長以下全社員で共有すべきだ。
  • 要点
    3
    売上・利益の数字だけにこだわりすぎず、自社の収益構造を把握し、どう改善すればもっと利益が見込めるのかを考えることが重要だ。
  • 要点
    4
    「黒字なのに会社にお金が残らない」とならないよう、社長は現金預金のお金の性質には注意し、会社の財務体質の理解と改善に努めるべきだ。

要約

【必読ポイント!】中小企業経営の原理原則

社長の理念は「社員第一主義」
Jirsak/iStock/Thinkstock

社長以下、全社一丸となって「顧客満足」を掲げている企業は少なくない。ただ、社員が「顧客満足」を第一に追求するのはいいが、中小企業の社長としては「従業員満足」を第一とすべきだろう。

大企業に比べて資源が少なく、社員の会社に対するロイヤリティも弱くなりがちな中小企業であるからこそ、社員を大切にし、その家族を守り、幸せになってもらえるような経営が望ましい。社員に「この会社で働くことが、私の幸せだ」と思ってもらえれば、会社のためにがんばろうという姿勢が生まれ、プラスのスパイラルとなる。そうすると、毎期着実に売上と利益を伸ばすことができる。

企業は利益を追求するものだが、中小企業の場合、その利益とは、「社員とその家族を守るためのコスト」だと定義づけられる。税引き後の利益である内部留保の多い少ないは、不況や貸し倒れなどのリスクにどれだけ対応できるか、社員を守れるか、ということに直結する。

著者が代表を務める古田土会計には、総勢160名のスタッフがおり、無借金で10億以上の預金残高がある。万一、社員の家族が病気になって医療費の捻出に困ったとしても、会社が1億くらい貸せるということを、社員にも伝えているという。さらに、経理も代表の給料も社員に公開しているため、社員はみな経営状態を把握し、安心して働いている。そのことがプラスに働き、古田土会計は、33期連続増収、赤字は一度もないという。

社員一丸となって、正しく稼ぎ、利益を残す

社員の努力は、成果となって「損益計算書」に現れる。そして、社長が、その稼いだ利益をどのように経営に活用する判断をしてきたかは、資産状態を表す「賃借対照表」で見ることができる。賃借対照表が健全であることは、強い財務体質の証でもある。社長には、中長期的な視点で、賃借対照表を良くしていくことが求められる。同時に、安定成長のためにはいくら利益を獲得する必要があるのか、そのためにいくらの粗利益や売上が必要になるのか、と、未来志向的に考えて、予算を策定していくことが大切だ。

こうして、社長がやるべきことをやり、「社員第一主義」を念頭に置いて、進む方向を皆で共有すれば、中小企業は必ず成功する。

社員と心をひとつにするための「経営計画書」

経営の目的を明確にする
TLFurrer/iStock/Thinkstock

全社一丸となって経営にあたるために、著者が勧めるのは、「経営計画書」の作成と活用だ。成長を続ける古田土会計でも、毎年「経営計画書」を作っている。

経営計画書は「方針編」と「諸表編」とに分かれる。「方針編」では経営理念、経営ビジョン/経営の基本方針/中期事業計画/長期事業構想/当期の経営目標/個別方針を決め、会社の存在意義を明らかにし、そのための未来を描く。「諸表編」では、短期利益計画を、個別の目標数値まで落とし込む。経営計画書の大きな目的は、社員一人ひとりのとるべき行動を、社長以下社員全員で共有することだ。

とくに経営理念を書く際に気をつけたいのは、「社員の幸せ」「顧客の幸せ」「社会貢献」を記し、なかでも社員に関することを一番目に表現することだ。社長だけ、会社だけが幸せになる、という未来像を描いても、社員は絶対に努力しようとはしないだろう。

3~5年先の目標を中期事業計画で定めたら、その1年目の目標数値が当期経営目標となる。

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要約公開日 2016.07.29
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