アリエリー教授の「行動経済学」入門

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アリエリー教授の「行動経済学」入門
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アリエリー教授の「行動経済学」入門
出版社
出版日
2017年07月06日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「太るとわかっていながら間食がやめられない」「報酬をもらったのにやる気がなくなってしまう」。「あるある」とうなずいた読者もいるだろう。私たちの判断や意思決定は、自覚している以上に感情に左右されている。

本書は、行動経済学ブームの立役者、ダン・アリエリー教授が、人のふるまいの不合理さを、独創的な実験とケーススタディとで解明していく一冊だ。人が合理性からはずれるパターンには一定の傾向があり、その傾向と対策、思い込みとのつきあい方が解説されている。テーマは、お金の使い方を変えてしまう意外な要素や、人に流される性質が行動に及ぼす恐るべき影響、誘惑に負けずに自己コントロールするための工夫など、多岐にわたる。NHKで放送され人気を博した連続講義の書籍化ということもあって非常に読みやすく、グイグイ引き込まれてしまうだろう。

行動経済学といえば、ノーベル経済学賞を受賞し、『ファスト&スロー』などの著作があるダニエル・カーネマンが有名だ。しかし、行動経済学を一般社会でこれほどポピュラーなものにしたのは、ユーモアあふれる語りと筆致で聴講者、読者を魅了し続けている、アリエリーの力によるところが大きいだろう。

「行動経済学の本は敷居が高い」と思っている方にこそ、本書を手に取っていただきたい。人間がいかに不合理な生き物かを知っておけば、重大な意思決定で「しまった……」と後悔する確率を限りなく下げられる。何より、「まぁ、人間そんなものか」と肩の力を抜いて、前向きに人生を送れるようになるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

ダン・アリエリー(Dan Ariely)
デューク大学教授。1967年生まれ。ノースカロライナ大学チャペルヒル校で認知心理学の修士号と博士号、デューク大学で経営学の博士号を取得。その後、マサチューセッツ工科大学(MIT)のスローン経営大学院とメディアラボの教授職を兼務した。この間、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン高等研究所などにも籍を置いている。また、ユニークな実験によりイグ・ノーベル賞を受賞している。他の著書に、『予想どおりに不合理』『不合理だからうまくいく』『ずる』『アリエリー教授の人生相談室』(すべて早川書房刊)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人は人生の目的や目標、願望といった壮大なもののために日々行動するのではない。実際には、不合理な選択を行いやすく、置かれている環境に左右される傾向にある。
  • 要点
    2
    感情は意思決定を大きく左右する。一般的に、問題が大きくなればなるほど、人々の関心は小さくなる。
  • 要点
    3
    最初に行った意思決定が、その後の行動をずっと左右する。このアンカリング効果は「無料」に対して強力に働く。

要約

人間は「不合理」な存在である

意思決定は「合理的」か?

誰もが深く信じていることが実は間違っているケースは多い。人間はひとたび自分の直感にとらわれると、外から得た情報を、先入観をもって判断してしまう。錯覚画像を見て、その種明かしをされていても、何度も目の錯覚に陥るのも同様である。こうしたことが起きるのは、人間の脳が、現実の世界を理解しやすい形に変えてしまうからだ。大事なのは、自分の直感が選んだ選択肢が本当に正しいのかどうかを考えることである。

私たちは人生の目的や目標、願望といった壮大なもののために日々の行動があると考えがちだ。しかし、実際には、それらは日々の行動とはまったく結びつかず、不合理な選択をしてしまう。

意思決定を大いに左右する「デフォルト」
Zoonar RF/iStock/Thinkstock

その端的な例として、ヨーロッパ各国によって、臓器提供プログラムに関心を示した人の割合が歴然と違う、という事実を取り上げよう。調査によると、臓器提供カードにサインしている人の割合が100%もしくはそれに限りなく近い国と、10%前後の国に分かれているという。両者の内訳を見ると、法律や宗教、文化は似ているのに、なぜなのか。

この違いを生んだ原因はカードの書式にある。「臓器提供プログラムに参加したい人はチェックしてください」という形式では、ほとんどが参加しない。一方、「参加したくない人はチェックしてください」という形式では、ほとんどの人がチェックをせず、プログラムに参加することになる。前者はオプトイン方式、後者はオプトアウト方式と呼ばれる。

臓器を提供するかどうかというのは極めて難しい意思決定だ。人は難題に直面すると他者に決定を委ねようとするため、初めの書式の設定、「デフォルト(標準設定)」が決定的な役割を果たす。デフォルトを選ぶのが一番楽であるし、それを積極的に提案されているとさえ思ってしまう。このように、人間の行動は与えられる環境に大きく左右される。

この事実から学べるのは、環境、つまり選択までの道筋の設計の重要性である。人は手間をかけることが想像以上に嫌いな生き物だ。さらには、選択肢が複雑で面倒になると、楽な道を選ぶ可能性がいっそう高くなる。人間の怠慢さを軽視しないようにしたい。

環境の小さな変化で、人々の行動を変える
golubovy/iStock/Thinkstock

例えば、肥満の問題を解決するために、みんなに食べる量を減らし、ダイエットをするよう促したいとする。対策として、お皿を小さくするのは有効だ。大きなお皿に料理が少ししかのっていないと、食べた気がしない。私たちは食べた量を目でも判断しているため、お皿の大きさは重要だ。

また、こんなバス停がある。ベンチが体重計になっていて、座ると体重が壁に表示される。これによりバスを待つ人に「次のバス停まで歩きましょう」というメッセージを伝えられる。

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要約公開日 2017.09.22
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