アリエリー教授の人生相談室

行動経済学で解決する100の不合理
未読
アリエリー教授の人生相談室
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行動経済学で解決する100の不合理
未読
アリエリー教授の人生相談室
出版社
出版日
2016年05月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

人は、仕事や私生活で問題を抱えると、どのように行動すれば状況を改善できるのか、思い悩み、その答えを見つけるために、誰かに相談を持ちかけるものだ。その意味で、本書の著者であるダン・アリエリー教授は、相談相手としてふさわしい人物の一人かもしれない。というのも、著者は長年、個人の意思決定や人間関係をテーマにとり、行動経済学の分野を開拓しつづけてきた人物だからだ。また、学術論文だけでなく、一般向け書籍の執筆にも熱心に取り組んでいる。

本書は、ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されているコラム「アスク・アリエリー(アリエリー先生に聞いてみよう)」を、加筆修正し、新たにまとめなおしたものである。著者に寄せられた質問は、「転職したら幸せになれる?」「人に頼まれると断れない」など、仕事やキャリアに関するものから、「結婚する意味がわからない」「娘の新しい彼氏が気に入らない」など家族や夫婦関係に関するもの、「割り勘の一番いい方法は?」「食べ放題は何から食べるべき?」など、少し笑ってしまうようなものまで多岐にわたる。

いずれの質問に対しても、著者の回答は明確だ。例えば、「就職前に冒険してみたいけど」という質問について、「問題は、いつキャリアをはじめるかじゃない」と言い切り、本当に考えるべき「問題」は何かを整理するよう提案する。著者のウィットを楽しみながら、リラックスして読んでいただきたい一冊だ。

ライター画像
河原レイカ

著者

ダン・アリエリー (Dan Ariely)
デューク大学教授。過去にマサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院とメディアラボの教授職を兼務したほか、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン高等研究所などにも在籍。また、ユニークな実験によりイグ・ノーベル賞を受賞している2014年4月にはNHK Eテレ「お金と感情と意思決定の白熱教室」に出演して話題を呼ぶ。著書に、『予想どおりに不合理』『不合理だからうまくいく』『ずる』『お金と感情と意思決定の白熱教室』(以上早川書房刊)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    頼みごとを引き受けるかどうか判断に迷った場合は、その予定を入れてみたときのことを想像し、自分がどう感じるか観察してみるべきである。
  • 要点
    2
    直接アドバイスをすると反発されてしまうなら、質問というかたちをとって、相手に自主的に考えてもらうといい。
  • 要点
    3
    割り勘は持ち回り制にすべきだ。なぜなら、おごってもらったほうは言うまでもなく幸せになれるし、おごったほうも与えることの喜びを感じられるからである。
  • 要点
    4
    合理的な意思決定を下すためには、他人の視点に立って考えなければならない。

要約

仕事・キャリアに関する質問

「人に頼まれると断われない」を解消する
YakobchukOlena/iStock/Thinkstock

「自分の仕事とまったく関係のないことを次から次へと頼まれるようになり、自分の仕事ができない。うまく優先順位をつけるにはどうしたらいいですか?」という悩みに対して、著者は、望ましい優先順位を守るための3つの方法を提案する。

1つ目の方法は、何か頼みごとをされたら、「来週だったらどうするか」を考えてみることだ。予定表を見て、新しい予定を入れるために、他の約束を取り消すべきかどうかを考えるといい。他の約束より優先するつもりがないなら、断ったほうが無難である。

2つ目の方法は、何か頼みごとをされたら、その日に動かせない予定が入っていたことに気づいたと想像してみることだ。例えば、その日は出張だったと気づいたことにする。そして、その時、自分がどう感じるかに注目する。予定が入っていると想定した時、頼みごとを引き受けられなくて残念だと感じるようなら、頼みごとを引き受ければいい。逆に、気持ちがホッとするなら、頼みごとを断ればいい。

3つ目の方法は、キャンセルされた時に感じる高揚感(キャンセル・エレーション)を使うことである。頼みごとを引き受けた後、キャンセルになったと想像してみよう。想像した時に喜びを感じるようなら、最初から断るべきである。

悩みの原因を明確にすべし

転職に関しての質問が著者に寄せられた。「僕は仕事をやめるべきかどうか迷っている。今の仕事には不満だけど、もう8年も勤めている会社だ。それに、報酬はいいし、年に数週間の休暇に、年金まである。新しい仕事で再出発するのは不安も大きいし、今より満足できるかわからない。今の仕事を続けた方がいいのか、新天地で充実感を求めるべきなのか、アドバイスをもらえないかな?」というものだ。

著者の提案は、不満の原因がどこにあるのかを、まず自分自身に問い直すべきというものである。不満の原因が仕事にあるなら、転職すればよりよい未来に近づくことができるし、逆に不満の原因が自分自身にあるなら、転職したとしてもなにも変わらないからだ。

ただし、うまく判別するのはかなり難しい。長年、同じ環境で働いている人が、違う環境、違う仕事をしたらどうなるかを示す証拠がない場合は、なおさら判別が難しくなる。

そこで、著者は、質問者に対して、3週間ほど休暇を取り、転職を検討しているタイプの会社でボランティアをすることを薦めている。そうすることで、今の仕事で喜びを感じられない原因が明確になるはずだ。転職を検討するために3週間の休暇を費やすのを「もったいない」と感じるようなら、今の仕事にそこまでの不満はないということである。その場合、働き続けたほうがよいだろう。

家族関係の質問

つまらない男と娘をつき合わせないために
cineuno/iStock/Thinkstock

娘の新しい彼氏が気に入らない母親から、「娘がぐうたらでつまらない男と付き合い始めました。娘に釣り合うような男でないことを、やんわりと娘に伝える方法はないものでしょうか?」という相談が寄せられた。

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要約公開日 2016.09.23
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