これが「買い」だ

私のキュレーション術
未読
これが「買い」だ
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私のキュレーション術
著者
未読
これが「買い」だ
著者
出版社
新潮社
出版日
2016年04月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「逆張りで実利を手にせよ」。本書で提唱されている「逆張り」とはもともと、株価が下がっているときに買い、上がったときに売る投資方法を指す。これになぞらえ、時代の流れにあえて逆らい、人が選ばないことにお金や時間をかける人物を「逆張りタイプ」という。

人気書評サイトHONZを主宰する著者の成毛氏は、筋金入りの「逆張りタイプ」だ。マイクロソフトの社長を務めていたものの、世間がITを声高に叫び始めた2000年にその職を辞したのは、逆張りを見事に表しているといえよう。逆張りタイプは、世間の美徳など一向に気にせず、すぐに値上がりの期待できない玉に命を賭す。結果がすぐに出なくても焦らずにどっしりと構える度胸がいるうえに、失敗すると損も大きいため、ハイリスクハイリターンだといえる。しかし長い目で見れば、人と違う道を行くアマノジャクは、仕事でも趣味でも、得をすることが多い、というのが成毛氏の持論だ。

本書では、そんな成毛氏が実践してきた最先端IT機器やアプリ、住まいの選び方から、SNS活用法、接待手段、ニュースの見分け方まで、本物を見極める方法を惜しげもなく披露する。アマゾンの舞台裏をつく、情報断食をしてみる、本棚とスマホは脳を映す、IT化できないところを見出す、英語より歌舞伎を学ぶ。成毛氏の取り上げるネタは実に興味深いものばかりだ。成毛流キュレーション術の極致をとくと味わってみてほしい。あなたの見識が広くなり、人生を彩る選択肢が一気に増えることを約束する。

ライター画像
松尾美里

著者

成毛 眞(なるけ まこと)
1955(昭和30)年北海道生れ。中央大学卒業後、自動車部品メーカーなどを経て、1986年マイクロソフト株式会社に入社。1991(平成3)年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は早稲田大学客員教授、スルガ銀行社外取締役ほか、書評サイト「HONZ」代表を務める。著作に『面白い本』『大人げない大人になれ!』『ビジネスマンヘの歌舞伎案内』『メガ! 巨大技術の現場へ、ゴー』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    成毛氏が辞書や事典、名言集を愛読しているのは、脈絡のない言葉を一時的に吸収し、頭の中を混沌とさせるためだ。雑多な知識や情報を整理せずに入手し続けていると、何か専門性を磨くときに役立つ、広く浅い土台ができる。
  • 要点
    2
    接待を成功させるポイントは、相手に、忘れられない強烈な経験をしてもらうことだ。
  • 要点
    3
    外国人との関係を深めるには、英会話教室に通うことよりも、歌舞伎を見に行き、伝統文化について外国人に説明できるようになることのほうが重要だ。

要約

情報の取捨選択術

フェイスブックを活用する

成毛氏にとって、フェイスブックはプロジェクト管理のツールであると同時に、思いついたことを投稿し、読者の反応を得るツールでもある。成毛氏のフェイスブックにはフォロワーが約2万人いる。彼の投稿に対する「いいね!」やシェア、コメントといった反応を、興味を引きそうなテーマを知るためのマーケティングの材料にしているのだ。

こうした活用をするには、反応してくれる母集団を集めることが必要だ。そこで成毛氏はフォロワーを増やすため、日頃から、読み手に関係のない私的な投稿は避け、面白いニュースに面白いコメントをつけて投稿している。

また、投稿内容とは大幅にずれたコメントをしてきた相手は、ブロック機能を使ってフェイスブックページ上に表示されないようにしているという。コメント欄は放っておくと、質が下がってしまうからだ。フェイスブックも、名刺の整理や革靴の手入れ同様、メンテナンスが欠かせない。

【必読ポイント!】 本を読むことのプラス

本は目で楽しむ
m-ikeda/iStock/Thinkstock

成毛氏は1カ月に30冊以上の本を読む、いわば本の虫だ。ただし、成毛氏は「目で見て楽しめること」を本選びのこだわりの一つとしているため、買う本の4分の1は図版が豊富な本や写真集である。例えば、将軍徳川家茂の上洛を描いた浮世絵集や、博物学の巨人による菌類のスケッチ集などだ。絵や写真を眺めながら、その背景を読み解き、共感を寄せるのだという。

もう一つの成毛氏のこだわりは、タイトルの巧みさや書体なども含めた、本の背表紙である。本棚に並べたときに目に飛び込んでくるからだ。背表紙の色が多様で、絶妙なバランスが保たれた本棚を理想としている。

日本の書店は、大まかに言って次の3タイプに分かれる。商店街などで新刊本や雑誌を並べる昔ながらの「町の本屋さん」、抜群の品揃えを誇る、紀伊國屋書店や丸善、ジュンク堂などの「大型店」、そして、アイデアで勝負する「個性派書店」だ。「個性派書店」は、新本・古本を問わず、コンセプトに沿った本を並べたり、ビールを出したり、読書会などで顧客との接点づくりを強化したりするなど、多種多様なコンセプトを打ち出している。

最近では、ネット書店が活況を呈する中、直接本にふれられる本屋が減っている。しかし、どんなにネット販売が普及しても、リアルな書店は求められている。現に、本屋がすべて廃業した市で、市民が大手書店チェーンを誘致するという事態も起きている。実際に本を手に取りたくなるような棚づくりが、本好きを引きつけるのに役立つと成毛氏は説く。

辞書や名言集で頭の中に混沌を生み出す

普段はお目にかかれない業界用語ばかりを集めた『隠語大辞典』や『集団語辞典』。成毛氏が辞書や事典を愛読する理由は、それらが未知の詰まった最高の読み物だからだ。成毛氏は小学生の頃から、毎晩のように『日本百科大事典』を、ひらがなの「あ」から順に読んでいたという。辞書や事典を開くと、自らは調べようとしない、あるいは調べようと思いつかない知識に出合うことができる。同様の意図から、先人たちの名言集も読んでいる。彼らの脈絡のなく、勝手気ままな言葉を一時的に吸収し、頭の中を混沌とさせるのが目的だ。

雑多な知識や情報を、整理せずに入手し続けていると、広く浅い土台ができる。その後「これぞ」と思うテーマが見つかったときに、その土台が集中的に専門性を高めるのに大いに役立つ。また、人間は年を取るにつれ経験に縛られるため、発想が凝り固まらないよう、雑多な知識の中に身を置く努力が大事になるのだ。

本棚とスマホは脳を映す
Ingram Publishing/Thinkstock

成毛氏は本もスマートフォンのアプリも、整理された状態を保つことを意識している。

まず、本棚を歴史やサイエンスなどと、ジャンルごとに区分することで、本探しを楽にしている。区画の大きさはジャンルごとに決まっているので、手狭になると本棚から退場させる本を決める、いわば棚卸しをするのが習慣だ。その際の基準は、

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要約公開日 2016.08.31
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